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三星化成工業株式会社

https://www.mitsuboshi-kk.com/

〒243-0434 神奈川県海老名市上郷3丁目13番58号

046-231-2966

大量に捨てられる新品CDを資源に。全国から引き取る三星化成工業のリサイクル

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ステークホルダーVOICE 経営インタビュー
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三星化成工業株式会社 代表取締役 星山光成氏
三星化成工業株式会社 代表取締役 星山光成氏(撮影:綿引 誠、以下同)

段ボールを開けると、まったく同じCDがぎっしりと詰まっていた。100枚入りの箱が20個。中身は、一度も聴かれた形跡のない新品だ。およそ10年前、この光景を前にしたプラスチック再生工場の経営者の疑問から、すべては始まった。なぜ、新品のCDがこれほど捨てられるのか。アイドルのCDには、メンバーと会えるイベントへの参加権や、その場で引けるくじといった特典が結びついていることがある。目当てはその特典であり、CDそのものは何枚も買われた末に、中身を再生されないまま行き場を失う。

神奈川県海老名市の三星化成工業は、そうして捨てられる新品CDを、全国から引き受け続けている。割に合わないと同業者が敬遠するこの仕事を、代表取締役の星山光成氏は、ファンも工場も障がい者の働く場も、それぞれが得をする形へと変えてきた。

三星化成工業株式会社 入口
三星化成工業株式会社 入口

なぜ、新品のCDが捨てられるのか

 

話は、コロナ禍が始まる少し前、およそ10年前にさかのぼる。三星化成工業は、廃プラスチックを再生原料に加工する町工場だ。日々あつかうのは工場から出る端材やスクラップで、扱う量もトン単位、いわば重さで数える世界だった。そんな現場に、あるとき一人の客が、大量のCDを抱えて持ち込んできた。

100枚入りの箱が20個。単純に数えれば2,000枚ほどのCDだ。だが星山氏が驚いたのは、量ではない。箱を開けて中を見ると、まったく同じCDが、ずらりと並んでいた。聴き終えて処分されるCDなら、種類はばらばらのはずだ。同じ一枚が何十枚と重なっている光景は、それ自体が異様だった。どうして、こう同じものばかりあるのか。

理由を尋ねると、客は事情を話した。当時、CDには握手券や投票券がついてくることがあり、その券を目当てに、同じCDを何枚も買う人がいる。中身のディスクは聴かれることなく、新品のまま手元に残る。しかも、目当ての券は手に入っても、好きなグループの作品をただのゴミとして捨てるのは忍びない。そう感じるファンは多く、行き場を失った新品CDが、何年も部屋の片隅に積まれていく。「捨てたくはないが、引き受けてくれるところがない」。そう漏らす客は、一人ではなかった。

三星化成工業株式会社  大量のCD
大量のCD

この気づきが、すべての始まりだった。同じ新品のCDが、これほど大量に、行き場をなくして眠っている。ならばこれを、ゴミではなく再生原料として引き受けられないか。プラスチックの再生を生業としてきた星山氏にとって、それは商いとして考えるに値する話だった。こうして三星化成工業は、聴かれることのない新品CDを引き受ける、数少ない工場になっていく。

そして、この構造は、いまも形を変えて続いている。近年のアイドルのCDには、メンバーと会って言葉を交わしたり、写真を撮ったりできるイベントへの参加権や、その場で引けるくじといった特典が結びついていることがある。ファンの目当ては、その特典だ。CDそのものは、特典を得るための入り口として何枚も買われ、役目を終えたディスクだけが残っていく。だからこそ、聴かれることのない新品CDは、いまも全国から三星化成工業のもとへ届き続けている。

 

「割に合わない」仕事を、なぜ引き受けるのか

新品CDを引き受け始めた星山氏は、客から同じ問いを何度も受けることになる。「どうして御社だけなんですか」「プラスチックの会社はたくさんあるのに、なぜ他はやらないんですか」。答えは、拍子抜けするほど単純だ。採算が合わないから、誰もやらない。

