
「CDPって一体何?」「どんなメリットがあるの?」こんな疑問を抱いていませんか。環境に対する取り組みを外部へアピールする手段として、CDPへの対応を実施することは大きなメリットがあります。
また、CDPのプログラムを活用することで、自社のサプライチェーンに対する環境関連の情報開示を要請することが可能です。
これにより、企業としては外部からの信頼性獲得につながるだけでなく、サプライチェーンの環境関連の取り組みを把握するきっかけにもなります。
とは言っても、CDPが一体どのような機関なのかについて具体的なイメージが湧きにくいかもしれません。
そこで今回は、CDPの概要や取り組むメリットなど、CDPに関する情報をまとめました
今後、CDPへの取り組みを検討されている方は、ぜひ最後までご覧ください。

CDPとは?
CDPは、Carbon Disclosure Projectの略称で、企業や自治体などの気候変動や温室効果ガス排出削減に向けた戦略や取り組みを評価・情報開示する国際環境NGOです。
主な目的は、持続可能な経済の実現のために、事業者や団体による情報開示を通じて、投資家・企業・自治体が自身の環境影響を認識することを促すことです。
2000年に発足した当初は、炭素(カーボン)を対象としていましたが、現在では炭素以外にフォレスト・水セキュリティなどの環境問題も対象となっており、カーボンだけに留まらないことから「CDP」が正式名称として使用されています。
2022年度時点では、世界の株式市場の時価総額の半分を占める18,700以上の企業、1,100以上の都市、州、地域が、気候変動・フォレスト・水セキュリティに関するデータをCDPを通じて開示し、そのうち15,000社がCDPによるスコアを獲得。CDPを通した情報開示を行う企業は年々増えています。
(引用:CDP資料)
その背景として挙げられるのが、CDPを通した環境に関する情報開示を求める機関投資家が増えていることです。
実際に、130兆ドル以上の資産を持つ680以上の機関投資家が、CDPを介して企業に対する情報開示を求めています。
このように現在では、CDPを通した情報開示を行うことは、機関投資家へのアピールにおいて大きな意味を持ちます。
では、CDPでは、具体的にどのような形で情報開示が行われるのでしょうか?
CDPでの情報開示までの流れは、以下の通りです。
- 対象企業に質問書の送付
- 回答を元にスコアリング
- 外部への情報開示
スコアリングに関しては、CDP独自の評価基準の下「A+(最高評価)〜D−(最低評価)」のスコアを付け、企業の環境に対する取り組みを評価しています。無回答の場合は、Fが付きます。
CDPの評価方法については後ほど紹介しますので、そちらをご参照ください。
CDP対応のメリット

では、企業としてCDPに対応することで得られるメリットには、どのようなことが挙げられるでしょうか。
挙げられる項目としては、以下の4点です。
- ESG投資の獲得機会が増える
- 環境に配慮した取り組みを行っている証明となる
- 自社のサステナビリティの進捗状況を把握できる
- TCFDに則った情報開示の準備にもなる
では、一つずつ見ていきましょう。
ESG投資の獲得機会が増える
ESG投資の獲得機会が増えることについては、先ほどの『CDPとは?』の項目の解説で理解していただけたのではないでしょうか。
持続可能な社会の実現に向け「ESG」という言葉が浸透しつつある現在では、世界最大規模の資金を運用する『年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)』が、全資金186兆円の運用についてESGを考慮した投資を推進していると明示しています。
(参照元:ESG活動報告|GPIF)
CDPは、そんなESGの評価機関として、世界中の投資家から信頼を獲得しているイニシアチブです。
事実、CDPへ対応する企業数も、2021年の13,000社以上から2022年には15,000社以上に増加しているため、その注目度がお分かりいただけるかと思います。
CDPでは、基本的に、機関投資家が要請した企業に対して質問書が送付され、その回答を元に評価・情報開示が行われます。
しかし、要請を受けていない企業でも、自主的に質問書に回答することが可能です。
回答した内容は、非公開希望をしない限り、CDPに加盟する機関投資家や顧客に情報が開示されます。
つまり、CDPに回答することで、自社の環境に対する取り組みをアピールできるということです。
また、CDPでスコアを獲得した企業は一覧で掲載されますので、CDPで高評価を獲得することで機関投資家や顧客の目に留まりやすくなり、ESG投資を獲得できる可能性も高まります。
自社のサステナビリティの進捗状況を把握できる
自社のサステナビリティの進捗状況を把握できることも、CDPの質問書に回答するメリットの一つです。
なぜなら、CDPの質問書に回答するためには、
- 自社の事業やビジネスモデルなどの特徴の理解
- 自社の事業が環境に与える影響の特定
- 解決すべき課題の特定
など、自社について今一度把握し直す必要があるからです。
このように、CDPの質問書への回答作業を行い自社について振り返ることで、自社の直面している環境リスクや事業課題、新たな事業機会などへの理解を深めるチャンスになります。
そして、CDPから評価を受けることで、自社の取り組みレベルについても把握できたり、他の企業と比較することで新たな課題を見つけたりすることにも役立ちます。
TCFDに則った情報開示の準備にもなる
CDPの気候変動質問書には、TCFDの情報開示ルールに則った質問項目が含まれています。
そのため、CDPへ回答することで、同時にTCFDに則った情報開示を行うことにもつながります。
では、TCFDではどのような項目の情報開示が求められているのでしょうか?
