
青い海を背に、Tシャツと短パン、サンダル姿の大野智が砂浜から勢いよく跳び上がった。嵐のラストライブを終え、ようやく誰にも歩幅を合わせずに動けるようになった男の解放感が伝わる一枚だが、その直後に示されたプレミアム会員の年会費3万1040円を見て、入会画面の前で手を止めたファンもいたはずだ。7月15日に始まった個人サロン「さと島」は、大野の再出発を祝う場所であると同時に、ファンがその距離にいくら払えるのかを問う場所にもなった。
大ジャンプの裏で突きつけられた「年3万円」
5月31日に嵐としての活動を終えた大野は、約1か月半後の7月15日正午、個人サロン「さと島」をオープンした。芸能界から完全に姿を消すのではなく、自分の日常や趣味、写真、動画を、自分のペースで届ける道を選んだことになる。会員は「島民」と呼ばれ、通常の島民プランは月額980円、年額1万1260円。プレミアム島民プランは月額3104円、年額3万1040円で、公式サイトにはブログ、写真、動画、グッズなどの項目が並び、オフショットムービーやチケット先行受付も案内されている。
大野は事前の動画で、嵐のリーダーではなく「人間・大野智」として日常を共有したいと語っていた。ただ、その日常に年3万円の値札が付けば、ファンの胸に喜びだけが残るわけではない。月額3104円は「さとし」の語呂合わせ、年額1万1260円は11月26日の誕生日を意識した数字と受け止められ、SNSには「大野くんらしい」「迷わずプレミアム」と沸く声が広がる一方、「予想より高い」「内容を見てから決めたい」という戸惑いも出た。3104という数字に笑えても、クレジットカードから引き落とされる3万1040円が軽くなるわけではない。好きだから払うのか、好きでも払えないのか。大野への思いが、いきなり家計の現実と向き合わされた。
櫻井翔と相葉雅紀は5140円、二宮和也は5500円
「さと島」の価格が際立つのは、同じ嵐のメンバーが始めた個人ファンクラブと並べたときだ。櫻井翔と相葉雅紀のファンクラブは、いずれも入会金1000円、年会費4000円、事務手数料140円で、初年度の支払いは5140円。会員証、会報、バースデーカード、限定動画、番組協力、チケット優先申し込みなど、従来の芸能人ファンクラブに近い仕組みを引き継いでいる。
二宮和也が2024年から運営する「オフィスにのホールディングス」は、入会金なしの年額5500円。デジタル会報、会員限定生配信、イベント招待、チケット先行、バースデーメールなどをそろえながら、二宮らしくファンを「社員」と呼び、会社を模した世界観をコンテンツにしている。松本潤も公式メンバーシップ「MJ’s Membership」の開設を発表しているが、7月16日時点ではオープン日や料金、詳しい内容は公表されていない。
櫻井と相葉が5140円、二宮が5500円。それに対して大野は、通常プランでも1万1260円、プレミアムなら3万1040円になる。櫻井や相葉の初年度費用と比べれば、通常プランは2倍を超え、プレミアムは約6倍だ。嵐時代のファンクラブが安かったから高く見えるというだけではなく、同じグループを終えた仲間がほぼ同じ価格帯を選ぶなか、大野だけが明らかに違う商売の形を持ち込んだのである。
ファンクラブではなく「大野智の時間」を売る場所
価格差の理由は、特典の数だけでは測れない。櫻井や相葉のファンクラブは、出演情報や会報、チケット受付を中心に、芸能活動を追いかけるための窓口として作られている。二宮のサービスも独自色は強いが、俳優やタレントとして動き続ける本人の仕事と結び付いている。一方、大野が前面に出したのは、出演予定や新作ではなく、自分の日常や趣味だった。テレビに戻ると約束せず、ソロコンサートの開催も明言しないまま、「大野智そのもの」に会費を設定したところが異なる。
「さと島」で売られているのは大量の情報ではなく、長く姿を見せなかった大野との距離である。更新された写真を開く瞬間、本人の言葉を読む時間、いつかイベントで会えるかもしれない期待まで含めて月額3104円。嵐の活動休止後も待ち続けたファンがいるから成立する料金であり、誰にでも広く入ってもらうより、金額に納得した濃いファンと静かにつながる形を選んだのだろう。
大野にとっても、この仕組みならテレビ局の台本やグループの予定に縛られず、何をいつ見せるかを自分で決められる。しかも、そこに集まるのは会費を払い、大野の発信を受け取りたいと望む人が中心になる。国民的アイドルとして不特定多数の視線を浴び続けた大野が、ようやく見せる相手を選べる場所を手にしたともいえる。ただし、自由に更新できる場所と、更新しなくても許される場所は違う。料金を受け取る以上、「人間・大野智だから」で内容の薄さまで飲み込んでもらえるわけではない。
3104円の語呂合わせが通用するのは最初だけ
オープン直後なら、海辺で笑う写真一枚にも価値がある。久しぶりに動く大野を見られただけで、待った時間が報われたと感じるファンもいるだろう。しかし、半年、1年と会費を払い続ければ、更新回数や動画の中身、イベントの有無は必ず見られる。日記が時折届き、似たような写真が並ぶだけなら、3104という数字のかわいらしさはすぐに薄れる。
反対に、釣りや絵、ものづくりを通じて嵐では見せられなかった大野の生活が立ち上がり、歌やダンスに触れられる日まで来るなら、年3万円を安いと感じる人もいる。「さと島」の料金を高いと感じるかどうかは、受け取る内容やファンそれぞれの事情によって変わる。入会を迷う声も、長く応援してきたからこそ生まれる率直な反応だ。今後、発信やイベントが積み重なるにつれ、3万1040円という金額の見え方も変わっていくだろう。
嵐の5人は同じステージを降りたあと、それぞれ違う方法でファンとの接点を作り始めた。櫻井と相葉は従来型のファンクラブ、二宮は自分の会社、大野は島を選んだ。その島へ渡る船賃は、ほかのメンバーよりかなり高い。3万1040円の評価を決めるのは、ファンがどれほど大野を愛しているかではない。大野がその愛情に、どれだけ濃い時間を返せるかである。