三星化成工業の周辺には、同じように廃プラスチックを扱う工場が数多くある。それでも、CDに手を出す会社はほとんどない。理由は明快だ。持ち込まれたCDは、ケースやディスク、紙、フィルムへと手作業で分けなければならない。手間をかけて分別し、砕いても、できあがる再生原料はキロあたり数十円の世界である。しかもCDは、枚数のわりに軽い。何千枚を積み上げても、重さで数える再生業の物差しでは、たいした量にならない。手間ばかりかかって、実入りは薄い。商売として計算すれば、答えは「やらない」に傾く。それが同業者の常識だった。 では、なぜ星山氏はやるのか。取材で、その動機をまっすぐ尋ねると、飾り気のない言葉が返ってきた。

三星化成工業株式会社 代表取締役 星山光成氏

星山 光成社長(以下、星山)
「きれいごとを言うつもりはないんです。商売でやっていることですから。ただ、それだけでもない。日本は資源が足りないと昔から言われてきたのに、こんな新品のまま簡単に捨てていいのか、と。もったいないじゃないですか。古いものなら、どうぞご自由にと言う。でもこれは、まだ新しいものだから」

飾らない物言いだが、この言葉には、同氏の芯がのぞいている。きれいごとを並べるのは性に合わない。けれど、資源を粗末にすることは、それ以上に我慢がならない。事業として続けられる形にすることと、惜しいものを生かすこと。同氏の中で、その二つははじめから一つのことだった。

事実、勝算もあった。星山氏が早くに気づいていたのは、新品であることの価値だ。同社が再生原料にするのは、CDそのものではなく、ディスクを収める透明なプラスチックケースの部分にあたる。同じケースでも、長く使われて劣化した回収品と、一度も使われていない新品とでは、原料としての値段がまるで違う。特典を目当てに買われたCDのケースは、劣化のない新品だ。素材として質がいい。プラスチックの再生原料は、本来ならメーカーの製造工程で出る不良品などから作られるが、その発生量は年々減っている。原料が足りない。そこへ、質のいい新品のケースがまとまって集まってくる。同業者より早く、この巡り合わせに目をつけた。誰も手をつけないからこそ、先に始めた者に分がある。

もっとも、勝算があっても、手間の問題は残る。キロ数十円の原料のために、膨大な分別作業をどうこなすのか。その答えを知るために、まずは一枚のCDが工場でたどる道筋から見ていきたい。

 

届いたCDが、いくつもの流れに分かれるまで

三星化成工業株式会社  全国各地から届くCDの入った段ボール箱
CDの入った段ボール箱が全国各地から届く

全国から届いた新品CDは、まず段ボールのまま工場に積まれる。月曜には、遠方からの荷が特に多く届く。星山氏が箱の伝票に目をやると、栃木、兵庫、九州と、送り主の住所は日本各地に散らばっている。これらの箱が再生原料になるまでには、ここからいくつもの手が加わる。

最初の関門は、分別だ。CDは商品として売られるとき、ディスク本体だけでなく、それを収める透明なプラスチックのケース、歌詞カードなどの紙、外側を包むフィルムや梱包材と、素材の異なるいくつもの部材で構成されている。これらを、一つひとつ手作業で分けていかなければならない。この地道な仕分けを担うのが、近隣の就労継続支援事業所だ。障がいのある人が働く福祉事業所である。

流れはこうだ。工場に届いた、あるいは客が直接持ち込んだ段ボールを、事業所のスタッフが車で引き取りに来る。何箱も車に積み込み、自分たちの事業所へ持ち帰る。そこで、ケース、ディスク、紙、フィルムへと分別する作業を行い、分け終えたものを、再び工場へ運んでくる。これを繰り返す。分けられた素材は、それぞれ行き先が違う。

