近年、社会や環境に配慮した公益性の高い企業に与えられる国際認証として、B Corp(B Corporation)が注目を集めています。
世界では認証を受けた企業は増加傾向であり、今後、日本でも認証を受けようと検討する企業は増えていくことが予想されます。
この記事では、そんなB Corpの概要や取得方法・取得後のメリットを紹介します。
経営者にとって、自社がB Corp認証を取得するかどうか、判断材料の参考にしていただける内容となっておりますので、ぜひ最後までご一読ください
B Corpとは?
DALL-Eで作成
B Corp(B Corporation)は、環境や社会に配慮した事業を行っている、公益性の高い企業を認証する制度です。2006年に創設された米国の非営利団体B Labが運営をしています。
B Corpの「B」は「Benefit(利益)」を意味し、社会や環境・従業員・顧客・サプライヤーなどすべてのステークホルダーに対する利益を指しています。
これらの公益性をB Corp独自の評価によって判断し、基準を満たしていると判断した企業に対して、B Corporationの一員として認証しています。
B Corp認証の大きな特徴は、フェアトレード認証や有機JAS認証、LEED認証のように商品や建物に対して認証するのではなく、企業のあり方を認証する制度ということです。
具体的には、
- 環境や社会に配慮した事業をおこなっているか
- 企業の透明性や説明責任を果たしているか
といったことが、認証の基準となります。
世界89カ国6,000社以上で認証を取得
世界89カ国にわたり6,242社(2022年時点)の企業がB Corp認証制度を取得しています。
日本の企業で、B Corp認証を取得しているのは、35社(2023年時点)にとどまりますが、その企業数は年々増加し注目を集めています。
国内で認証企業数が少ないからこそ、企業の公益性をアピールできる機会にもなるしょう。
B Corp認証の取得方法
DALL-Eで作成
B Corp認証は、企業の規模や業種を問わず、取得するための基準を満たせば認証を受けることができます。ここでは、認証を取得するための具体的な方法を紹介します。
認証条件
B Corp認証を受けるために必要なのが、B Impact Assesment(Bインパクト・アセスメント)と言われる、環境的・社会的な取り組みを調査するアンケートです。
B Impact Assesmentは、200点満点のスコア制となっておりB Corp認証を受けるためには最低80点以上を獲得する必要があります。
まずは、自社で評価採点をおこない、80点をクリアしていれば、オンラインで正式なB Impact Assesmentを提出します。
提出後、B Labに電話でのインタビュー審査があり、審査をクリアすることで条件達成となります。
【B Corpの認証を取得する条件まとめ】
- B Impact Assesmentで80点以上のスコアを獲得
- B Labの電話インタビュー審査をクリアする
認証に必要な費用
B Corp認証にかかる費用としては認証料が必要となります。
認証料は、企業の規模(売上高)に応じて変動する仕組みです。
売上高が高い企業ほど、認証料は高額になりますので、下記の表をご参考ください。
売上高(円) | 認証料(円) |
0〜1,937万 | 6.5万 |
〜2.5億 | 13万 |
〜6.4億 | 20万 |
〜13億 | 33万 |
〜26億 | 65万 |
〜65億 | 130万 |
〜97億 | 195万 |
〜130億 | 260万 |
〜325億 | 325万 |
〜585億 | 390万 |
〜975億 | 488万 |
〜1,300億 | 585万 |
それ以上 | 650万〜 |
認証取得までの6ステップ
具体的な認証取得までの手順についてご紹介します。
- B Impact Assesmentに登録
- B Impact Assesmentに回答
- B Impact Assesmentで80点以上獲得
- B Labによるリスクレビュー(審査)
- 審査に合格したらB Corpと契約
- B Corp認証取得
ひとつずつ解説していきます。
1.B Impact Assesmentに登録
まずは、B Impact Assesmentへ登録します。
B Impact Assesmentへの登録は以下のURLより行えます。
B Impact Assessment
上記URLへ移動したら、入力項目に従って必要な情報を入力していきしょう。
2.B Impact Assesmentに回答
企業の社会的・環境的公益性やステークホルダーへの透明性・社内の運営方針などにおける企業のパフォーマンスを測定する200の質問に回答します。
具体的な質問例として、下記に記載しますので、どのような質問があるのか参考例として確認ください。
- 従業員に企業の財務状況が公開されているか?
