
環境保全への機運が高まる中、家庭ごみとして処理されてきた使用済み浄水カートリッジの無償回収を2010年から先駆けて進める企業がある。累計500万本を達成した株式会社日本トリムの資源循環への足跡を追う。
業界の先陣を切る使用済みカートリッジ回収の足跡
整水器市場で高いシェアを持つ株式会社日本トリムが継続してきた環境保全活動が、大きな節目を迎えた。同社が2010年1月から開始した使用済み浄水カートリッジの無償回収プロジェクトにおいて、2026年6月時点の累計リサイクル本数が500万本を突破した。
この500万本という数字は、同社で最も小型のカートリッジで換算した場合、縦に積み上げると標高8849メートルのエベレスト100個分を超える高さに相当する。
SDGsという言葉が広く浸透する以前から、顧客を巻き込んで地道に積み上げてきた取り組みが、巨大な山となって実を結んだ形である。
単なる廃棄から高付加価値な新資源への転換という独自性

多くの企業が製品の販売のみで責任を終える中、同社は回収したカートリッジを再び市場へと還元する高度な分別マテリアルリサイクルを確立している。他社との決定的な違いは、カートリッジをそのまま廃棄するのではなく、それぞれの部位ごとに全く別の新しい資源へと生まれ変わらせる点にある。
高知県南国市のリサイクル工場に集まる週約6000本のカートリッジは、1本ずつ専用の機械で分解される。フィルター部分のヤシガラ活性炭は不織布と加工されて固形燃料になり、外側のプラスチックケースは汎用性の高いABS樹脂へと再生される。箱までも再生紙として再利用される徹底した循環モデルである。
水を扱う企業として環境負荷低減に挑む経営哲学
こうした先進的な取り組みの背景には、生命の源である「水」を事業の核に据える企業としての強い責任感と哲学が存在する。同社は事業活動によって発生する環境負荷の低減を不可欠と捉え、製品カーボンフットプリントの算定による環境負荷の可視化などにも積極的に取り組んできた。
同社の開発関係者は、7月の「海の月間」に象徴される水への関心の高まりに触れ、毎日の飲み水を家庭でつくる整水器の提供自体がペットボトルごみの削減につながると指摘する。
製品そのものの普及と、役目を終えた部品の回収の双方が一体となって初めて、持続可能な社会への貢献が成り立つという信念が息づいている。
顧客の共感を呼び起こす仕組みから学ぶ変革のヒント
株式会社日本トリムの取り組みからビジネスパーソンが学ぶべきは、顧客を単なる消費者としてではなく、環境活動のパートナーとして巻き込む仕組みづくりの妙である。専用の返送キットを用いた無償回収のプロセスは、顧客側の行動心理に深く寄り添った設計がなされている。
回収されたカートリッジの中には、ユーザーからの感謝の手紙や子供たちからのメッセージが添えられているケースも少なくないという。
企業側の実直な姿勢が顧客の共感を呼び、行動変容を促すという好循環のあり方は、これからのサステナビリティ経営を目指す企業にとって重要な示唆を含んでいる。