三星化成工業株式会社 仕分けられたCDケース
仕分けられたCDケース

紙類は、古紙として回収業者へ。フィルムや梱包材は、また別の区分へと分けられる。そして、星山氏の工場が再生原料へと加工するのが、透明なプラスチックケースの部分だ。運び戻されたケースは、小型の粉砕機にかけられる。作業員が異物の混入を目で確かめながら投入口へ流し込むと、砕かれたケースは細かなフレークとなって、下に構えた袋へと落ちていく。透き通った破片が、雪のように積もっていく。この不純物のチェックにこそ、最も神経を使う。ゴミが一片でも混じれば、原料の質が落ちるからだ。

砕いてできた透明なフレークは、こうして再生原料として業者に売られていく。その先で、ボールペンの軸や建材など、さまざまな製品に姿を変える。同じ樹脂でも、それぞれの性質に応じて用途が使い分けられていく世界だ。

一方、ディスク本体は、この工場では加工しない。ディスクの表面には金属の膜が張られており、これを剥がすには薬剤を使う。その薬剤を使った水を中和して安全に処理する設備まで整えるとなると、国内では到底、割に合わない。そのため、ディスクはそのまま海外の業者へと託される。捨てているわけではない。それぞれの素材が、それぞれに適した場所で、もう一度資源として使われていく。

こうして、一つの段ボールに詰まって届いた新品CDは、ケース、ディスク、紙、フィルムへと分かれ、余すところなく次の流れへ送られていく。何でもかんでも一社で抱え込もうとすれば、設備の負担がかさみ、たちまち採算が合わなくなる。自分たちが手をかけるのはケースまで。あとは、それぞれの専門へ渡す。この割り切りが、実入りの薄いはずの仕事を、どうにか成り立たせている。

三星化成工業株式会社 機械を通して裁断されるCDケース
CDケースは機械を通して裁断される

三者が、それぞれに得をする

 

割に合わない分別作業を、星山氏はどう成り立たせたのか。答えは、機械では代えのきかない手間を、人の手で引き受けてもらう仕組みにあった。膨大な仕分けを、近隣の就労継続支援事業所に担ってもらう。それは、工場だけでは抱えきれない作業を分かち合う関係でもあった。

この組み合わせが、当事者それぞれにとって都合がよかった。事業所にとって、CDの分別は好都合な仕事だった。作業は単純で、分かりやすい。ケースはケース、ディスクはディスク、紙は紙と、決まった通りに分けていけばいい。しかも、扱うのが同じCDばかりなら、手順はいっそう覚えやすい。役割を決めて数人で流れ作業にすれば、速くこなせる。決まった手順を覚えれば、着実に進められる作業だ。それでいて事業所にとっては、単価の面でも実入りのいい仕事になる。

事業所側にも、仕事を安定して確保したいという事情がある。両者の思惑は、きれいに噛み合った。持ち込むファンは、捨てられずにいたCDを引き取ってもらえて喜ぶ。工場は、原料になる素材が集まって助かる。そして事業所は、割のいい仕事を得て潤う。三方が、それぞれに得をする。星山氏は、この関係をこう表現する。

星山
「持ってくる人も喜んで、私も仕事になるから助かる。障がい者の人たちも仕事になるから助かる。みんながそう言ってくれる。だから私は、三者がWin-Winだと言いながらやっているんです。もっとたくさん集まってくれたら、それはもう、ありがたいんですけどね」

始めた当初、付き合いのある事業所は2か所ほどだった。それが、CDの持ち込みが増えるにつれ、少しずつ広がっていく。星山氏が、新たな事業所に「こういう仕事があるので手伝ってもらえないか」と声をかける。相手が来て、これならできると引き受ける。やってみて流れがつかめると、その事業所にとっても仕事になり、続くようになる。そうして輪が広がり、いまでは10か所ほどの事業所が関わるまでになった。片道1時間近くかけて品物を引き取りに来る事業所もある。仕事が少し減れば、来る回数を増やしてでも、この作業を確保しようとする。

なぜ、そこまでして事業所はこの仕事を求めるのか。背景には、就労継続支援事業所が置かれた事情がある。こうした事業所は、行政から売り上げを伸ばすよう促される立場にあり、安定して収益になる仕事を必要としている。その点、CDの分別は単価がよく、汚れの少ないきれいな作業だ。ばらばらの中古品ではなく、同じ新品が揃って届くからこそ、流れ作業もしやすい。事業所にとって、質のいい仕事なのである。