- 業界における社会や環境基準改善に向けて取り組みを行なっているか?
- 管理職における女性、マイノリティ、障害者の割合は?
- 企業で消費する再生可能エネルギの割合について
- 自社の排出する廃棄物について
- 従業員の有給休暇・病気休暇について
B Labから追加質問があれば、その質問に対しても回答を行う必要があります。
3.B Impact Assesmentで80点以上獲得
B Impact Assesmentは、200点満点のスコア制となっており、最低スコアは80点以上を獲得する必要があります。まずは自社で評価・採点を行い80点以上獲得できているか確認します。
その後、オンラインでB Impact Assesmentを提出する流れとなります。こちらは無料で受けられます。
4.B Labによるリスクレビュー(審査)を受ける
B Impact Assesmentを提出したら、次はB Labによるリスクレビューを受けることとなります。審査対象は、回答した内容や会社の業態・業界についてです。
また、B Lab側にて企業の公式HPや企業が関わるニュース、公表している資料などの調査もおこなわれます。この審査によって、B Lab側から追加での質問を受ければ、そちらにも回答する必要があります。
5.審査に合格したらB Corpと契約
リスクレビューを通過することができれば、B Corpと契約となります。
6.認証料の支払いでB Corpの取得が完了
認証が取得できたら、B Corpの宣言書への署名・契約書の作成をします。
B Labへ認定料を支払いが完了すれば、認証取得となります。
認証の更新方法
B Corp認証は、年会費の支払いに加えて、3年ごとの更新が必要です。
更新においては、以下の2つの提出が求められます。
- B Impact Assesment(Bインパクト・アセスメント)
- B Impact Report(Bインパクト・レポート)
B Impact Reportは、自社の社会的・環境的取り組みに関する報告書です。
更新する際には、B Impact Assesmentに加えて、B Impact Reportの提出も必要となります。
このようにB Corp認証を取得し続けるためには、自社の社会的・環境的公益性を向上させ、証明し続ける必要があります。
B Corp認証を取得するメリット
DALL-Eで作成
B Corp認証の審査は厳しく、具体的な数値としての証明を求められるだけでなく、時間と労力、コストも必要とします。
その一方で、世界各国の企業が認証を取得するのには理由があります。ここでは、B Corp認証を取得するメリットについて、実際の企業からのコメントから紹介していきます。
公益性が高い企業だと国際的に認められる
B Corp認証を取得することで、自社の事業は環境や社会に対して公益性が高いものだと、グローバル基準で認められることはメリットです。
日本のアパレル企業で初めてB Corp認証を取得したCFCLは、「世界的な信頼を獲得していることは間違いないと実感した」と、雑誌のインタビューでコメントをしています。
””そのエピソードはパリで行われた展示会に行った際の出来事です。その展示会の関係者がB Corpを知っており、B Corpの認証申請中だと伝えるだけで「弊社はSDGsに関してこういった取り組みをしています」といった説明をする必要がなかったと語っています。””
B Corp認証は、世界的にSDGsの代名詞的な立ち位置を獲得しており、B Corp認証の取得に取り組んだり認証を受けることで、企業の社会的・環境的公益性への取り組みを正式に理解してもらいやすくなります。
就職先として選ばれやすくなる
サステナビリティを重視する人たちから、就職先の候補として選ばれやすくなります。
世界最大の会計事務所「Deloitte」が2019年に行なった調査では、ミレニアル世代の42%が、ビジネス上の就職先を選ぶ際に、製品やサービスが環境や社会に与える影響を重視するとの回答があります。
(引用:The Deloitte Global Millennial Survey 2019より)
この傾向は年々、高まっており企業が優秀な人材を確保するためには、自社のSDGsへの取り組み、サステナブルな事業を行っていることをステークホルダーに開示しなければなりません。
このような観点から、B Corp認証の取得は、国際的にも認められた証となり、人材確保の大きな追い風となることでしょう。
他にも、B Corpを取得すべき理由を知りたい方はこちらのコラムもご覧ください。