
ホテルの寝具が、海のプラスチックごみを減らす一助になる。アパートメントホテルを運営するCROOZ Hotelが、運営する全客室に、海洋プラスチックを再生した環境配慮型の寝具を導入した。
削減量はペットボトル約1万2500本分に相当し、アパートメントホテルの全室導入は国内初だという。
全客室にペットボトル1万2500本分の再生寝具
同社によると、導入したのは「Suprelle blue ultra(シュプレール ブルー ウルトラ)」という寝具だ。ラグジュアリーアパートメント「SHOGUN PRIVATE RESIDENCE」と、アパートメント「KOALA INN」の全客室に、掛け布団・ベッドパッド・枕をそろえて入れた。製造元の大野株式会社の調べでは、アパートメントホテルの領域でこの寝具を全室に導入するのは、2026年9月時点で国内初になるという。削減した海洋プラスチックは、ペットボトルにしておよそ1万2500本分に相当する。
寝具は、ホテルの快適さを左右する要素でありながら、環境の観点から語られることは多くなかった。掛け布団から枕まで、客室で使うものをそろえて再生素材の製品にしたことは、目に見えにくい部分にまで環境配慮を及ばせる試みといえる。宿泊客は、特別な手間をかけずとも、眠るだけで海の環境保全に加わることになる。
回収から再生、途上国支援まで
この寝具は、環境だけでなく、社会への貢献にもつながる仕組みを持つ。同社によると、国際NGO「Plastic Bank」と提携し、沿岸地域で回収されたプラスチック(ソーシャルプラスチック)をアップサイクルして素材に使う。回収は途上国の沿岸地域で行われ、回収する人には経済的な報酬や生活の支援が届く。海の汚染を減らすと同時に、現地の暮らしを支える構図だ。品質の面でも、繊維の安全性を示すエコテックス スタンダード100の認証を取得し、抗菌・防臭・防ダニの試験もクリアした。軽く、通気性と弾力性にも優れるという。
増えるインバウンドと「広い部屋」の不足
寝具の刷新の背景には、宿泊需要の変化がある。同社によると、訪日外国人旅行者は2024年に年間3600万人を突破し、政府は2030年に6000万人を掲げる。旅行のニーズは、モノを買う「モノ消費」から、体験を重んじる「コト消費」へと移ってきた。訪日客の約6割は家族や親族、友人といったグループで訪れ、長く滞在する傾向も強まっている。ところが、都心部では、こうした需要に応える広い客室の供給が足りていない。同社は6名以上が泊まれる広い客室を中心に展開し、この隙間を埋めようとしている。
既存の建物を客室に変え、環境負荷を抑えながら広い部屋を供給する。そこに再生素材の寝具を組み合わせることで、施設全体で持続可能性を追う姿勢を打ち出している。増え続けるインバウンド需要に応えることと、環境への配慮を両立させようとしている点が特徴だ。
既存ビルの再生と、持続可能な滞在
CROOZ Hotelは、クルーズ株式会社の子会社で、既存のビルをホテルに転用するコンバージョン事業や、無人・省人での運営による持続可能な宿泊施設の運営を手がけてきた。都心の既存ビルをリノベーションして生かすことで、新築に比べてCO2の排出や建築廃材を大きく減らし、好立地でありながらコストも抑えるという。
環境に配慮した寝具の導入も、こうした持続可能性を重んじる姿勢の延長線上にある。建物の再生から、日々使う寝具まで、環境への負荷を減らす工夫を積み重ねている。
宿泊業界では、タオルの再利用やアメニティの削減など、環境への取り組みが広がってきた。しかし、寝具そのものを再生素材に置き換える例はまだ多くない。眠りという滞在の中心に環境配慮を据えた点に、この取り組みの新しさがある。
同社は、新たに開く客室でもこの寝具を標準仕様として順次広げ、持続可能な都市での滞在を進める方針だ。旅先での快適さと環境への配慮は、これまで両立が難しいとされてきた。宿泊という体験の一部に環境への配慮を織り込む試みが、どこまで広がるのかが注目される。



