
一台のトラックが、被災地で役割を果たした。商業施設運営などを手がける株式会社KUL(大阪市)が協力してきた大阪府富田林市の災害用トイレトラックが、令和8年熊本地震の被災地支援のため出動した。
自治体・企業・地域の連携で進めてきた平時からの備えが、実際の災害支援へとつながった事例である。
宇城市の要請を受けて出動
2026年7月28日に発生した令和8年熊本地震の発災直後から、富田林市は一般社団法人助けあいジャパンが運営する「みんな元気になるトイレネットワーク」の枠組みのもと、迅速な被災地支援に向けた準備を進めてきた。
被災自治体である熊本県宇城市からの支援要請を受け、8月9日には大阪南消防本部富田林消防署で派遣出発式が開かれた。その後、トラックは午後5時に被災地へ向けて出動。8月10日から現地での支援活動を開始し、被災地におけるトイレ環境の確保に活用されている。
トイレトラックは、水洗式の個室を複数備えた車両で、被災地に到着すればすぐに清潔なトイレとして使える。仮設トイレの設置を待たずに、発災後の早い段階から避難者へ快適な環境を提供できる点が強みだ。

「発災から3日以内に良質なトイレを」
大規模災害時には、食料や水の確保に加え、衛生的なトイレ環境の維持が重要な課題となる。トイレを我慢することが体調悪化につながるなど、その影響は避難者の健康に直結する。
富田林市は「発災から3日以内に良質なトイレを確保する」ことを目標に、災害派遣トイレネットワークへの参画とあわせて、災害用トイレトラックの導入を進めてきた。KULもその趣旨に賛同し、クラウドファンディングを通じて導入に協力してきた。今回の出動は、平時から進めてきた備えが実際の支援へと結実した形だ。
災害時のトイレ問題は、過去の大規模災害でも繰り返し課題となってきた。断水や下水道の損傷で水洗トイレが使えなくなると、避難所の衛生環境が急速に悪化し、感染症のリスクが高まる。快適なトイレがあることは、避難者が水分や食事を控えずに済むことにもつながり、健康維持の面でも欠かせない備えとされている。
自治体をまたいで支え合う仕組み
「みんな元気になるトイレネットワーク」は、災害時に全国の自治体が保有するトイレトラックを被災地へ派遣し合う枠組みだ。ふだんは各地のイベントなどで活用されるトラックが、いざというときには被災地へ駆けつける。日頃から複数の自治体が参加することで、災害の規模や場所を問わず、素早く応援を送り出せる体制を築いている。
一つの自治体だけで大規模災害に備えるには限界がある。平時から広域で連携し、資源を融通し合う仕組みがあれば、被災自治体は外部からの支援を早期に受けられる。今回の富田林市から宇城市への出動は、その地域間連携が実際に機能した具体例といえる。
多様な主体が連携する地域防災
KULは、「“暮らしやすい”をデザインする」企業として、商業施設の運営を通じて地域の日常を支えるとともに、地域防災や安全・安心なまちづくりにも取り組んでいる。UR都市機構グループの一員で、ショッピングセンターの管理運営や公的施設の管理運営などを手がける。
災害への備えは行政だけでなく、企業や地域住民を含む多様な主体が連携して進めることが重要になる。同社は、今回の出動が自治体・企業・地域の協力によって平時の備えが実際の災害支援につながった事例のひとつだとし、被災地での支援活動が避難生活を送る人々の安心につながることを期待するとしている。今後も地域社会の一員として、防災力向上や持続可能なまちづくりにつながる活動を継続していく方針だ。
身近な暮らしを支える企業が、防災という形でも地域に関わる。日常の事業と非常時の支援がつながることで、地域全体の災害への備えは厚みを増す。富田林市と宇城市を結んだ一台のトラックは、そうした官民連携のかたちを示している。



