
山田水産が手がけるこの商品は、天然シラスウナギに頼らない閉鎖循環型の養殖技術を活用したもので、店頭では早朝から購入希望者が並び45尾が即完売。
オンライン販売も開始直後に完売する盛況ぶりとなった。今年はシラスウナギの豊漁で一般的なウナギ価格が昨年比1〜2割安い中、完全養殖品は試験価格としてウナギ資源の未来を象徴する存在となっている。
築地店頭販売で早朝から長蛇の列 限定45尾即完売
東京都中央区築地6丁目の山田のうなぎうな骨らーめん築地本店では、午前11時の販売開始を待つ購入希望者が7時過ぎから集まり始めた。
1尾税込4500円の蒲焼は1人1個限定で、開始とともに完売した。一番乗りを果たした23歳の大学院生は歴史的な瞬間を手にした喜びを語り、友人らと分けて味わう計画を明かした。店頭はパック販売に限られ、店内でのうな重など飲食提供は7月頃から順次開始される見通し。
日本橋三越本店でも取り扱いが予定されており、試験販売の拡大が期待される。無投薬で育てられた完全養殖ウナギの品質は高く評価されており、初日の反響は商業化に向けた重要な第一歩となった。
オンラインショップは開始2分で完売 買えなかった人の悔しがる声
山田水産公式オンラインショップではギフト箱入り2尾セット(税込9720円プラス送料)が11時に販売開始され、わずか2分で完売した。イオングループのECサイトでも数量限定で展開されたが、すぐに終了し再販時期は未定という。
SNS上では購入に失敗した人の声が続出。「勤務中で見逃した」「争奪戦に敗れて残念」「次回は絶対に確保したい」といった投稿が相次いだ。
「持続可能なウナギを応援したい」との前向きな意見も目立つ。試食した関係者からはふっくらとした食感と上品な脂の乗りを評価する声が上がり、天然物に近い味わいが確認されている。
完全養殖技術の革新点 親魚から次世代まで人工循環
完全養殖は親ウナギから人工的に卵と精子を採取し、ふ化・仔魚育成・シラスウナギ生産・成魚育成までを繰り返す技術で、天然資源に一切依存しない点が画期的だ。
水産研究・教育機構が2002年に人工種苗生産に成功し、2010年に完全養殖を実現した長年の研究成果を基盤としている。山田水産は同機構の指導を受け、2024年以降2年連続で年間1万尾以上のシラスウナギ生産に成功。
生殖腺刺激ホルモンによる成熟誘導、仔魚専用の配合飼料開発、大型自動給餌水槽の導入などが主な技術ポイント。
種苗1尾あたりのコストは2016年度の約4万円から2023年度約1800円まで大幅に低下し、目標800円台の実現に向けた取り組みが進む。
閉鎖循環型養殖により環境負荷も低減可能で、ウナギ資源減少問題への根本解決策として期待を集めている。
2026年ウナギ市場の特徴 昨年大豊漁で価格1〜2割安傾向
2025年のシラスウナギ大豊漁の影響を受け、2026年は供給が安定。
中国産蒲焼の輸入単価は1〜3月平均で前年比1割安の1kg約2225円となり、東京卸売市場でも2割以上の価格下落が見られた。スーパーでは中国産1尾が1000円前後で並ぶ事例が増え、飲食店でも値下げキャンペーンが展開されている。
一般的な養殖ウナギは昨年比1〜2割安い水準だが、完全養殖品は試験段階のため4500円と高価格帯。
エサ代や光熱費の高騰はあるものの、全体として今年はここ数年で比較的購入しやすい年となっている。
土用の丑の日需要期に向け、価格動向が注目される。
商業化の課題と展望 コスト低減で安定供給実現へ
完全養殖の商業化にはさらなる量産化とコスト低減が不可欠。
山田水産は中小企業ながら世界初の試験販売を実現した実績を活かし、自動化技術の深化や優良家系の育種を進めている。将来的に1尾1000円台の実現が可能になれば、天然依存を脱した安定供給体制が構築できる見通しだ。
購入者アンケートを通じて味や価格の反応を検証し、本格展開を目指す方針。
ウナギ食文化の継承と資源保全を両立させる取り組みとして、国内外から高い関心が寄せられている。試験販売の成功を糧に、持続可能な水産物のモデルケースとなることを期待したい。



