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B Corp認証取得企業が渋谷に集結!「Meet the B」イベントレポート

サステナブルな取り組み ESGの取り組み ステークホルダー資本主義 イベント
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2023年3月11日、渋谷にある100BANCH(東京都渋谷区)で、「Meet the B」という面白いイベントが開催された。B Corp認証(ビーコープ)を取得した国内企業15社以上が一堂に集まるイベントだった。

B Corpとは、環境や社会に配慮した公益性の高い企業に対する国際的な認証制度。日本では2023年3月現在で20社が認証を取得し、国内でも注目が高まっている。「Meet the B」では、そんなB Corpムーブメントの関係者や企業の新たな在り方に関心を持つ人々が一堂に会した。当日の様子をレポートする。(撮影:加藤俊)

会場の様子

会場は渋谷ストリームの裏手にある100BANCHで開催された

会場に入ると、すでに多くの人が集まっていた。B Corp認証に対する注目の高さを表していた。

B Corp企業有志が集結!認証取得の背景やリアルを語るブースセッション

会場内にはB Corp企業の商品や取り組みを紹介するポスターがずらり

横浜市の石井造園株式会社は、日本で2番目にB Corp認証を取得した企業。15年以上前から毎年CSR報告書を作成し、横浜型地域貢献企業の認定を受けるなど、従来から『いい会社』の在り方を追求してきた。

「B Labが当社に点数をつけたら何点になるだろう?」と認証取得に挑戦したところ、106.5点という高評価を獲得した。従業員数増加が影響して現在は81点前後で推移しているが、社会貢献やステークホルダーとの対話を継続する姿勢は一貫している。

近年は内閣府のヒアリングや大手メディアの取材が相次ぎ、「B Corp認証」としての側面が注目されるようになった。「政府や学者などの識者に経営の実践で培った知恵を伝えることが、私のミッション」(石井直樹社長)と想いを語った。

「B Corpの考えは当社の理念に近い」と、石井社長

リユースビジネスを展開する株式会社エコリングは、2018年に訪れた研修先のシリコンバレーでB Corpを知った。社会貢献型のビジネスを展開する現地企業に『取得できるはずだよ』と勧められてチャレンジするも、当初獲得できた点数は14点。寄付を始めとする社会貢献活動は行っていたものの、エビデンスを蓄積していなかった。

「日本的な思考のもと、『いい取り組みを自ら発信する』という発想が欠けていた」と、同社担当者。その後、認証取得に向けて社会貢献活動の履歴を積み重ね、足かけ3年で認証を取得した。ついには、認証の「環境」分野において、日本で唯一、世界上位5%の「Best For The World 2022」として表彰されるまでに成長した。一番の学びは、「いい会社とは何かを自分たちで考えるきっかけになったこと」と語る(大和田さん)。

「隠匿の美」の発想を転換し、取り組みを発信し始めたエコリング。2021年8月に晴れて認証取得。左からコンプライアンス部の大和田部長とサステナビリティ推進課の村上課長

ソーシャルグッドマーケット「Kuradashi」を運営する株式会社クラダシは、社会貢献型のビジネスモデルや仕組みを紹介した。同社は、フードロス削減を目指すフードバンクのマッチング事業のほか、「クラダシ基金」を活用した社会貢献型インターンシップ「クラダシチャレンジ」を展開している。

地方農家で課題となっている人手不足や高齢化を、農業に関心のある大学生とのマッチングによって解決しようという試みが、「クラダシチャレンジ」だ。「収穫体験に参加した学生と自治体担当者、農家との意見交換会や、学生がオンラインで学びを振り返ったり改善点を提言したりできる機会も設けている」(広報 中野さん)という。

「農業に関心のある学生が、多様な大学・学部から集まってきます」と、広報の中野さん。

株式会社ファーメンステーションは、独自の発酵技術で未利用資源を再生させる研究開発型スタートアップ企業だ。同社の独自技術は、果物の搾りかすや食品加工で発生する残さなど、そのままでは産業廃棄物とされてしまうものを、発酵・蒸留によって有用な製品へと生まれ変わらせる。
ブースには、りんごの搾りかすから作った除菌スプレーや、ゆずの搾りかすから作ったエタノールのサンプルが並べられ、参加者らは除菌スプレーの使用感を試したり、原料の香りがほのかに残るエタノールの匂いをかいだりしていた。酒井里奈社長は同社の商品について、「使えば使うほどゴミが減る商品」と、自信を持って紹介した。