そして、事業所の売り上げは、そこで働く障がいのある人たちの工賃に返っていく。単価のいい仕事が安定して入れば、事業所は潤い、働く人の手元に入る額も増える。つまりこの取り組みは、CDをリサイクルするだけの話ではない。星山氏の工場に集まる新品CDが、めぐりめぐって、障がいのある人たちの暮らしを支える一端を担っている。だからこそ事業所で働く人たちは、この作業を歓迎し、慣れた手つきで速くこなしていく。もっとたくさん扱えたら嬉しい。在庫が少なくなれば「社長、大丈夫ですか」と気にかける。その言葉には、この仕事が続いてほしいという、前向きな願いがこもっている。

 

特別支援学校の生徒が、教材として触れる

この取り組みに関わるのは、就労継続支援事業所だけではない。近隣の特別支援学校も、CDの分別作業を教材として活用している。

きっかけは、事業所との連携と同じように、自然に生まれたものだった。高等部の生徒たちが、社会に出る前の実習として、CDを分ける作業を体験する。毎年6月と10月、先生たちが生徒を連れ、車に何台もCDを積みに工場を訪れる。星山氏が手順を教えると、あとは生徒たちが手を動かす。作業が単純で、分かりやすいことが、ここでも生きた。同じ新品のCDが揃っているため、決まった手順を覚えれば、生徒たちも迷わず取り組める。

特別支援学校の生徒から届いた手紙
協力した特別支援学校の生徒から届いた手紙

星山氏のもとには、生徒たちからのお礼の手紙が届く。「実習のためにご提供いただき、ありがとうございました」。心のこもったその手紙を、星山氏は毎年大切に保管しており、すでに3年分がたまった。教材として役立ち、生徒たちが喜んでくれる。その喜びは、星山氏にとっても同じものだった。

星山
「もう一年で終わりかなと思ったら、また十月に『社長、頼むね』と来る。みんな頼りにしてくれているんですね。子どもたちも喜んでいるみたいだし、卒業して社会に出るときの、体験の一つになる。そういう学校のことも、私は嬉しいんですよ」

この実習には、思いがけない続きがある。かつて実習でCDの分別を体験した生徒が、卒業後、就労継続支援事業所で働き始めることがある。そして、その事業所が三星化成工業と取引していれば、その人はまた、同じCDの分別作業に向き合うことになる。「社長のところでやったことがある」。事業所の人から、そう伝え聞くことがあるのだと、星山氏は言う。学校で教材として触れた作業が、数年後、その人の仕事として戻ってくる。

一枚のCDをめぐって、学校と事業所と工場が、知らぬ間に一つの環でつながっている。実習で手を動かした生徒が、やがて働き手として同じ作業に戻ってくる。その循環の真ん中に、行き場を失った新品CDがある。捨てられるはずだったものが、誰かの学びになり、誰かの仕事になっていく。

身軽さが、最後の仕事を呼び込んだ

三星化成工業がCDにたどり着くまでには、長い変遷があった。星山氏が一代で築いてきたこの会社は、時代の流れに合わせて、扱うものを何度も変えてきた。

測量用の杭
測量用の杭

創業からしばらく、主力だったのは測量用の杭づくりだった。土地の境界を示す杭を、大型の機械を何台も動かして量産し、東京と関西に置いた拠点を通じて全国へ出荷していた。35年ほど続いた、会社の屋台骨である。だが、公共事業が細り、自治体の予算も絞られていくと、この事業は次第に立ち行かなくなる。ちょうど機械の入れ替え時期が重なったこともあり、星山氏は杭づくりから退く決断をした。

