
愛知県知多郡で宅地造成を中心とした土木工事を手がける株式会社森開発。スピードと柔軟な現場対応力を武器に、民間工事をメインに地域の住環境整備を支えている。同社の代表取締役を務めるのは、26歳の竹内匡平氏だ。2025年に森開発を事業承継し、就任1年目で売上は前年比約5倍となる5億円超を見込む。建設業、農業、不動産という3本柱で「関わる人全員が笑っていられる環境」を目指す竹内氏に、これまでの歩みと事業に込めた想い、そして今後の展望を伺った。
若さを武器に固定概念を超え、建設業の課題に挑む
愛知県知多郡を拠点に、宅地造成を中心に土木工事全般を手がける株式会社森開発。民間工事を主戦場としながら公共工事にも対応し、開発・整地・排水処理など一連の工程を一貫して担っている。
同社の大きな強みは、施工におけるスピードと柔軟な対応力、そして強固な「チーム力」だ。社内のメンバーだけでなく、長年関係を築いてきた協力会社も一つのチームとして連携。地域を共に支える仲間として、迅速かつ確実な施工を実現している。
その代表取締役を務めるのが、26歳の竹内氏だ。平均年齢が60歳とされる建設業界において、20代での社長就任は異例である。竹内氏自身はその「若さ」こそ、明確な武器として捉えている。
「建設業に限らず、キャリアを重ねれば重ねるほど、どうしても固定概念に縛られてしまう部分が出てくると思います。でも、僕はまだ20代だからこそその固定概念に縛られず、他とは違う発想で動ける。お客様が求めている答えに対して、いろいろなパターンでアプローチし、多様な意見を聞きながら、最適な形を探していくやり方を大切にしています。また、若さを最大限に利用して、勢いが必要なときには恐れずに突っ込んでいけることも武器だと思っています」(竹内氏)
そんな同社では、社内の関係性もフラットだ。竹内氏は忙しさを理由にせず、積極的に社員とコミュニケーションを取り、相談しやすい温かい人間関係を築くことに注力している。また、「高収入」「週休2日」「公平な評価制度」を整えることで、社員にとって働きやすさと成長が両立できる環境の構築を目指している。
「肩書は社長ですが、社内では僕が一番若いんです。だから、社長になったからといって僕が上ではなく、立場や年齢によって上下関係があるのではなく、節度を持ってフラットな関係性でありたいと思っています。僕自身は、代表だから代表の役回りをやっているだけ、というくらいの感覚です」(竹内氏)

森開発が今後展開を予定しているのが、「農業」と「不動産」の事業だ。不動産事業では、自社の土木造成の強みを活かして土地の販売までを一貫して手がけることを予定している。また農業事業では、大手食品メーカーを取引先として、ハーブ系の製品を提供する計画が進んでいるという。
この多角化は、単なる事業拡大ではない。背景には、建設業界が抱える深刻な課題がある。
「現場を見てきて思うのは、建設業の課題は人手不足だけではなく、高齢化も大きいということです。ほとんどの人は現場に出るのが主な仕事で肉体労働が多く、体力が落ちて体にガタが来ると現場で働けなくなる人が多いです。そうなると、もう働くところがないんですよ。それで最終的に派遣などで低賃金で雇われて、働いてみたら国民健康保険を払っていなかった、みたいなことも影ではたくさんあって。それが非常に大きな課題だと考えていて、そういうことが僕の近場では起こってほしくないと思っています」(竹内氏)
農業などの異なる領域で事業拡大できれば、肉体労働ができなくなっても軽作業で仕事が続けられる。そして、事業拡大するためには土地が必要になる。そうした構想から導き出されたのが、建設業・農業・不動産の3本柱なのだ。その構想の実現に向け、今まさに土台を作り上げている。
「ここでダメならやめよう」自ら選んだ地でキャリアを拓く
長野県出身の竹内氏は、高校卒業後に同県に本社を構えるアズミ村田製作所に入社。当時はやりたいこともなく、ただ漠然と働いていたという。そんななか、建設業の社長を務める叔父から、跡継ぎの問題などから「建設業をやらないか」と声をかけられたことが転機となった。
最初に入社したのは、叔父が仕事を振っている会社だった。しかし、努力をしても思うように成長できず、「向いていないな、上手くいかないなと思いながら働いていました」と当時を振り返る。
若さや身内とつながりのある会社だったことなどから、周囲との人間関係にも悩んだ。「ものすごく負けず嫌いな性格で、周りに何と言われようと、とにかく結果を出そうと思った」と話す竹内氏。ひたむきに努力を続けていたものの、この環境では成長に歯止めがかかり、出せる結果も出せなくなると感じたことから、身内の縁が一切ない場所での再挑戦を決意する。そこでたどり着いたのが、愛知県の建設業・石原組だった。
「何度も転職したくなかったですし、これでダメだったらもう建設業はやめようというつもりで、ゼロの状態から僕をフラットで見てくれる環境に行きたくて愛知県に出ました」(竹内氏)
入社時に決めた目標は、「3年で結果を出して、社長になれるくらいの実力をつける」こと。前の会社を辞めてきたからこそ、生半可なことはしたくない。また、建設業に入ったきっかけは後継ぎ問題でもあったため、年齢から逆算したときに、それくらいの覚悟が必要だと考えたのだ。
