
6月28日午後10時ごろ、神戸市兵庫区福原町の風俗店に1本の119番が入った。「女性従業員と男性客が倒れており動かない」──男性従業員からの通報だった。所定のコース時間を過ぎても部屋から出てこない2人を不審に思ったスタッフが扉を叩いたが、鍵はかかったまま応答がなかった。室内に入ると、女性(33)はソファに横向きで倒れており、首と胸部に刃物で刺されたような傷が複数あった。男性客(30代とみられる)はベッドの上に胸部に刃物が刺さった状態で倒れていた。2人はともに搬送先の病院で死亡が確認された。兵庫県警兵庫署は男性客が女性を刺した後に自殺を図った可能性が高いとみて、殺人容疑も視野に捜査を進めている。
鍵のかかった密室──「人気で長く在籍していた嬢」の死
現場は神戸電鉄・新開地駅から北約300メートル、風俗店などが密集する福原の一角だ。事件の第一報を受けたXでは、「新宿の女(official)(@bakausapipi2)」が詳報を投稿した。投稿によると、事件が起きたのはソープランドGOODとされ、「殺害された嬢が人気で長く在籍していた」という。ただし店舗名は6月29日時点で公式発表はなく、警察・主要報道機関は「福原町の風俗店」としている。
亡くなった女性が33歳という事実はABCニュースが翌29日に報じたが、上記投稿では「ニュースでは30代の〝ような〟2人と言っている」と述べ、実際のソープランド業界では年齢表記が実年齢と乖離しているケースが多いと指摘。ソープランドには年齢詐称の慣行があり、例えば「22歳表記」は実年齢25〜29歳、「23歳表記」は実年齢30〜35歳に相当することがあるため、店のスタッフも「明確な回答ができない状態」になっていると述べた。
部屋が施錠されたまま男女が絶命していたという状況は、典型的な「密室での凶行」だ。客が利用時間内に嬢を刺し、ドアを施錠した上で自ら命を絶ったとみられる。被害者の女性と客の間に何があったかは捜査が続いているが、この「施錠→刺殺→自殺」というパターンは、日本の性風俗店内殺傷事件における一類型として繰り返されてきた。
吉原「夕月」事件と重なる構図──2023年5月の悲劇
上記投稿では、今回の事件を「2023年5月の吉原夕月刺殺事件を彷彿させる」と表現した。
2023年5月5日、東京台東区千束の高級ソープランド「夕月」でナンバーワン嬢として知られる工藤舞さん(当時38歳)が、接客中に常連客の今井裕被告(当時32歳)に首を刃物で切りつけられ死亡した。今井被告は現場で自首し、2023年11月の判決で懲役16年(求刑18年)が言い渡された。
「夕月」事件では、今井被告が「色恋営業」と呼ばれるソープ嬢の接客スタイルに病的な依存を示し、「恋人」のような錯覚を抱いたまま多額の借金を重ねた末、関係の終わりを告げられて犯行に及んだとされた。「きらびやかな人生を送っていた彼女を殺してその人生を奪ってやろうと思った」という被告の供述は、性的サービス業に従事する女性を「モノとしてしか見ていない」感覚の極限を示すものだった。
今回の福原の事件で動機はまだ明らかでないが、「密室」「刃物」「女性の多発刺創と男性の自殺」という構図は、夕月事件との類似を指摘させずにはいない。長く在籍した人気嬢が客に殺された、というSNSでの言及が事実であれば、「接客関係が長期化した常連客による犯行」という可能性が浮かぶ。
匿名掲示板に真偽不明の投稿
なお、真偽は定かではないが、今回の「犯人」による遺書を兼ねた犯行声明とも取れる投稿がネットの匿名掲示板で確認され、拡散している。長文の投稿には、「惚れさせた罪」「確実に破滅させる事ができれば〜喜んで死を受け入れよう」「死ぬ時は一緒」などの文言が含まれている。
摘発ラッシュの渦中──揺れる業界
今回の事件が起きた福原は、関西最大の性風俗街として知られる地区だ。2025〜2026年にかけて、兵庫県警は福原を中心に売春防止法違反での摘発を相次いで実施している。経営者、店長、不動産オーナー、場所提供者など広範な関係者が対象となっており、「福原のソープ街の今」を伝えるnote記事には「このような摘発がいつ自分の店に来るか分からない状況」と業界の緊張感が描かれている。
前述の投稿では「(ソープランドは)治外法権となっており、詐欺罪が適応された事例はない」と説明している。「治外法権」という言葉は法律的には正確ではないが、性風俗店内で起きる年齢詐称・料金トラブル・精神的被害などが刑事的に追及されにくい現実を指したものとして、業界関係者の実感を反映している。しかし、今回のケースの詳細は不明だが、「ガチ恋営業」で客の恨みが積もれば「治外法権」では済まない事態を招く。
全国的に摘発の波が続き恐々とする業界に、太客が「無敵の人」となって牙を剥いた。



