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ESGにおける企業と投資家の新しい関係(企業価値とESG #1)

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ESG column
photoACより

近年、ESG経営とESG投資が注目を集めています。ESG経営とESG投資は、企業と投資家の新しい関係を築くものです。企業はESG経営に取り組むことで、社会的責任を果たしながら、収益性の向上を図ることができます一方で投資家は、ESG投資に取り組むことで、企業の持続的な成長と発展に貢献することができるでしょう。

本稿では、企業と投資家がともに持続的な社会の実現を目指す新しい関係性について解説します。

ESG経営のメリットとは? 社会的責任と収益性の両立

coki読者の方々はすでによくご存知かと思いますが、ESG経営は環境(Environment)、社会(Society)、ガバナンス(Governance)の3つの要素を重視する経営方法のことです。ESG経営に取り組むことで、企業は以下のようなメリットを得ることができるでしょう。

投資家からの評価向上

ESG経営は、投資家が企業の長期的な価値やリスクを判断する際に重要な指標になります。ESG要素を考慮した投資(ESG投資)は、世界的に急速に拡大しており、2020年のESG投資額は約3900兆円とされます(出典:ESG投資、世界で3900兆円=日本は34%増―20年・国際団体調査 – 特集、解説記事 – 時事エクイティ (jiji.com))。ESG経営に取り組むことで、ESG投資家からの信頼や資金調達力を高めることができるでしょう。

企業ブランド力の向上

ESG経営は、企業の社会的責任や貢献度を高めることで、消費者やステークホルダーからの評価や支持を得ることができます。環境問題や人権問題などの社会課題への対応は、企業の競争力やイノベーション力を向上させるだけでなく、企業イメージやブランド価値を高める効果も期待できます。

経営リスクの対策

気候変動や資源枯渇などの環境リスク、人権侵害や労働問題などの社会リスクに対応することで、企業活動に悪影響を及ぼす可能性のある事象を未然に防ぐことができます。また、コーポレート・ガバナンスの強化は、内部統制やコンプライアンス体制を整備することで、不正や不祥事などのガバナンスリスクを低減することができるでしょう。

キャッシュフローの改善

ESG経営は、最終的にはキャッシュフローの改善をもたらしてくれる可能性もあります。環境面では、省エネルギーや廃棄物削減などの取り組みによりコスト削減や効率化が図れます。社会面では、ダイバーシティや健康経営などの取り組みによって生産性向上や人材確保・定着が促進されます。ガバナンス面では、株主還元や配当政策などの取り組みにより資本効率が高まるでしょう。

このように、ESG経営は社会的責任と収益性の両立を目指す経営方法です。ESG経営に取り組むことで、企業は持続可能な発展を遂げるとともに、社会の課題解決にも貢献することができます。

ESG投資の市場規模と動向:企業価値を高めるための戦略

ESG投資は、財務情報に加えてESG要素を投資の分析や意思決定に組み込む投資方法です。ESG投資では、企業の長期的な価値やリスクを評価することで、経済的なリターンを追求するとともに、社会的なインパクトを創出することを目指します。

市場規模

ESG投資の市場規模は、近年急速に拡大しています。グローバル・サステイナブル・インベストメント・アライアンス(GSIA)の調査によれば、世界のESG投資の投資残高は2016年で22.9兆米ドル(約2519兆円)から2020年で35.3兆米ドル(約3883兆円)に増加しました(出典:明治安田アセットマネジメント株式会社Analyst201709 (myam.co.jp))。

ESG投資の動向は、以下のような要因によって推進されています。

気候変動への対応

気候変動は、環境や社会に深刻な影響を及ぼすだけでなく、金融市場や経済活動にも大きなリスクや機会をもたらします。2015年に採択されたパリ協定では、気候変動対策の強化が国際的に合意されました。これを受けて、各国や地域では温室効果ガスの削減目標や再生可能エネルギーの普及促進などの政策が進められています。また、中央銀行や金融規制当局も気候変動リスクへの対応を強化しているとされます。これらの動きは、ESG投資家にとって重要な情報源やインセンティブとなっています。

SDGsへの取り組み

SDGsは、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)の略称で、2030年までに達成すべき17の目標と169のターゲットから構成される国際社会共通の目標です。SDGsは、環境問題や貧困問題、ジェンダー問題などESG要素を含む多様な社会課題に取り組むことを促しています。SDGs達成に向けては、政府や国連だけでなく、民間セクターも重要な役割を担っています。ESG投資家は、SDGsへの貢献度を評価することで、企業の社会的インパクトや将来性を判断することができます。また、SDGsに関連する分野やテーマに特化した投資商品や指数も増えており、ESG投資家にとって多様な選択肢が提供されています。

情報開示の進展

ESG投資にとって重要な要素の一つは、企業からの情報開示です。ESG要素を分析するためには、財務情報だけでなく、環境や社会に関する定量的・定性的な情報が必要です。近年では、企業のESG情報開示の水準や質が向上しており、ESG投資家にとって有用なデータや指標が増えています。また、国際的なESG情報開示基準やガイドラインも整備されており、企業と投資家の間のコミュニケーションを促進しています。

このように、ESG投資は市場規模や動向が拡大している投資方法です。ESG投資は、企業価値を高めるための戦略としても有効でしょう。ESG経営に取り組む企業は、ESG投資家からの支持や資金調達力を高めることができます。また、ESG投資家は、企業の長期的な価値やリスクを評価することで、経済的なリターンと社会的なインパクトを両立することができるでしょう。

