
ラッパーのYZERR氏が、隣人の騒音被害により体調を崩したとして、全国ツアー「RICH OR DIE III」の一部公演中止を発表した。本人は、深夜から朝まで大音量と重低音が続き、2カ月以上まともに眠れなかったと説明している。高級マンションでも避けられない騒音トラブルとして、SNS上で反響が広がっている。
「2カ月以上まともに眠れなかった」ツアー3公演を中止
音楽ナタリーや日刊スポーツの報道によると、YZERR氏は7月3日の広島公演当日、「身体的な都合」を理由に急遽公演中止を発表。その後、自身のSNSで詳細を説明した。それによると、新居に引っ越して以降、隣人による騒音トラブルが続き、ツアーが始まった4月28日より前から2カ月以上まともに眠れない状態が続いていたという。睡眠不足で体が休まらず、持病の腰痛と潰瘍性大腸炎が悪化し、地方公演への移動が困難になったことから、7月3日の広島、4日の香川、9日の東京公演の中止を決めたとしている。
騒音の程度について同氏は「皆さんが想像するレベルではなく、クラブくらいの大音量と重低音が深夜から朝8時まで続くくらいのやつ」と説明。管理会社が注意し、近隣住民の通報で警察が出動しても改善せず、当該住人はインターホンにも応じないままだったという。
「家賃200万〜300万円でも住みやすさは保証されない」
同氏の住まいが家賃月200万〜300万円クラスとされる高級マンションとされるが、同氏は「高い家賃が住みやすい生活を保証するわけではない」という趣旨の不満を漏らしており、ネット上では「月300万円払っても隣人ガチャにハズレる」「高級物件でも回避できないのか」と、あきらめにも似た声が広がった。
高級賃貸物件は遮音性や入居審査の面で騒音リスクが低いと考えられがちだが、審査で見抜けるのは支払い能力であって、生活マナーではない。むしろ経済力のある住人ほど、注意や勧告に動じないケースもある。今回の件は、住環境の質が金銭では完全に買えないことを象徴的に示した。
騒音トラブルに対する法制度の限界
騒音トラブルは、警察・管理会社の介入では解決しないことが多い。深夜の騒音は各自治体の迷惑防止条例や軽犯罪法に触れ得るが、現行犯的な確認が難しく、警察の対応は注意にとどまりがちだ。民事では、騒音が社会生活上我慢すべき限度(受忍限度)を超える場合に損害賠償や差止請求が認められ得るが、騒音値の測定や記録など立証のハードルは高く、解決までに時間もかかる。賃貸であれば、管理会社や貸主を通じた契約解除という手段も理論上はあるものの、実行される例は限られる。
結果として、被害者側が転居を余儀なくされる「逃げた者負け」の構図は否めない。集合住宅での生活が標準となった都市部において、悪質な騒音への実効的な介入手段をどう設計するか。個人の我慢に委ねるフェーズは、もう終わりにすべきだろう。