次に選んだのが、廃プラスチックを再生原料に加工する道だった。さまざまな樹脂を回収して原料に戻し、成形メーカーや商社に販売する。なかでも長く続いたのが、緩衝材、いわゆる「プチプチ」を作るメーカーからの受託加工だった。原料を預かり、自社で加工して納める。その関係は30年に及んだ。ところが、この受託の仕事も、数年前に打ち切りになる。工場には加工設備と原料だけが残された。

そこに、CDが引っかかった。折よく、というべきかもしれない。もし多くの設備や人員を抱えていたら、これほど身軽には方向転換できなかっただろう。だが星山氏は、ある時期から、事業を大きく広げない道を選んできた。リーマンショックを機に、トラックを持たず、人を増やさず、機械も新たに入れず、いまあるもので回していく。そう決めていた。余計なものを抱えていないからこそ、受託の仕事が消えた穴に、CDという新しい仕事をすっと収めることができた。古い機械も、手入れをすれば、まだ十分に使えた。

星山氏は、現在85歳。それでも、肩書きにこだわらず、朝は7時半から工場に立つ。少人数になったいまは、従業員と同じように現場で手を動かす日々だ。そんな星山氏は、このCDの仕事を、特別な位置づけで捉えている。

星山
「このCDは、私の人生で最後の仕事になるね、と思っているんです。もう他の分野に、同じ樹脂の世界で話があっても、行く気はない。また設備をして、人を増やして、というエネルギーはもうないから。だからもう、これ一本。とにかくCDがたくさん入ってきてくれれば、助けの神になるかな、と」

大きく広げるつもりはない。設備も人も増やさない。それでも、この一本に賭ける気持ちは、後ろ向きなものではない。むしろ、長い変遷の果てにようやくたどり着いた、性に合った仕事だという手応えがある。誰も手をつけないところに価値を見いだし、身軽な体一つで応じる。その働き方は、これまで時代の変化をくぐり抜けてきた星山氏の生き方そのものでもあった。

 

捨てられるはずのものを、もう一度

星山氏には、この仕事を続けるなかで芽生えた、ひそやかな思い入れがある。砕いてできあがった、透明な再生原料の白さだ。粉砕された新品のケースは濁りがなく、透き通っている。長く使われた回収品からは、こうはいかない。その原料を手に、星山氏は言う。

CDケースが細かく砕かれ、リサイクル原料になったもの
CDケースが細かく砕かれ、リサイクル原料になったもの

星山
「ほら、濁っていないじゃないですか。この美しさに、私は魅力を感じているんです。アイドルの若さが、そのまま出ているのかなって。こんな綺麗なものを、ただ捨ててしまうのは、ちょっとかわいそうだなと。だから、もう一度資源にして、また世の中に生まれ変わらせればいい。そういう思いでやっているんです」

商いとして成り立たせること。惜しいものを生かすこと。冒頭で聞いた二つの思いは、ここでも一つに重なっている。星山氏にとって、新品のCDは、単価の合う原料であると同時に、捨てるには惜しい、美しい資源でもある。その両方が、嘘なく同居している。

近年、この工場に届くCDの流れにも、新しい変化が生まれている。購入の段階で、届け先を三星化成工業の住所に指定したいという声がファンの間で多く上がっている。事前に本人の連絡先を確認するなど条件はあるが、送ってくれる人の要望に限りなく応じる構えでいる。これは、同社にとっても、無駄のない形で原料が集まる、ありがたい流れだ。

そして、この工場は、いくら送られてきても困ることがない。むしろ、常に足りていない。届いたケースは粉砕され、すぐに原料の形になっていくため、在庫はまたたく間に尽きてしまう。絶えず新しいCDが入ってこなければ、仕事は回っていかない。いま集まる量は、必要とする量の半分ほど。だから、送ることをためらう必要はない。一箱でも、二箱でも、行き場を失ったCDがあるなら、この工場はいつでも受け止める用意がある。

ここまで来られたのは、星山氏の、人としての向き合い方があってこそだった。持ち込む客が一箱だろうと、少なかろうと、星山氏は必ず頭を下げる。少人数の工場だから、社長みずからが現場に立ち、一人ひとりを迎える。届いた荷を黙って受け取り、そこに積んでおしまい、という扱いを、同氏は自分に許さない。