ESG情報開示の重要性と課題:ステークホルダーとの信頼関係を築く

ESG情報開示とは、企業が自らのESG要素に関する情報を外部に公表することです。ESG情報開示には以下のような重要性があります。

ステークホルダーとの信頼構築

ESG情報開示は、企業が自らのビジョンや戦略、成果や課題を透明性高く伝えることで、ステークホルダー(投資家や消費者、従業員や取引先など)との信頼構築が期待できます。ステークホルダーは、ESG情報開示を通じて企業の価値観や方針を理解し、企業への評価や支持を高めることができるでしょう。

経営改善やイノベーションの促進

ESG情報開示は、企業が自らのESG要素に関する現状や目標を明確化し、定期的に測定・評価・改善することを求められます。これにより、企業は自らの強みや弱みを客観的に把握し、経営改善やイノベーションを促すことができます。また、ESG情報開示は、企業が社会課題やステークホルダーのニーズに応えるための新たなビジネスチャンスやソリューションを発見することにもつながるでしょう。

規制や要求への対応

ESG情報開示は、国際的な規制や要求に対応することも可能にします。例えば日本では、2021年から企業のESG情報開示が上場基準の一部となりました。さらに、投資家や消費者などのステークホルダーからもESG情報開示への要求が高まっています。ESG情報開示に取り組むことで、企業はこれらの規制や要求に適切に対応することができます。

ESG情報開示には以上のような重要性がありますが、同時に以下のような課題も存在します。

情報開示基準やガイドラインの多様性

ESG情報開示には、国際的に様々な基準やガイドラインが存在します。例えば、国連のグローバル・コンパクトやSDGs、気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の勧告、国際統合報告評議会(IIRC)の統合報告フレームワーク、サステイナビリティ・アカウンティング・スタンダード・ボード(SASB)の基準などがあります。これらの基準やガイドラインはそれぞれ目的や対象者が異なりますが、一部では重複や矛盾も生じています。このため、企業は自らの事業内容やステークホルダーのニーズに応じて適切な基準やガイドラインを選択し、情報開示を行う必要があります。

情報開示の質や量の不足

ESG情報開示においては、情報の質や量が不足している場合があります。例えば、企業は自らのESG要素に関する定量的なデータや指標を十分に収集・管理・分析できていない場合があります。また、企業は自らのESG要素に関する定性的な情報を十分に伝えることができていない場合もあるでしょう。これらの情報開示の質や量の不足は、ステークホルダーからの信頼や評価を低下させる懸念があります。

情報開示の比較性や一貫性の欠如

ESG情報開示においては、情報の比較性や一貫性が欠如している場合があります。例えば、企業は自らのESG要素に関する情報を異なる基準や方法で開示することで、同じ業界や地域の企業との比較が困難になる場合があります。また、企業は自らのESG要素に関する情報を時間的に一貫して開示することができていない場合があります。これらの情報開示の比較性や一貫性の欠如は、ステークホルダーからの理解や判断を難しくする可能性があります。

ESG情報開示に取り組む企業は、これらの課題に対応するために、以下のようなことを行うことが望まれます。

ステークホルダーとの対話

ESG情報開示は、ステークホルダーとの対話を通じて行うことが重要です。企業は、ステークホルダーからのフィードバックや要望を聞くことで、自らのESG要素に関する情報開示の目的や内容を明確化し、適切な基準やガイドラインを選択することができます。また、企業は、ステークホルダーに対して自らのESG要素に関する情報開示の意義や効果を説明することで、信頼関係を強化することができます。

情報開示体制の整備

ESG情報開示は、情報開示体制の整備を通じて行うことが重要です。企業は、自らのESG要素に関するデータや指標を収集・管理・分析するためのシステムや人材を確保することで、情報開示の質や量を向上させることができます。また、企業は、自らのESG要素に関する情報を定期的に更新し、一貫した方法で開示することで、情報開示の比較性や一貫性を高めることができるでしょう。

外部機関との協力

ESG情報開示は、外部機関との協力を通じて行うことが重要です。企業は、外部機関(監査法人や評価機関など)による自らのESG要素に関する情報開示の検証や評価を受けることで、情報開示の信頼性や客観性を高めることができます。また、企業は、外部機関(国際機関や業界団体など)による自らのESG要素に関する情報開示基準やガイドラインの策定や改善に参加することで、情報開示の多様性や矛盾を解消することができます 。

以上のように、ESG情報開示はステークホルダーとの信頼関係を築くために重要な経営課題です。ESG情報開示に取り組む企業は、課題に対応するために、ステークホルダーとの対話や情報開示体制の整備、外部機関との協力などを行うことが望まれます。ESG情報開示によって、企業は自らのESG経営の成果や課題を明らかにし、ステークホルダーとの信頼関係を築くことができます。

cokiが取り組んでいる「ステークホルダーVOICE」では、企業経営者様だけではなく、お客様、社員・家族、取引先、地域社会、株主、金融機関、未来世代といったステークホルダーへのインタビュー・対話を通じて、公平な情報開示を促進しています。ご興味のある方は、下記のボタンからご連絡ください。

次回のコラムでは、「財務報告以上に重視される?企業報告」について解説します。

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ライター:

1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。 プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。 2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から暗号資産投資、不動産投資、事業投資を始める。 現在は、複数の企業で経営戦略チームの一員としてM&Aや企業価値向上、海外進出等に携わるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。

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