
人気アパレルブランド「WEGO」が、またとない大炎上に見舞われている。人気アニメ『僕のヒーローアカデミア』(ヒロアカ)とのコラボ商品を発売直前にして急遽取りやめたのだ。国内ファンが悲鳴を上げる裏で一体何が起きていたのか。背景にあったのは、巨大な中国市場を巻き込んだ激しいバッシングと、あまりにも迂闊な“二重の地雷”だった。
旗艦店オープン直前、絶妙すぎるタイミングで踏み抜いた地雷
はじまりは9月7日の発表だった。描き下ろしイラストを用いた限定アイテムが9月18日から全国で発売されるはずだったが、まさにこの発売日が地雷となった。実は、中国にとって、9月18日は、歴史的に極めて敏感な「九一八事変(満州事変)」から95年目の節目にあたる日だったのだ。さらに、コラボ相手の『ヒロアカ』は2020年、作中キャラクターの志賀丸太の名前が旧日本軍731部隊の人体実験犠牲者を連想させるとして中国で配信停止にまで追い込まれた、いわば因縁のコンテンツでもあった。
折しもWEGOは、9月29日に上海で初の大型「コンセプト旗艦店」をオープンさせる直前という大勝負の真っ只中。中国展開を本格化させる重要な局面で、歴史的敏感日と過去に大炎上したコンテンツを掛け合わせるという、企業として致命的なタイミングを選んでしまったのである。
中国の反応はライブ配信は荒れ模様、大手メディアも総攻撃
発表直後から、中国のネット上は蜂の巣をつついたような騒ぎとなった。9月10日に行われた中国のECサイト「タオバオ」での公式ライブ配信には、怒りに満ちた視聴者からの批判コメントが殺到。
長年WEGOの「痛バッグ」などを愛用していた若者層からも「中国市場の購買力だけを見て歴史的記憶を踏みにじった」「失望した、もう二度と買わない」といった投稿が相次ぎ、一気に不買運動へと発展した。
さらに火に油を注いだのが、中国大手メディアによる怒りの社説だ。
『北京新聞』は、単なるWebページの翻訳ではなく消費者の歴史的記憶を尊重することこそが本当のローカライゼーションだと断じた。
また『観察者網』も、上海での新規開店を目前に控えながらこの日を選んだことを「無知や偶然では到底説明できない」と痛烈に批判。『グローバル・タイムズ』までもが、国民的な激怒と不買の広がりを大々的に報じた。
中国側にとって今回の件は、単なるコラボではなく、歴史への敬意を欠いた重大な挑発行為と受け止められたのだ。
中国市場を優先し、日本のファンを切り捨てた代償
事態の深刻さに青ざめたWEGOは、9月10日夜に公式SNSやサイトからコラボ告知をひっそりと削除。事実上の電撃取り下げを選んだ。
しかし、この中国市場優先とも取れる土壇場での手のひら返しに対し、今度は日本のファンから「中国の顔色ばかり伺って国内のファンを裏切った」「配慮するなら最初から企画するな」と落胆と不信の声が噴出している。
国境を越えてビジネスを拡大する企業にとって、単に言葉を翻訳したり現地ストアを出店したりするだけでは「ローカライゼーション」とは呼べない。進出先の歴史的記憶や敏感なタブー、文化的な地雷をどこまで把握・配慮できるかという、多国籍展開ならではの極めて高いハードルが浮き彫りとなった格好だ。
巨大な海外市場の獲得に目が眩み、足元の信頼を根底から揺るがせてしまったWEGO。上海旗艦店のオープンを目前に、あまりにも高すぎる代償を払うことになってしまった。