英語の解説が表示された同社のパネル。英語のB Corp認証手続きも、酒井社長自ら行ったという

日産通信株式会社は、農業を通じた地域への取り組みや組織作りについて紹介した。同社がCSRの一環として農業を始めたのは8年ほど前のこと。きっかけは、災害現場で目にしたボランティアの姿だった。

通信関係の会社である同社は、災害時はインフラ復旧のために即座に現場に入る。「被災地で活躍するボランティアを見て、当社も何かできないかと考えた。社会起業大会にツアーで参加し、海外での炊き出しや河川清掃の経験を経て、帰国後、放課後等デイサービスを運営したり耕作放棄地を開拓し始めたりした」(福田博樹社長)。

現在は、近隣の高齢者から譲り受けた農業機械を修理して使ったり、適正価格で販売できる海外への販路を開拓したりと、活動の幅を広げている。

「農業を始めたらどんどん楽しくなりました」と、笑顔を見せる福田社長

日本のB Corpムーブメントの現在地と未来を語り合うトークセッション

ポスターセッションと並行して、メインステージでは2回のトークセッションが開かれた。

トークセッション1は、株式会社ロフトワーク共同創設者であり株式会社Q0(キューゼロ)代表取締役社長の林千晶さんと、ヴィーガンクッキーを製造・販売する株式会社ovgo代表取締役の溝渕由樹さんを迎えた座談会。「いい会社がつくる日本の『ローカル』な未来」をテーマに、日本におけるB Corpムーブメントの現在地と展望について語り合った。

トークセッションは、会場後方に立ち見が出るほどの盛況だった

2022年12月に自社のB Corp認証を取得した溝渕さんは、認証取得のプロセスを振り返り、取得による効果を次のように語った。

「日本の企業は、『いいこと』をしていてもそれが明文化されていないことが多い。認証取得に向けて取り組みを制度化したり、その内容を明文化したりすることで、従業員、顧客、取引先にも共有できるようになる」

「認証取得前からB Corpは始まっている。取得に向けたプロセスでコミュニティとの接点もできる」と、溝渕さん

また、林さんは、B Corp認証制度に抱く印象を、「単に『優れた会社』を認証する制度ではなく、『より良い会社になろうと努力しつづける』ための制度」と表現。「人口減で絶え間ない変化が求められるこれからの時代にフィットしている」と分析した。

「B Corpは『認証』という名詞ではなく、『より良くなる』という動詞のような制度」と、林さん

溝渕さんが、「同じような考えを持つローカルな企業にも、今後B Corpムーブメントが広がって欲しい」と期待を寄せると、秋田県を拠点にQ0の活動を展開する林さんが、「秋田でもB Corpイベントを実現したい」と応じた。

トークセッション2のテーマは、「B Corpのリーダーに聞く!『グローバルブランド』の現在地」。米国のスタートアップ、テクノロジー、VC関連のニュースを配信する人気ポッドキャスト「Off Topic」を運営する宮武徹郎さんが、サンフランシスコ発のスニーカーブランド「Allbirds(オールバーズ)」のハナ・カジムラ氏に、同社のサステナブルな取り組みについてインタビューした。

トークセッションの合間には、B Corp認証取得を体験できるワークショップや「カウチ」で雑談のひとときも設けられた。イベント全体を通じて、B Corp企業と来場者は、共に「いい会社」についての考えを深めていた。

会場の一角「カウチ」の様子。会場内のあちこちで企業経営者・担当者や参加者同士が情報交換していた

cokiでコラムを書いていただいた岡さんも参加していたもよう。

 

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ライター:

1985年生まれ。米国の大学で政治哲学を学び、帰国後大学院で法律を学ぶ。裁判所勤務を経て酒類担当記者に転身。酒蔵や醸造機器メーカーの現場取材、トップインタビューの機会に恵まれる。老舗企業の取り組みや地域貢献、製造業における女性活躍の現状について知り、気候危機、ジェンダー、地方の活力創出といった分野への関心を深める。企業の「想い」と人の「語り」の発信が、よりよい社会の推進力になると信じて、執筆を続けている。

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