具体的には、以下の項目です。
項目 | 内容 |
ガバナンス | 取締役会や経営層が、企業の気候関連リスクに対して、どのように評価・監督しているのか |
戦略 | 短期・中期・長期にわたって、気候変動が企業経営にどのような影響を与え、それに対してどのように対処するのか |
リスク管理 | 気候関連リスクをどのように判別し、評価・管理するのか |
指標と目標 | どのような指標を持って、気候関連リスク・機会を評価し、目標に対する進捗を評価しているのか |
CPDへ回答することで、同時にTCFDにおいて求められる上記の情報開示も行うことができます。
TCFDについて詳しく知りたい方は、以下の記事に記載していますので、そちらも参考にしてみてください。
CDPの5つの活動領域についてご紹介!

ここでは、CDPの活動領域についてご紹介します。
冒頭でもお伝えしましたが、CDPは2000年に発足した当時は、カーボンを対象にした情報開示システムを運営していました。
しかし、現在では以下の5つの領域において情報開示を求め、CDP独自のスコアリングを実施しています。
- 気候変動
- 水セキュリティ
- フォレスト
- サプライチェーンプログラム
- シティプログラム
では、それぞれの領域に対する取り組みについて解説していきます。
この項目でお伝えする内容は、CDPのウェブサイトを参照しています。
1.気候変動
CDPは、気候変動に関する質問書を発行し、『回答要請を受けた企業』または『自主回答した企業』の回答に対してCDP独自のスコアリングをし、CDPに加盟している機関投資家や企業などに情報を開示しています。
開示された情報は、機関投資家や企業などによって閲覧され、回答した企業の取り組みに対する理解や評価、投資における判断基準として役立てられます。
実際に、気候変動の質問書では、以下の情報開示を求めています。
- 気候変動が企業に与えるリスクや機会の詳細
- リスクや機会に対する戦略、シナリオ分析、低炭素移行計画
- Scope1/Scope2排出量算定方法
- 排出している温室効果ガスの種類を国や事業・施設別に情報開示
- エネルギー消費、低炭素エネルギー消費について
- サプライヤーや顧客、その他への気候変動関連のエンゲージメント活動
(参照元:CDPからの情報提供)
気候変動に関する質問書は、以下のページよりダウンロードできます。
気候変動質問書 2022
2.水セキュリティ
水セキュリティにおいては、企業の水に関わるリスクやリスクに対する取り組みを調査し、情報開示しています。
この調査は、気候変動と同じく質問書への回答をもとに行われ、A+〜D−の評価を付けた上で情報開示されます。
水セキュリティの質問書では、以下のような内容が質問項目として記載されています。
- 水の取水量、排水量、消費量の合計値
- 水による事業への影響、水規則違反により受けた罰則
- 水リスクに対してどのように評価しているのか
- 水リスクのある施設数、内容、それに対する対応
- 水リスクや機会をもとにした、事業計画、シナリオ分析
(参照元:CDPからの情報提供)
水セキュリティに関する質問書は、以下のページよりダウンロードできます。
水セキュリティ質問書 2022
3.フォレスト
フォレストでは、森林関連のリスクや機会が企業に与える影響を分析・評価し、それに対する企業の戦略や取り組みについて評価しています。
このフォレストの項目においても、質問書を発行し、回答をもとに評価・情報開示を行っています。
このフォレストの項目は、元々、Global Canopy ProgramというNGOが実施していた内容ですが、2013年にCDPに統合されました。
フォレストの質問書では、以下の内容に関する情報開示が求められます。
- コモディティの生産/調達/消費/販売の方法・量、コモディティの生産地情報
- 企業に影響を与える森林リスクの影響度の評価
- 森林関連が企業に与えるリスクと事業機会
