
急性期から在宅までを一人の医師が見通す。そんな総合診療の体制づくりへ、東京の急性期病院と全国組織が手を組んだ。
年間9000件超の救急患者を受け入れる医療法人伯鳳会 東京曳舟病院と、中小病院の地域医療体制強化や総合診療医の育成を進める一般社団法人コミュニティ&コミュニティホスピタル協会(C&CH協会)が、総合診療科の設立・運営および総合診療専門医の育成に関する業務提携契約を締結した。
急性期の「その先」を見据えて
背景にあるのは、高齢化の進展だ。複数の疾患や生活課題を抱える患者が増えるなか、医療現場では特定の専門領域にとどまらず、患者を包括的に診ることができる総合診療機能の重要性が高まっている。
東京曳舟病院は、年間9000件を超える救急患者を受け入れる急性期病院として地域医療を支えてきた。一方で、急性期医療のその先を見据え、患者の生活や地域全体を視野に入れた医療提供体制のあり方が今後の重要な課題となっていた。そこで、総合診療分野の教育・人材ネットワークを持つC&CH協会と連携し、診療体制と人材育成を一体的に整備することにした。
診療体制と人材育成を一体で
両者は2026年度より、東京曳舟病院において急性期医療を基盤としつつ、亜急性期・慢性期、在宅医療までを見据えた総合診療体制の整備と人材育成を段階的に進めていく。地域に根ざした総合診療科の運営と、総合診療医の育成を着実に推進する構えだ。
狙いは短期的な人材補充や機能対応にとどまらない。中長期的な視点で、総合診療の質、医師の確保・育成、組織としての安定性を高めていくことを目的としている。人が育ち、定着する仕組みを組み込むことで、体制そのものを持続可能なものにしようとしている。
専門研修プログラムを導入
提携に基づく取り組みは三つの柱で構成される。一つは総合診療科の設立と診療体制の整備で、総合診療医が他診療科や多職種と連携しながら診療体制を構築する。二つ目は総合診療専門研修プログラムの導入だ。
C&CH協会が運営する日本専門医機構認定の総合診療専門研修プログラムと連携し、若手医師にとって魅力ある研修環境の整備を進めるとともに、病院総合診療専門医の養成にも取り組む。三つ目が教育推進室による運営支援で、プログラム運営をC&CH協会の教育推進室が支え、教育の質を担保しながら病院側の運営負担の軽減を図る。
外来・病棟・在宅・地域を横断
C&CH協会が運営するCCH総合診療専門研修プログラム(CCH総診)は、複数の医療機関と連携して運営される日本専門医機構認定のプログラムだ。3年間の研修を通じて、外来・病棟・在宅・地域という4つのフィールドを横断しながら、総合診療専門医に必要な資質・能力を育成する。
コミュニティホスピタルや地域中小病院、都市部の連携病院など多様な研修環境のもと、外来・入院診療から在宅医療、地域包括ケアまでを一体的に学べる。20名の指導医体制と、総合診療専攻医数で国内最大規模を誇る藤田医科大学総合診療プログラムとの連携により、充実した教育体系が提供されている。
中核病院としての役割を将来へ
東京曳舟病院の西田修病院長は、今後は急性期のその先を見据え、患者一人ひとりを継続的に支える医療体制の構築が重要になると述べる。今回の提携を、総合診療科の整備と人材育成を同時に進めることで診療体制と組織基盤を中長期的に強化する取り組みと位置づける。
C&CH協会は2020年設立で、全国の中小病院を「コミュニティホスピタル」へ転換し、医療・介護・福祉が一体となった地域包括ケアの実現を支援している。若い医師が学び、成長し、地域に根づいていける環境を整えることで、地域医療を担う中核病院としての役割を将来にわたって果たしていけるかが問われる。



