本日、民間金融機関21社(以下、「署名機関」)が、「インパクト志向金融宣言」(以下、「宣言」)に署名したというニュースが入ってきました。「インパクト志向」とは、投融資先の生み出す環境・社会への変化を「インパクト」とし、環境・社会課題を解決するという考え方を指すとのこと。今回は、金融機関が志すという「インパクト志向」について考えてみたいと思います。
「インパクト志向」とは?
「インパクト志向」とは宣言の前文によると、以下の通り定められています。
持続可能性を問うたうえでその存在目的を再認識もしくは見直ししたうえで、経営者の意図として、その組織において包括的にインパクトをとらえて環境・社会課題解決に導くという考え方
引用: 「インパクト志向金融宣言」ホームページ
持続可能性、つまりサステナビリティがインパクト志向には強く求められています。企業経営者は、自身の事業活動やサービスを「環境・社会課題解決に導く」ためになるのかどうか、そして金融機関においては、経済的リターンだけでなく、社会的および環境的インパクトがあるかを考えなければなりません。
国連が推進するSDGs達成のためには年間最大7兆ドルもの資金が必要と推計されています。それは各国だけで賄えるものではなく、民間資金の活用も期待されているのです。
「インパクト投資」とは?
宣言内における「インパクト志向の投融資」とは、GSG国内諮問委員会の定義する「インパクト投資」と同義であり、融資・債券・上場株式・未公開株式などあらゆる金融形態を含むものです。そもそも「インパクト投資」とはどのような投資手法なのでしょうか。
GSG国内諮問委員会 のサイトを見てみましょう。
インパクト投資とは、財務的リターンと並行して、ポジティブで測定可能な社会的及び環境的インパクトを同時に生み出すことを意図する投資行動を指します。
引用: GSG国内諮問委員会
投資と言えば「リスク」と「リターン」。ここに「インパクト」という第3の軸を取り入れた投資がインパクト投資です。インパクト投資は、特定の社会課題解決が目的となり、課題の解決度合いをインパクト評価で可視化します。
すでに、欧米では年金・保険加入者・個人投資家からの強いインパクト志向を受けて、機関投資家によってインパクト投資が手広く行われています。SIIF(社会変革推進財団)の集計によると、2020年でその市場規模はすでに7150億ドルにものぼるそうです。
インパクト投資とESG投資は何が違う?
ここまで読まれてきて「『環境や社会への影響を考慮する』なら、インパクト投資はESG投資と同じなのでは?」と思われた方もいるかもしれません。
確かESG投資は、従来の財務情報だけでなく、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)要素も考慮した投資です。そして確かにインパクト投資とESG投資は、その目的について一部重なるところもあります。
しかし、ESG投資はその企業自体の事業への姿勢や価値から判断して、事業経営リスクが低い企業に投資するのに対し、インパクト投資は特定の社会課題解決を目的とするという明確な意図があります。
そして、社会的インパクトを定量的・定性的に把握・評価し、事業や活動について価値判断を加えることと定義しているのが大きな違いです。
これからはインパクト投資が主流になる?
宣言の前文には、以下の通り定められていることからも「インパクト金融志向」については「社会をより良くする」事業活動に対して企業と金融機関による共創的な取り組みを行っていく方針であることがわかります。
金融機関が企業活動のもたらす環境・社会への変化(以下「インパクト」という)に着目し、投融資先である企業の生み出すネガティブインパクトを削減することおよびポジティブなインパクトを創出する双方の活動が求められている。
引用: 「インパクト志向金融宣言」ホームページ
民間資金を使って、SDGsの達成に寄与する投資手法として世界で注目されるインパクト投資。日本ではまだまだ取り組みがESG投資にとどまっている状況でしたが、今回の宣言を受け、金融業界がインパクト志向の投融資で社会問題解決に向けて後押しすることが期待されます。
※インパクト志向宣言や、署名機関・参道機関については、以下のWebサイトよりご確認いただけます。