そうして石原組では、現場の監督業務をこなしながら、全体の現場の割り振りや調整を担う番頭の役割も務めた。さらに社長の業務もサポートし、自ら営業して自分の顧客も持つなど、周囲の倍以上の仕事をこなした。
最終的には、自身で動かす数字は億単位に。竹内氏が入社した当時5億円ほどだった売上を、20億円超まで成長させることに大きく貢献した。圧倒的な結果を残した竹内氏は、石原組で3年目を迎えるタイミングで、もともと仕事でのつながりがあり、跡継ぎのいなかった森開発の前社長から継承の打診を受けた。
竹内氏は二つ返事で承諾し、2025年に社長に就任。社長就任時の心境について、「もともと社長になる覚悟はありましたし、圧倒的な成果も出ている自覚があったので、社長になるからといってそこから本腰を入れるとか、やり方を変えるということはなかった」と話す。
森開発を承継して初年度となる現在、決算では5億円を超える見込みだ。これは前社長時代の約5倍の数字となる。なお、竹内氏は森開発の代表に就任した今も、石原組の業務を兼務している。前職で築いた顧客基盤は石原組に残したまま、そこから入る仕事は竹内氏が引き続き担当しているという。努力と行動力によって裏打ちされた圧倒的な結果が、今まさに周囲の評価として形に表れている。
「結果」の本質とは
――お話では「結果」が印象的でした。結果を重視するようになったのはなぜなのでしょうか?
竹内:学生時代にずっと野球をしていたのですが、どれだけ人間力があっても、結果が出なかったり、監督に気に入られていなかったりすると、レギュラーになれないのがスポーツの世界でした。だから、「今いる環境で、そこにいる人が求めていることをすること」が本当の意味での「結果」であり、それが出せなければ意味がないと思っています。
それは今の仕事でも同じで、会社の中で求められていることをすることが結果を出すことであり、重要だと考えているんです。そして、それは従業員に対して僕自身が体現していかなければならないことだと感じています。
――結果を出す上で、特に意識していることは何ですか?
竹内:僕一人が頑張って出せる結果なんて微々たるものなんです。チームの先頭に立って引っ張る人だけでなく、それを支えてくれるみんなの役回りがあってはじめて結果が出ます。
だからこそ、協力会社さんも従業員も含めて、いかにチームとして戦えるかを意識しています。結果が出ても「一人でやっている」と勘違いしないこと、周りに支えられて数字が出ているという事実を忘れないことが大切です。

周りにいる人が笑顔でいられる未来を目指して
――どのような思いが仕事の原動力になっていますか?
竹内:面白いと感じるかと、従業員が笑ってくれているか、楽しんでいるかということですね。自分で使うためにお金を稼ぎたいという人も多いと思いますが、僕は自分のためとなるとあまりスイッチが入らないんですよね。
周りの人たちが「竹内と一緒に仕事をしてよかった」と思ってくれるか。そのために事業をどう拡大するか。そういうところにゲーム感覚に似た面白さを感じますし、大きなモチベーションになっています。
――社長になるというご自身の目標は達成したと思いますが、その次にどのような目標を掲げていますか?
竹内:僕の中で社長はスタートラインなんです。次のノルマは、僕が35~40歳頃までに、グループ企業として年間売上50億を達成すること。それに向かっていくうえで、僕より結果を出せる人がいたら、その人に会社を任せてもいいと考えています。ただ、負ける気もしていないですし、必ず達成させられるとも思っているので、目標ではなく「ノルマ」だと思っています。
――今後の展望を教えて下さい。
竹内:これからはさらに従業員を増やして、僕の意思を伝えていきたいです。僕がいなくても、僕という存在が伝わるくらいにコンセプトを浸透させていきたい。それができれば、会社は自然と大きくなっていくと思います。
また、年間売上50億をこれから先のノルマとしていますが、それは単にお金だけの話ではありません。仕事をするうえで誰にも嫌な思いはしてほしくないし、心から笑っていてほしい。そのためには、選択肢があることが重要だと思います。
その選択肢を広げるためには、どんどんビジネスを広げて、お金を稼がなければなりません。お金がついてきたら、新たな選択肢の中で面白いことが見つかったときに、そこでそのお金を使う。そうやって面白いことができて、みんなが笑っていられて、お金以外のところで充実感が得られたら、それでいいんじゃないかと思うんです。
◎企業情報
社名:株式会社森開発
設立:平成4年3月3日
代表:代表取締役 竹内 匡平
所在地:〒470-2361 愛知県知多郡武豊町多賀7丁目65-1
URL:https://morikaihatsu0401.com/
◎インタビュイー
竹内 匡平
株式会社森開発 代表取締役
梓川高校を卒業後、新卒でアズミ村田製作所に入社し、約1年間勤務。ものづくりの現場を経験した後、建設業の世界へ転身。2021年に石原組へ入社し、現場から経営まで幅広く携わる。2025年、森開発代表取締役に就任。現在は石原組の業務も兼務し、地域に根差した事業展開に取り組んでいる。



