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タイ名門「シンハー」創業家を揺るがす性被害告発 財閥4世の涙の訴えに広がるMeTooの声

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シンハー 創業家
DALLーEで作成

タイを代表するビールブランド「シンハー」で知られる名門一族をめぐり、深刻な告発が波紋を広げている。環境活動家のシラヌード・“プサイ”・スコット氏が、幼少期から実兄に性的虐待を受けたとSNSで訴えたためだ。

兄側は疑惑を否定しているが、グループ中核企業は兄が社内のすべての職位から離れたと発表した。財閥一族の内側で何が起きていたのか。騒動は、タイ社会で性被害を語る動きにもつながっている。

 

 

「シンハーの御曹司と呼ばれたくない」涙の動画が拡散

プサイ氏は、自身のFacebookに涙ながらの動画を投稿した。動画の中で訴えたのは、名門一族の一員として見られることへの拒否感と、家族に守られなかったという深い失望だった。

さらに、家族が録音された音声を聞いていたにもかかわらず、十分な対応を取らなかったと主張。自分を大切にせず、共感も示さない家族とは暮らせないという趣旨の言葉も口にした。華やかな一族の看板の陰で、自身の苦しみが置き去りにされてきたという訴えは、タイ国内で大きな反響を呼んだ。

プサイ氏は、海洋保護活動に取り組む人物としても知られている。環境保護を訴える活動や発信を通じて支持を集めてきた存在だっただけに、今回の告発は一族内の問題にとどまらず、社会的な関心を集める出来事となった。

 

幼少期から長年続いたと主張 兄側は疑惑を否定

報道によると、プサイ氏は兄のスニット・スコット氏による行為が10代前半ごろから始まり、その後も長年続いたと主張している。一部では、兄が寄宿学校から帰宅する時期に被害があったとも伝えられている。

プサイ氏の主張に対し、兄のスニット氏は疑惑を否定している。

スニット氏は、妻でタイの人気女優マイルド氏のFacebookを通じて反論声明を出した。声明では、自身は大学まで海外の寄宿学校にいたと説明し、弟と会った際に兄弟間の荒っぽいやり取りはあったものの、性的虐待はしていないと主張している。

これを受け、プサイ氏は翌日、兄の告白を録音したものだとする音声を公開。音声の内容をめぐって議論はさらに広がり、騒動は一族内の対立から、タイ社会全体が注目する問題へと拡大した。

 

ブンロートは全職位からの離脱を発表

騒動が広がるなか、シンハービールを手がけるブンロート・ブリュワリー社は、スニット氏が社内のすべての職位から離れたと発表した。同社は、プサイ氏に起きたことについて遺憾の意を示し、当局の調査に協力する姿勢も明らかにしている。

兄側が疑惑を否定している以上、企業側の対応が事実認定を意味するわけではない。それでも、創業家メンバーをめぐる深刻な告発に対し、企業として何らかの対応を迫られた形だ。

ブンロートは、タイを代表するビールブランドを展開する企業として広く知られている。食品、ホテル、不動産など多方面に事業を持つ一族の中核企業に関わる問題であることも、騒動を大きくしている。

 

財産紛争も背景に 切り分けて見る必要

今回の告発には、家族間の財産紛争も背景にあるとされる。プサイ氏は、過去に家族へ被害を知らせたものの、沈黙を保つ条件で金銭的補償を受けたと主張している。その後、母親との財産問題が表面化したことで、公に告発する決意を固めたという。

このため、タイ国内では告発を支持する声がある一方で、家族間の資産をめぐる対立にも注目が集まっている。

ただし、財産紛争があることと、性被害の訴えの真偽は分けて考える必要がある。財産をめぐる争いがあるからといって、告発そのものが否定されるわけではない。一方で、告発があったからといって、すべての主張が自動的に事実として確定するわけでもない。

 

タイ社会に広がる性被害の告白

今回の騒動は、タイ社会で性被害を語る動きにもつながっている。オンライン上では、プサイ氏への共感や支持の声が広がり、自らの被害経験を明かす人も出始めている。

これまでタイでは、性被害を訴えることに対する心理的な壁が大きかったとされる。被害を受けた側が責められたり、家族や組織の体面を優先されたりすることで、多くの人が沈黙を選ばざるを得なかった。

今回の告発は、そうした空気を変え始めている。被害を語ることは簡単ではない。それでも、プサイ氏の発信をきっかけに、孤立していた人々が「自分だけではなかった」と感じられる場が生まれつつある。

 

名門一族の騒動が問いかけるもの

今回の問題は、単なる財閥一族のスキャンダルではない。問われているのは、性被害を訴える人の声を、家族や社会がどう受け止めるのかという点だ。

プサイ氏の告発、兄側の否定、録音音声の公開、企業の対応、財産をめぐる対立、そして広がる被害告白。それぞれを切り分けて見なければ、問題の本質は見えにくくなる。

今後は、当局の調査や関係者の説明によって、事実関係がどこまで明らかになるかが焦点となる。同時に、声を上げた人を孤立させない社会のあり方も問われている。名門一族の騒動が照らし出したのは、長く沈黙の中に置かれてきた痛みそのものだ。

 

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ライター:

Webライター。きれいごとだけでは済まない現実を、少し距離を置いて綴っています。

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