
歌舞伎町のホストクラブで「エレン」の源氏名を使っていた元従業員・竹岡拓人容疑者(27)が、女性客に性風俗店での勤務を要求した疑いで逮捕された。
マッチングアプリで身分を偽り、交際を装って高額な支払いを迫った手口は、改正風営法施行後も繰り返されている。
しかも今回が初めてではない。
2026年1月末にも同じ容疑者は客引き容疑で逮捕されており、釈放後に再び摘発された。
IT関係者と偽って近づき風俗店勤務を要求
警視庁は10月14日、東京都新宿区の元ホスト、竹岡拓人容疑者(27)を風俗営業法違反(禁止行為)の疑いで逮捕した。
容疑は、ホストクラブの代金を支払わせる目的で女性客に性風俗店で働くよう要求したというものだ。
竹岡容疑者は歌舞伎町の「AXEL by ACQUA」で「エレン」と名乗り活動していた。
同店はACQUA GROUPに属し、店の代表は水樹礼斗氏、グループの会長はあおい氏(令和の夜王)である。
捜査関係者によると、竹岡容疑者は2025年7月頃、マッチングアプリで当時25歳前後の女性と知り合った。
プロフィールには「IT会社員」と登録し、誠実な印象を与えた。
交際が始まると「実は副業でホストをやっている」「俺の全部を知ってほしいから来てほしい」と明かし、自身が働く店に案内した。
女性は約8回通い、消費者金融から約200万円を借り入れるなどして合計約380万円を支払った。
支払いが厳しくなり「今後は店に行けない」と告げると、「ヘルスの仕事がある」「売り上げが上がれば早くホストを辞めて、2人で旅行に行ったりするお金に使えるから、今だけがんばってほしい」などと誘惑し、風俗店勤務を要求した疑いが持たれている。
11月23日頃にはスカウト役の福重昂宏容疑者(35)が女性を千葉県船橋市のファッションヘルスに紹介。
女性は実際に働き始めた。今年2月に女性が新宿署に相談し、事件が発覚した。別の女性では半年で約1000万円近くを支払ったケースも報じられている。
この逮捕は、改正風営法で新設された「料金支払いのために性風俗店勤務を要求する行為」の禁止規定による警視庁初の摘発となった。
マッチングアプリを悪用した色恋営業と客引き
竹岡容疑者の問題は今回が初めてではない。
今年1月末、警視庁は同容疑者を風営法違反(客引き)の疑いで逮捕した。ホストであることを隠してマッチングアプリで女性2人と接触し、「実は副業でホストをやってる」「俺の全部を知ってほしいから来て」などと言って店に勧誘した疑いだ。
女性らは貯金や消費者金融での借金を使い、それぞれ181万円や600万円を支払わされた。
マッチングアプリによるホストの客引き摘発は全国初とされた。
その後、竹岡容疑者は保釈などでいったん釈放されたが、今回の事件で再び逮捕された形だ。
1月の逮捕後、別の女性についても再逮捕され、東京都公安委員会は竹岡容疑者の行為が改正風営法で禁止された色恋営業に該当するとして、「AXEL by ACQUA」と関連店舗に行政処分を出した。
色恋営業禁止違反による行政処分は全国初だ。
つまり、1月の客引き逮捕から解放された後も、ほぼ同じ「IT関係者と偽ってマッチングアプリで接近→交際を装う→高額支払いを迫る→行き詰まったら風俗店勤務を要求する」という手口が続けられていたことになる。
売掛が立替に変わっただけ 改正風営法後も続く搾取構造
2025年6月に施行された改正風営法は、売掛金を支払わせる目的での威迫や、その回収のために風俗店勤務・売春を要求する行為を禁止した。
歌舞伎町では2024年4月に業界の自主規制で売掛を全廃したとされ、大手グループでは現金・カード払いが主流になった。
警察庁の2025年統計では悪質ホスト関連の検挙や行政処分が減少している。
しかし現場では、店の帳簿上の売掛ではなく、ホスト個人が客の分を肩代わりする「立替」という形に変わって残っているケースが指摘されている。
客とホストの個人間の借金になるため規制を回避しやすく、女性が借金を抱えて風俗で稼ぐ構造自体は変わっていない。
今回の事件も改正法施行後の事案であり、表面的なルール変更だけでは搾取を止められない実態を示している。
竹岡容疑者のケースは、まさにその「立替+風俗勤務要求」の典型例だ。
ホストコールが目指すクリーン化と現場のギャップ
業界のイメージ向上を掲げるYouTube番組「ホストコール」は、キャバ嬢オーディション「ラストコール」のホスト版として2026年6月末にスタートした。
MCは溝口勇児氏とROLAND氏で、ホストを目指す志願者を業界トップの「キング」たちが審査する。
初回から100万回近く再生され、その後も高視聴を維持している。
キングの一人として出演しているのが、ACQUA GROUP会長のあおい氏(令和の夜王)だ。
番組は健全化を前面に出しているが、視聴が増える一方で批判も繰り返されている。
審査員として出演するホストや所属グループをめぐる暴露投稿が目立ち、過去のトラブルを指摘する声が上がる。
制作面でもスポンサー表記をめぐって企業が「契約はしていない」と否定する事態が起きた。
竹岡容疑者が所属していたグループの会長がキングとして出演する番組でクリーン化を語る一方で、同じグループの店舗から、1月の客引き逮捕に続き10月にも再逮捕者が出る現実が、ギャップを浮き彫りにしている。
なぜクリーン化は進まないのか 繰り返される事件と構造的な問題
売掛の自主規制や改正風営法、番組を通じたイメージ向上の取り組みが進む中でも、ホスト絡みの深刻なニュースは後を絶たない。
人気AV女優の倉木華さんが2026年9月に急死した件では、交際相手とされたエルコレ傘下のclub Leo所属ホスト・平良翔太氏をめぐる暴力や金銭トラブルの告発がSNSで相次いだ。
平良氏は9月30日付で退店し、店側は誹謗中傷への自制を求めたが、具体的な説明はなく、所属事務所のティーパワーズは「生前に深く傷つき苦しんでいた」と憤りを表明している。
高額なシャンパンや色恋を前提とした商売の構造が残る限り、女性を経済的に追い詰め、風俗や借金に誘導するインセンティブは消えにくい。
法令遵守を最低限のラインとしながらも、個人間の立替やマッチングアプリを通じた接近は規制しづらい。
竹岡容疑者が短期間に2度逮捕された事実は、表面的なクリーン化の動きと、現場で繰り返される搾取の間に横たわるギャップが依然として埋まっていないことを象徴している。



