
3歳と5歳の子どもを連れてアフガニスタンへ――。親子で世界各地を旅するYouTubeチャンネル「ど根性ゆりの母子旅」のゆりさんが、現地入りを発信し大きな波紋を呼んでいる。アフガニスタン全土は現在、外務省の海外安全情報で最も高い危険レベル4。危険性を指摘する声に対し、本人が「外務省とかあてにならないです〜」と返したことで反発はさらに拡大した。しかも、子連れ旅をめぐる批判は今回が初めてではない。2026年1月には南米への51日間の旅でも炎上し、一時SNS活動を休止していた。今回のアフガニスタン渡航は、その延長線上で起きている。
「196カ国を旅したい」子ども2人との母子旅を発信
「ど根性ゆりの母子旅」は、ゆりさんが3歳と5歳の子ども2人と世界各地を旅する様子を発信するYouTubeチャンネルだ。2025年4月からYouTubeでの発信を始め、SNSでも旅先での出来事や子どもたちとの日常を投稿している。
ゆりさんは、世界196カ国すべてを旅することを目標に掲げている。特徴は、一人旅でも夫婦旅でもなく、幼い子ども2人を連れて各地を巡っている点だ。観光地だけでなく、一般的な家族旅行では選ばれにくい国や地域にも足を運んできた。その大胆な旅を支持する声がある一方、「子どもの安全は大丈夫なのか」という批判も以前から寄せられている。
3歳と5歳を連れて、危険レベル4のアフガニスタンへ
ゆりさんは9月30日、3歳と5歳の子どもとアフガニスタンへ到着したことをThreadsで報告した。首都カブールについて、ぼったくりもなく、人々も親切で平和だという趣旨の発信もしている。
注目されたのは、旅先がアフガニスタンだったことだ。外務省は同国全土を危険レベル4に指定し、「退避してください。渡航は止めてください」と呼びかけている。これは観光を控える程度の注意喚起ではなく、現在滞在中の日本人にも退避を求める最高度の警戒水準だ。
レベル4は「気を付けて行く」段階ではない
外務省の危険情報は4段階に分かれている。レベル1は「十分注意してください」、レベル2は「不要不急の渡航は止めてください」、レベル3は「渡航は止めてください」。その最上位がレベル4の「退避してください。渡航は止めてください」だ。
アフガニスタンでは、タリバーンによる事実上の統治が続く中、IS-KPなどによるテロが継続して発生している。外務省は殺人、強盗、誘拐などの犯罪も増加傾向にあるとして、情勢と治安を「極めて不安定かつ危険」と説明している。さらに「どのような目的であれ」渡航を止めるよう求めている。つまり、本人が現地で平穏を感じたかどうかとは別に、日本政府としては渡航そのものを避けるよう強く求めている地域ということになる。
「現地は平和だった」と「安全に旅行できる」は同じではない
カブールの街に日常生活があり、親切な人々が暮らしていることと、国全体の治安リスクは別の話だ。危険情報は、旅行者がその日その場所で感じた印象だけで決まるものではなく、テロ、犯罪、政治情勢、誘拐リスク、緊急時の邦人保護の難しさなどを含めて判断される。
旅動画やSNSでは、目の前の映像が強い説得力を持つ。市場が開き、人々が笑顔で接していれば、「思っていたほど危なくない」と感じる人も出る。ただ、数日間何も起きなかった経験だけで、国全体の危険性まで判断するのは難しい。今回の騒動では、本人が感じた「平和」と、公的機関が示す危険レベル4との間に大きなズレが生まれた。
実は1月の南米旅でも大炎上していた
ゆりさんの子連れ旅に批判が集まったのは、今回が初めてではない。2026年1月には、子ども2人と3人で51日間の南米旅に出ると告知。その際、「幼い子どもを連れて南米へ行くのは危険では」とする投稿がXで1100万回以上表示されるなど、大きな反響を呼んだ。
批判が激しくなった後、ゆりさんは1月16日に「SNS活動一時休止のご報告」を投稿。人格を否定するような悪質なコメントが多数寄せられたとして、SNS活動を一時休止した。すでにコロンビアに入っていることも明かし、悪質なコメントやDMには開示請求などの法的措置を進める意向も示していた。3月には南米旅から帰国し、YouTubeで旅を続ける姿勢を示している。
つまり、今回のアフガニスタン渡航だけが突然批判されたわけではない。これまでにも「幼い子どもをどこまで連れて行くのか」という安全面への懸念があり、それでも本人は旅を続けてきた。その流れの先に、危険レベル4の国への渡航があった。
「外務省はあてにならない」で反発がさらに拡大
今回、渡航そのものと並んで注目されたのが、本人の返信だった。
危険レベル4であることを指摘された際、ゆりさんは「外務省とかあてにならないです〜」と返答した。さらに、子どもを巻き込んでいるという批判にも強い反応を示している。ユーチュラは、こうしたやり取りによって反発が広がったと伝えている。
1月の南米旅でも安全面への批判を受けながら、本人は実際に旅を続け、帰国した。その経験が「現地へ行けば分かる」という考えにつながっている可能性はある。ただ、アフガニスタンは南米という大きな地域区分とは条件が違う。国全体が危険レベル4であり、日本政府が目的を問わず渡航中止を求めている。
ここで議論の中心になるのが、本人だけでなく3歳と5歳の子どもが同行している点だ。
親の挑戦と、子どもの安全はどこで線を引くのか
海外を旅し、異文化や異なる価値観に触れる経験は、子どもにとって大きな学びにもなる。親が自分の価値観の中で、子どもにさまざまな経験をさせたいと考えることも自然だ。
一方で、3歳と5歳の子ども自身が渡航先の治安情報を比較し、「この危険を受け入れて行く」と判断することはできない。行き先を決め、そのリスクを引き受ける判断は親が担う。だからこそ、今回の問題は「本人が自己責任で行くなら自由」という話だけでは収まりにくい。
危険レベル1の国へ行く場合と、最高度のレベル4に指定された国へ行く場合では、同じ海外旅行でも前提が変わる。今回の反発が強い理由は、その最も高い警戒水準の国に幼い子どもを同行させたことにある。
旅の「リアル」を伝えるなら、危険情報もリアルの一部
ゆりさんはこれまで、「旅のリアル」を届けることを発信の軸にしてきた。アフガニスタンで暮らす人々の穏やかな日常や、旅行者に親切に接する姿を伝えることには意味がある。ニュースで見るテロや紛争だけでは分からない側面も確かに存在する。
ただ、外務省が危険レベル4を出していることもまた、その国の「リアル」の一部だ。
現地で親切な人と出会ったことと、テロや誘拐の危険が存在することは両立する。「平和に見えた」という体験と、「安全に旅行できる」という判断も同じではない。
これまでにも批判を受けながら、子どもとの旅を続けてきたゆりさん。今回のアフガニスタン渡航によって改めて問われているのは、旅をする自由そのものより、親が子どもに負わせることのできるリスクの範囲だ。
そして、多くの人に旅を発信する立場である以上、「自分には何も起きなかった」という経験だけでなく、その土地に存在する危険もどう伝えるのか。そこまで含めて、今回の母子旅は注目されている。



