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SHEINはなぜ「正反対」のEverlaneを買ったのか 8000万ドル買収に見える成長の壁

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SHEIN
DALLーEで作成

「安さ」と「速さ」で成長してきたSHEIN。一方、「どう作られた服なのか」を重視し、透明性やサステナビリティーを掲げてきた米Everlane。正反対に見える2社が、同じグループになった。SHEINは2026年5月、Everlaneを傘下に収めた。買収額は8000万ドルとされる。

一見すると、SHEINが自社とは違うブランドを手に入れただけのようにも見える。しかし両社の現在地を追うと、別の意味が見えてくる。SHEINは「安さだけでは伸び続けにくい」。Everlaneは「理念だけでは成長を続けにくい」。それぞれが抱える弱点を、相手が持っていた。

 

「正反対」に見える2つのブランド

SHEINの最大の強みは、商品を作る速さだ。ネット上の流行や販売データを分析し、まず少量を生産。売れれば追加し、反応が悪ければ大量在庫を抱えない。こうした仕組みによって、非常に多くの商品を短期間で投入し、低価格と商品数の多さを武器に世界中の消費者を取り込んできた。

Everlaneは反対の方向から支持を集めた。2011年に創業し、「Radical Transparency(徹底した透明性)」を掲げ、工場や生産背景、価格の考え方などを積極的に公開してきた。「安いから買う」のではなく、「この会社の考え方に共感するから買う」。そんな顧客を持つブランドだった。だからこそSHEINによる買収が明らかになると、一部の顧客からは戸惑いも広がった。

 

「理念」はあってもEverlaneは伸び悩んでいた

ただし、Everlaneが順調だったわけではない。一時は企業価値約6億ドルと評価されたものの、その後は経営陣の交代や人員削減が続き、経営面で苦戦していた。市場も変わった。Everlaneが成長した2010年代前半は、「環境や生産背景を考えて服を選ぶ」という考え方そのものに新しさがあった。

しかし現在は、大手アパレルを含む多くの企業が環境配慮や素材の見直しを掲げている。「サステナブルなブランド」であるだけでは、以前ほど強い差別化にならない。理念に共感するファンがいても、売上や利益が伸びなければ会社は続けられない。Everlaneにとっても、SHEINの資金力や世界規模の供給網を利用する意味は大きかったと考えられる。

SHEINも「安さ」だけでは伸びにくくなった

一方のSHEINも転換点を迎えている。急成長を支えてきたのは、低価格で大量の商品を提供するビジネスモデルだった。しかし、その強みを維持する環境が変わり始めている。米国や欧州では、安価な小口輸入品に対する関税や制度の見直しが進み、輸入コストが上がれば、SHEIN最大の武器である「安さ」を守りにくくなる。

さらに環境負荷や労働環境、知的財産をめぐる批判も続く。9月には香港市場へ上場したが、企業価値は2022年に約1000億ドルと評価された時期から大きく低下し、2026年1~3月期には赤字も計上した。これまでと同じ方法だけでは、成長し続けるのが難しくなっている。

 

SHEINが欲しかったのは「Everlaneの服」だけではない

ここでEverlane買収の意味が見えてくる。SHEINには、安い服を求める巨大な顧客層がいる。しかし、「多少高くても品質やブランドの考え方で選ぶ」消費者には、それほど強く届いていない。Everlaneには、その顧客がいる。

SHEINがEverlaneを傘下に入れれば、自社ブランドだけでは入りにくかった価格帯や顧客層へ進める。企業買収では、自社に似た会社を買うだけではない。自分たちにない顧客やブランド、販売網を手に入れるため、むしろ性格の違う企業を選ぶこともある。SHEINにとってEverlaneは、まさに「自分にないもの」を持つ会社だった。

 

次に売ろうとしているのは「服」ではなく「仕組み」

さらにSHEINは、自社のビジネスそのものを広げようとしている。9月4日のロイター報道では、SHEINが企業買収を成長戦略に位置づけ、自社で培った供給網や在庫管理の仕組みを他ブランドにも広げようとしていることが伝えられた。

SHEINの強みは服そのものだけではない。何が売れているかをすばやく判断し、必要な量だけ作り、売れれば増産する。その仕組みに価値がある。この仕組みを他ブランドにも提供できれば、SHEINは「自社ブランドの商品を売る会社」だけではなくなり、他社の生産や販売まで支える会社へ広がる。Everlaneは、その戦略が本当に通用するのかを試す重要なケースになる。

 

効率化しすぎるとEverlaneの価値を壊す

ただし、ここに今回の買収の難しさがある。SHEINが得意なのは、速く、効率的に商品を市場へ出すことだ。しかし、その方法をEverlaneにそのまま持ち込めば、商品投入のスピードが上がり、より安く大量に販売できる一方で、Everlaneが「SHEINとあまり変わらないブランド」になる可能性もある。

Everlaneの価値は商品名やロゴだけではない。「この会社は、こういう考え方で服を作る」という消費者からの信頼まで含まれている。企業を買うことはできても、その信頼まで自動的に手に入るわけではない。むしろ買収によって、その信頼は試されることになる。

 

「安さ」と「理念」、どちらか一つでは足りなくなった

今回の買収は、ファッション業界そのものの変化も映している。SHEINは「安さと速さ」だけでは成長を続けにくくなり、Everlaneは「理念やサステナビリティー」だけでは成長を続けにくくなった。それぞれが強みを持ちながら、それだけでは次へ進めなくなっている。

SHEINにはスピード、データ、巨大な供給網がある。Everlaneには別の顧客層とブランドへの信頼がある。両方を残したまま組み合わせられれば、SHEINは「安い服を大量に売る会社」から、その先へ進めるかもしれない。ただ、そのためには一つ難しい条件がある。自分とは違うブランドを、自分と同じにせず成長させられるか。 Everlane買収で本当に問われるのは、そこだ。

 

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ライター:

Webライター。きれいごとだけでは済まない現実を、少し距離を置いて綴っています。

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