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ヒカル「農家を救う」米事業、その後どうなった? 2万人殺到から1年半、スタッフが「ヒカルさんを動かして」

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元気だ米
元気だ米 公式HPより

「全国の米農家を助けたい」。YouTuberのヒカルがそんな言葉とともに始めた「元気だ米」が、約1年半ぶりに思わぬ形で注目されている。運営スタッフが「ヒカルさんを動かしましょう」と視聴者に呼びかけたからだ。開始当初には約2万人の購入希望者が集まった米事業は、結局どうなったのか。

 

約2万人が殺到、「米が足りない」ほどのスタート

「元気だ米」が始まったのは2025年4月。当時は米価高騰が大きな社会問題となる一方、肥料や燃料、農業機械などのコスト上昇に苦しむ生産者の状況も注目されていた。ヒカルは全国の農家から米を直接仕入れ、なるべく中間業者を通さず消費者へ届ける構想を発表した。公式サイトでも、生産者へ支払う金額を増やすことを目的の一つとしている。

ヒカルの発信力もあり、反響は大きかった。翌5月には購入希望者が約2万人に達し、ヒカル自身が「お米が逆に足りないくらい」と説明。農家からの買い取り価格も当初予定していた60キロ2万3000円から2万5000円へ引き上げる方針を示した。プロジェクト発表動画は200万回以上再生され、同月には衆議院農林水産委員会でも「元気だ米プロジェクト」が取り上げられた。

 

1年半後、スタッフが「ヒカルさんを動かしましょう」

再び注目を集めたのは2026年9月17日。「元気だ米」のスタッフ・いつきゆりこ氏が、ヒカルのビジネスパートナーである入江巨之氏のYouTubeチャンネルに登場した。動画タイトルは「ヒカルチャンネルでお米を売れなくなりました」。いつき氏は「私はヒカルさんに怒っています」と切り出し、最近ヒカルが米を扱う動画を撮ってくれないと訴えた。

さらに「ヒカルさんを一緒に動かしましょう」と視聴者にも協力を求め、会員1万人を目標に掲げた。この動画を紹介したX投稿は700万回以上表示され、「ヒカルはもう米に興味がないのでは」といった見方も広がった。一方、動画では新米の販売開始や値下げも告知している。単なる内部告発ではなく、新米を売り出すタイミングで注目を集める狙いもあったとみられる。

 

実際は「売れていない」どころか昨年度分は完売

では、「元気だ米」は苦境に陥っているのか。公式サイトを見ると、印象はかなり変わる。2025年度分は「完売」と明記され、事業も終了していない。現在は2026年産新米へ切り替わり、定期購入の申し込みを受け付けている。新たな生産者やスポンサーの募集も続いている。

今年は価格も下げた。通常精米5キロは10月1日以降、商品代2499円に送料1000円を加えた3499円となり、従来より約900円安くなる。無洗米や10キロ商品も用意し、配送間隔も細かく選べるようにした。運営側は、米相場が落ち着いた分を価格に反映したとしている。つまり、現時点で確認できるのは「売れなくなって事業が止まりそう」という姿ではなく、1年目の米を売り切り、2年目の顧客を取りにいく姿だ。

 

それなのに、なぜスタッフはヒカルに怒ったのか

ここでようやく今回の騒動の核心が見えてくる。米がまったく売れなかったから、スタッフがヒカルに助けを求めたわけではない。1年目は完売した。それでも2年目の販売を広げるには、ヒカル本人の発信力が必要だと運営側が考えているということだ。

開始時を振り返れば、その理由も分かる。「元気だ米」は無名の米ブランドとしてゼロから客を集めたわけではない。登録者数約500万人のヒカルが「農家を助けたい」と発信したことで、一気に約2万人の購入希望者を集めた。200万回以上再生された動画と同じ宣伝力を、運営スタッフだけで再現するのは難しい。「ヒカルさんを動かしましょう」という言葉は、裏を返せば、それだけヒカルの発信が販売に大きな役割を果たしてきたことを示している。

 

ヒカルは米事業から離れたのか

Xでは「ヒカルはもう米に興味がない」とする見方も拡散したが、本人は否定している。9月23日には「お米を動画で扱わないなんて一度も言ってないのに嘘を拡散されました」と投稿した。

実際、「元気だ米」の販売は現在も続き、販売元もヒカルが展開するブランドと同じ株式会社ReZARDだ。確認できる情報から、ヒカルが米事業から撤退したとは言えない。今回起きたのは「ヒカルが米事業をやめた」という話ではなく、運営側が2年目の販売をさらに伸ばすため、ヒカルにもっと表へ出てほしいと求めたという話になる。

 

では「農家を救う」はどうなった?

ここが、1年半後の「元気だ米」で最も知りたいところだ。

確認できる成果はある。1年目の米は完売し、2年目も全国から米を仕入れて販売する仕組みが続いている。スタート時には買い取り価格を60キロ2万5000円へ引き上げる方針も示していた。少なくとも「農家を助けたい」と一度米を売って終わった企画ではない。

一方で、「どれだけ農家を救えたのか」を判断できる数字は十分に見えてこない。現在何軒の農家と取引しているのか。年間で何トンの米を買い取ったのか。農家へ総額いくら支払ったのか。一般的な流通を通した場合と比べ、生産者の手取りがどれほど増えたのか。こうした事業全体の成果を示す数字は、公開情報からは確認しにくい。

これは「元気だ米」にとって小さな話ではない。普通の米ブランドなら「何袋売れたか」で成功を語ることもできる。しかし、このプロジェクトが掲げたのは「全国の米農家を助けたい」という目的だった。ならば2年目以降は、完売したかどうかだけでなく、その仕組みによって農家に何が還元されたのかも問われる。

 

2年目の本当の勝負は「ヒカルが売る米」から先にある

1年目の完売は、ヒカルの発信力が米販売でも大きな力を持つことを証明した。一方、今回スタッフが「ヒカルさんを動かしましょう」と訴えたことで、その強さに頼る難しさも見えた。

ヒカルが動画を出すたびに注文が増えるだけでは、販売量は本人の発信に左右され続ける。農家が必要としているのは、一度だけ大量に売れることだけではない。来年も米を作れば買ってくれる人がいるという見通しも重要になる。

だから「元気だ米」の次の焦点は、ヒカルが何本の動画を出すかだけではない。一度ヒカルをきっかけに買った人が、価格や味、産地、生産者への還元という理由で翌年も選ぶのか。その積み重ねができれば、「ヒカルが売る米」は農家にとって継続的な販売先へ変わっていく。

約2万人を一気に振り向かせた最初のインパクトは大きかった。そして1年目の米も完売した。だからこそ2年目は、「どれだけ話題になったか」より「農家に何を残したか」が見えてくる数字を期待したい。「全国の米農家を助けたい」という最初の言葉が、どこまで形になったのか。「元気だ米」が本当に評価されるのは、むしろここからだ。

 

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ライター:

Webライター。きれいごとだけでは済まない現実を、少し距離を置いて綴っています。

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