
広島の名門・広陵高校硬式野球部で2025年1月に発生した部内暴力問題について、学校法人広陵学園は2026年5月28日、第三者委員会の調査報告書を公表した。報告書は複数の上級生による集団的な暴力行為を認定し、中井哲之元監督による不適切な発言が被害生徒の転校を招いたとも指摘した。同校は今後、野球部の全寮制を廃止する方針を示している。
暴力問題の概要
事案は2025年1月21日から22日にかけて発生した。野球部の寮で、禁止されていたカップラーメンを食べた当時1年生の部員に対し、当時2年生の部員4人が個別にその部屋を訪れ、頬を叩く、胸を叩く、胸ぐらをつかむといった暴力行為に及んだ。被害生徒側からは正座させられたうえで複数人に囲まれ蹴られたという証言も出ており、金銭的な要求や性的な強要があったとする告発もSNSで拡散したが、第三者委員会の今回の報告書では個々の暴行の回数や強度を確定することは困難としている。
被害生徒は精神的に追い詰められ、同年3月末に転校を余儀なくされた。転校に至った背景には、暴行そのものだけでなく、中井元監督による「高野連への報告はチームの不利益になる」という趣旨の発言が被害生徒に向けられ、報告・相談を抑制する圧力となったことが第三者委により認定されており、それが決定的な契機となったと指摘されている。
第三者委員会の認定内容
2025年10月3日に設置された第三者委員会(弁護士ら構成)は、広陵学園に調査報告書を提出。同校が2026年5月28日に公表した。
報告書は「複数の上級生が関与する集団的態様で暴力行為が行われた」と事実認定した。個々の暴行の回数や強度を確定することは困難としながらも、組織的・集団的な暴行の構図は明確に認定された形だ。
さらに、被害生徒が転校に至った経緯についても踏み込んだ分析を行った。中井元監督が被害生徒に対して「高野連への報告がチームの不利益につながる」趣旨の発言をしていたことを認定し、「事実の申告を抑制させる極めて不適切な発言で、避けるべき二次被害だった」と指摘。この発言が転校を決意させる「決定的な契機」になったと結論づけた。
事案が発生した背景として、報告書は「甲子園出場を絶対視する同調圧力」と「閉鎖的な指導体制」を問題の根本に挙げた。
学校側の対応
広陵学園は報告書を受け、野球部の全寮制廃止と部員の自主性を重視した運営への転換を明言した。また「広陵高校大改革宣言」を掲げ、教育理念の再確認を含む組織改革に取り組む姿勢を示している。
一方、中井元監督を含む関係者への具体的な処分については「今後理事会で審議する」と述べるにとどまり、踏み込んだ対応には至っていない。
経緯と背景
この事案は2025年夏の甲子園大会直前にSNSで拡散し、広陵は1回戦勝利後に出場を辞退するという異例の展開をたどった。
刑事手続きでは、広島県警が当時の上級生2人を暴行容疑で書類送検し、広島地検が少年審判に付したが、広島家裁は2026年2月に審判不開始を決定。法的には手続き終結となっていたが、今回の第三者委認定により改めて学校側の責任が問われることになった。
なお、広陵野球部をめぐっては2023年頃の別事案についても第三者委員会が調査を行い、2026年2月に「いずれの事実も認めることは困難」との報告書を公表していた。今回の認定は、同じ学校・同じ野球部で相反する結論が出たことになり、学校側の対応の一貫性にも改めて批判が集まっている。