三星化成工業株式会社 代表取締役 星山光成氏

星山
「あそこに置いていってくれてありがとう、それで終わってはだめなんです。せっかく、油を使って、遠いところから持ってきてくれるんですから。近くのお客さんならありがとうで済むけれど、みんな遠いんですよ。だから一箱でも、頭を下げて、水の入ったペットボトルを一本お渡しする。二人で来たら、二人にね。そうすると、もらっていいんですかって、みんな驚くんだけど」

遠方から、燃料代をかけて足を運んでくれる人がほとんどだ。その気持ちに応えたいという思いが、一本の水に込められている。金額にすればわずかなものだ。それでも、受け取った客が驚き、また来ようと思ってくれる。その積み重ねが、次の持ち込みにつながっていく。

時間のある客は、事務所に招き入れる。粉砕された透明なフレークを見せ、このケースがこうなって、やがてボールペンの軸や建材に生まれ変わるのだと、樹脂の行く末を語って聞かせる。すると多くの客が、初めて見る光景に目をみはり、こんなふうになるのかと感心する。今日は勉強になった、と喜んで帰っていく。星山氏にとって、それは単なるCDの引き取りではない。資源を大切にする気持ちを、一人ひとりに分かち合う時間なのだ。若い客も多く、友人と話すように打ち解けていく。持ち込む人たちが、それぞれのつながりのなかで工場のことを口づてに広めてくれるのも、こうして交わした縁があればこそだった。

手渡すペットボトルの水には、名刺大のカードが輪ゴムで留められている
「ありがとう」で終わらせない。星山氏が持ち込んだ人に手渡すペットボトルの水には、名刺大のカードが輪ゴムで留められている。

派手な宣伝はない。それでも、同じ仕事を、同業者は「真似はできない」と口をそろえる。設備や手順だけなら、いつか誰かが追いつけるかもしれない。だが、遠方から来る客一人ひとりに頭を下げ、水を渡し、資源のゆくえを語って聞かせる。その積み重ねだけは、簡単には真似のできないものだ。この仕事が星山氏にしか続けられないとすれば、その理由は、技術ではなく、人柄の側にある。 一枚のCDをきっかけに生まれた輪は、ファンから工場へ、工場から事業所や学校へと広がり、いくつもの手を渡って回り続けている。その真ん中に、人生の最後の仕事と定めて、85歳のいまも現場に立ち続ける星山氏がいる。彼が受け止めるかぎり、行き場を失っていたはずのCDは、姿を変えて、もう一度世の中を生きていく。

三星化成工業株式会社 代表取締役 星山光成氏

不要なCDの引き取り・処分をご希望の方へ

聴かれないまま眠っているCDは、三星化成工業が全国から引き取っています。

STEP 1|段ボールに詰める
行き場を失ったCDを、段ボールにまとめて梱包します。

STEP 2|送る、または持ち込む
下記の宛先へ発送するだけ。直接の持ち込みもできます。販売元から直接送りたい場合は、三星化成工業株式会社に要相談。

STEP 3|あとはおまかせ
届いたCDは、ケース・ディスク・紙などに分けられ、それぞれ資源として再生されます。

[補足]
・送料・持ち込みの交通費は、ご依頼者の負担となります
・引き取りの可否や詳しい条件は、公式サイトでご確認ください

■ 送り先・お問い合わせ
三星化成工業株式会社
〒243-0434 神奈川県海老名市上郷3丁目13番58号
TEL:046-231-2966
公式サイト:https://www.mitsuboshi-kk.com/

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ライター:

株式会社Saccoマネージャー、株式会社Blockchain Tech Farm 代表取締役。営業や多岐にわたる事業での経営経験を経て、2014年にブロックチェーン分野へ参入。2017年に株式会社Blockchain Tech Farmを設立し、非金融領域でのブロックチェーン活用を推進。多くの企業との縁から、現在は株式会社Saccoのマネージャー、ライターとしても活動している。

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