- 経営層が森林関連リスクの対応にどのように関わっているのか
- 森林関連リスクを鑑みた事業計画/財務計画
- 森林関連リスクに対する具体的な対応内容
(参照元:CDPからの情報提供)
フォレストに関する質問書は、以下のページよりダウンロードできます。
フォレスト質問書 2022
4.サプライチェーンプログラム
CDPでは、企業に代わってサプライチェーンへ環境関連情報の開示を要請する取り組みも実施しています。企業は、自社のサプライヤーを最大500社まで選定し、サプライヤーリストをCDPに提出。
CDPは、このサプライヤーリストをもとに質問書を送付し、回答をもとに分析・評価を行い、依頼企業に報告します。
このサプライチェーンプログラムでの質問内容は、気候変動・水セキュリティ・フォレストの3種類です(3種類の中から一部を選択することも可能)。
企業としては、自社のサプライチェーンに対する情報開示を求めることができ、自社のみならずサプライチェーン全体での環境リスク・事業機会を把握することが可能です。
日本企業では、
- トヨタ自動車
- ホンダ技研工業
- 日産自動車
- 三菱自動車
- ブリヂストン
- 富士通
- 花王
- 味の素
- 大成建設
などが参加しています。
5.シティプログラム
CDPは、企業だけでなく自治体に対しても、環境関連の情報開示を要請する活動を実施しています。
それが、『CDPシティ』と呼ばれるプログラムです。
この活動は、自治体に対して環境に与える影響を計測・管理し、情報開示を行うように促すことを目的としています。
シティプログラムにおける質問書には、以下の項目が含まれています。
項目 | 内容 |
ガバナンス | ・気候関連問題の監督・多層ガバナンス・ステークホルダーエンゲージメント |
評価 | ・リスクと脆弱性の評価・排出量インベントリー・セクター別データ |
目標 | ・適応目標・排出削減目標・エネルギー目標 |
計画立案 | ・気候変動対策計画・資金調達 |
対策/行動 | ・適応策・緩和策 |
また、シティプログラムにおける質問内容は、自治体の規模や環境に対する影響力などを踏まえて、自治体自らが以下の『三つの質問書経路(Pathway)』から選択できるようになっています。
質問書経路(Pathway)1 | 【質問数】17 〜27問 【質問内容】構成気候変動の緩和と適応に関するガバナンス/評価/計画対策/対策・行動などの基本的な質問 【セクター】基本的なセクターの指標を含む(エネルギー、輸送、廃棄物) 【整合性のある組織】Race to Resilience/SBTs/Race to Zero |
質問書経路(Pathway)2 | 【質問数】24〜34問 【質問内容】質問書経路(Pathway)1の質問に加えて、以下のセクター指標が追加される。 ・エネルギー消費量・輸送モード分担率・廃棄物発生量 【整合性のある組織】Race to Resilience/SBTs/Race to Zero/TCFD提言 |
質問書経路(Pathway)3 | 【質問数】30〜40問 【質問内容】質問書経路(Pathway)1と質問書経路(Pathway)2に加えて、以下のセクター指標が追加される。 ・水・食料 【整合性のある組織】Race to Resilience/SBTs/Race to Zero |
自治体としては、CDPの質問書に答えることで、環境リスク・機会に対する現状を把握するとともに、他の自治体と比較できるようになります。

CDPの評価方法
CDPでは、企業の回答をもとに、以下のような評価基準でスコアが付けられます。

具体的な評価方法としては、「情報開示」・「認識」・「マネジメント」・「リーダーシップ」の4段階のレベルが設定されており、それぞれのレベルにおいて閾値を超えた点数を獲得すると次の質問が実行される仕組みです。
