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熊本地震でSNSデマ拡散 「予知的中」「人工地震」「ななつ星脱線」役に立たないXに不満続出

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デマ
PhotoACより

7月28日、熊本県で最大震度7を観測する地震が発生した。建物の被害やライフラインの状況を伝える投稿が飛び交うなか、Xには「地震を予知していた」「人工地震だ」「阿蘇山が噴火した」といった情報が流れ込み、過去の災害画像まで今回の被害として使われた。人が助けを求め、家族が安否を探している画面に、閲覧数を稼ぐための偽物が平然と割り込んでいる。

 

 

熊本で震度7、救助が始まる前にデマが走った

地震は7月28日午後、熊本地方を震源に発生し、熊本県内で最大震度7を記録した。建物の壁が崩れ、停電や交通の混乱が伝えられるなか、Xでは地震を事前に予測していたと主張する投稿が急速に広がり、日本地図を添えた「場所は的中した」という情報は300万回を超えて閲覧された。地震が人為的に起こされたとする説や、阿蘇山の噴火と結びつける投稿も相次いだが、今回の震源は阿蘇地方ではなく熊本地方で、地震は横ずれ断層によるものとされている。

「予知的中」の仕掛けは複雑ではない。日頃から各地の地震予測を大量に投稿し、実際に地震が起きたあとで外れたものを消せば、当たったように見える投稿だけが残る。何日も前から熊本を言い当てていたように見せ、「次はここが危ない」と不安をあおれば、怖くなった人がページを開き、閲覧数が積み上がる。家族の住む地域が映った地図を前にすれば、冷静に投稿履歴をさかのぼる余裕などなく、根拠のない予測が命に関わる警告のような顔を持ち始める。

災害直後のSNSで価値を持つのは、自治体の避難情報や交通機関の運行状況、電気や水道の復旧情報であるはずだ。しかし実際には、観測データを淡々と記した投稿よりも、「人工地震」「予言的中」と大きな文字を載せた画像のほうが拡散される。情報が不足しているからデマが広がるのではない。恐怖を強く刺激する投稿ほど反応を集め、その反応がさらに表示を増やす仕組みが、災害の混乱に食い込んでいる。

 

10年前の「ライオン逃走」が再び現れた

今回の地震では、海外で撮影されたライオンの画像を使い、動物園から逃げ出したとする投稿も一時出回った。同じデマは2016年の熊本地震でも拡散し、熊本市動植物園には問い合わせが殺到、投稿者は後に偽計業務妨害の疑いで逮捕されている。それほど大きな騒動になった偽情報が、10年後の地震でもほぼ同じ形で使われた。

過去の騒動を知る人には、使い古された悪ふざけに見えるだろう。しかし、熊本で暮らす家族と連絡が取れず、暗い部屋で余震に耐えている人にとって、道路を歩くライオンの画像は笑い話では済まない。実際の被害写真と同じ速度で流れ、何百、何千というリポストがつけば、古い画像にも現場から届いた緊急情報のような迫力が生まれる。

そこで拡散を支えるのが、「本当か分からないけど」「念のため共有します」という一文である。疑っていることを書き添えれば責任が薄まるように見えるが、リポストされた時点で偽情報は次の画面へ運ばれ、投稿の表示回数も増える。「注意喚起のため」という引用投稿も同じで、否定する文章より先に刺激の強い画像が目に入り、元のデマを知らなかった人へ新たに届けてしまう。善意で押した指が、偽物の拡声器になる。

 

「ななつ星脱線」と情報を探せないX

Xでは、JR九州の豪華寝台列車「ななつ星」が脱線したとする情報も広がったが、JR九州は脱線の事実を否定し、公式の運行情報を確認するよう呼びかけた。地震直後の交通情報は、避難先へ移動できるか、家族のもとへ向かえるかを左右するため、そこで偽情報が混ざれば、利用者は必要のない経路変更を迫られ、鉄道会社には問い合わせが集中し、本当に急ぐべき連絡が埋もれていく。

地震発生後には、「Xが情報収集に役立たない」「Twitterを返して」という不満も相次いだ。特に問題視されたのは「おすすめ」欄で、熊本の状況を探しても関係のない投稿が並ぶ一方、人工地震説や予知をうたう投稿、過去の被害画像を転用した偽情報が目立った。X側は「フォロー中」のタイムラインへ切り替え、表示を新しい順にするよう案内したが、余震におびえながら避難場所や停電情報を探す人に、まず表示設定を変えろと求める構造そのものが、災害時の道具として致命的にずれている。

東日本大震災当時のTwitterは、電話がつながりにくいなかで、自治体の発表や鉄道の運行情報、家族や知人の安否を時系列で追える場所だった。現在のXでは、新しい情報よりも反応を集めそうな投稿が前へ出やすく、恐怖や怒りを刺激する内容ほどリポストや返信が増え、その数字が次の表示を呼び込む。被災地が必要としている正確さと、SNSが欲しがる刺激の強さが、真逆を向いている。

 

デマが奪うのは信用ではなく救助の時間

災害デマは、画面の中で騒ぎが起きて終わる話ではない。2024年の能登半島地震では、実在する住所を示し、救助を求める偽情報が拡散した。警察や消防が存在しない被災者の確認に向かえば、その車両、人員、燃料は、本当に助けを待つ人のもとへ届かなくなる。道路が崩れ、移動手段が限られる現場では、一件の嘘でも救助の順番を狂わせる。

生成AIによって、崩れる建物や押し寄せる津波、泣き叫ぶ人の映像まで簡単に作れるようになり、「画像があるから本物」「動画だから現地で撮られた」という見分け方は通用しなくなった。投稿者が誰なのか、普段どんな情報を発信しているのか、自治体や警察、消防、交通機関が同じ内容を公表しているのかを確認できなければ、拡散しない以外に安全な選択はない。

地震の直後、熊本では倒れた建物の中に人がいないかを確認し、停電した地域へ支援を届け、途切れた交通網を復旧させる作業が続く。その同じ時間に、無関係な画像へ熊本の名前を貼り付け、恐怖をあおって閲覧数を稼ぐ人間がいる。さらに厄介なのは、その投稿を広げている全員が悪意を持っているわけではないことだ。「心配だから」「誰かに知らせなければ」と押した一回が、救助に必要な情報を押し流す。確かめられない情報を広める行為は、善意の共有ではない。被災地に届くはずの声を塞ぐ、ただの邪魔である。

 

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ライター:

Webライター。きれいごとだけでは済まない現実を、少し距離を置いて綴っています。

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