つまり「情報開示レベル」では80%以上のスコア、「認識レベル」では80%以上のスコア、「マネジメントレベル」では75%以上のスコアを獲得しなければ、次のレベルの質問に進めないということです。
例えば、ある企業が以下の評価を受けた場合を考えてみましょう。
- 情報開示:90%
- 認識:82%
- マネジメント:55%
この場合、企業の評価は『B』となります。
また、到達したレベルの評価が44%未満(リーダーシップを除く)の場合は、評価に−が付きます。
例えば、先ほどの例に当てはめてみると、マネジメントが39%だった場合『B−』のスコアになるということです。
ちなみに、2022年度にAリスト企業に認定された日本企業は、気候変動分野で75社、フォレスト分野で4社、水セキュリティ分野で35社となっています。
CDPの情報開示プロセス
では、最後にCDPの情報開示プロセスについて解説します。
CDPの情報開示プロセスには、以下の2通りがあります。
- CDPに加盟している機関投資家や顧客が、企業に対して質問書を通した情報開示を要請
- 企業が自主的にCDPの質問書に回答する
開示された情報は、CDPに加盟する機関投資家やサプライチェーンメンバー(顧客)に開示されます。
具体的には、以下の表を見てみてください。

また、CDPの情報開示は以下のスケジュールで実施されます。
- 年始:質問書の公表
- 春:評価基準の公表、回答要請の通知、回答システムのオープン
- 夏:回答提出の締め切り
- 秋:回答の公開(非公開が選択された回答は公開されない)
- 年末:スコアの公表
(参照元:CDPからの情報提供)
CDPの質問書に回答する場合は、上記のスケジュールについても予めチェックしておくようにしましょう。
CDPに対応するための社内リソースが足りない問題を解消する方法
CDPへ参加するためには、マテリアリティの特定、気候変動に関するリスクと機会の把握、GHG排出量の可視化、ステークホルダーエンゲージメントの実施など、多くの対応が必要となります。
しかし、事業者の中には日々の業務だけで手一杯で、サステナビリティ対応に社内リソースを割くことが難しいというケースは多いのではないでしょうか。
「CDPに参加したいけど、人材がいない/雇えない」「対応する余裕がない」
もしこのような状況でしたら、『サステナビリティ対応 支援サービス』がおすすめです。
サステナビリティ対応 支援サービス
弊社が提供する『サステナビリティ対応 支援サービス』では、CO2排出量の可視化、ステークホルダーエンゲージメントの向上、マテリアリティの特定、社内理解の浸透、統合報告書やサステナビリティレポートなどのESGデータブックの制作、メディアプロモートまで一気通貫で対応します。
サステナビリティ対応にあてる社内リソースがないという企業様にとっては、新しい人材の雇用・教育にかかるコストを抑えながら、自社のサステナビリティを向上させることが可能です。
またご要望があれば、サステナビリティについての社内研修もサポートいたします。
「社内リソースが足りない」「サステナビリティ対応をサポートしてほしい」
そのような悩みを抱えていましたら、ぜひ一度弊社へご相談ください。
下記ボタンより無料でお問い合わせいただけますので、まずはお気軽にご連絡ください。
まとめ
CDPへの取り組みは、自社の環境関連の取り組みを外部へアピールすること、また自社のサプライチェーンにおける環境関連の取り組みを把握することに役立ちます。
この記事では、そんなCDPの概要や取り組むメリット、評価方法や情報開示プロセスについてお伝えしました。
CDPに興味・関心がある方にとって、この記事が少しでも参考になれば幸いです。
また、cokiではサステナビリティ支援サービスとして統合報告書やESGデータブックの作成に、サステナビリティ推進室の立ち上げ支援を行っております。
ESGの情報開示において、課題をお持ちの方や話を聞いてみたい方がいらっしゃいましたら、下記の「cokiに問い合わせ」のボタンより問い合わせください。