
約1億5700万円の脱税罪に問われている実業家・インフルエンサーの宮崎麗果被告(黒木麗香被告)の裁判が波紋を広げている。
被告人質問で宮崎被告は起訴内容を認めた一方、国税局査察官から授乳に関する発言を受けたとして、「セクハラにあたる」と涙ながらに訴えた。これに対し、国税局側は「セクハラの事実はありません」と否定している。
SNSでは“年商25億円のカリスマワーキングママ”として知られていた女性は、なぜ巨額脱税事件の被告席に座ることになったのか。裁判では、脱税の手口だけでなく、SNS時代の“見せる生活”の危うさにも注目が集まっている。
「間違いありません」宮崎被告が起訴内容を認めた法廷
5月14日、東京地裁で行われた被告人質問。
宮崎被告は黒のパンツスーツ姿で法廷に入り、起訴内容について「間違いありません」と述べた。
検察によると、宮崎被告と会社側は、架空の業務委託費を計上するなどして約4億9600万円の所得を隠し、法人税など約1億5700万円を脱税した罪に問われている。
被告人質問では、脱税に至った経緯についても説明した。
「1期目、売り上げが想定以上に上がってしまい、法人税が払えない状態でした」
さらに、「法務や税務の知識がなかった」「知人に“こういう方法ができる”と言われ任せてしまった」と語った。
宮崎被告は、SNS運用やアフィリエイト事業などを展開する会社を経営。SNSでは、高級車やブランド品、家族との生活などを発信し、“成功した女性経営者”として注目を集めていた。
ただ、今回の事件で問題視されているのは、単なる申告ミスではない。
検察側は、知人に虚偽の領収書作成を依頼した点などを重視し、「計画的かつ常習的な犯行」と指摘している。
法廷で飛び出した“セクハラ発言”の訴え
その日の法廷で、大きな波紋を呼んだのが、国税局査察官とのやり取りについての証言だった。
宮崎被告は、強制捜査当時について、「乳腺炎の手術直後で、麻酔が抜け切っていない状態だった」と説明。そのうえで、自宅を訪れた男性査察官から授乳について繰り返し質問を受けたと主張した。
「『おっぱいをあげるのどんな気持ち?』『どんな姿勢であげるの?』などと聞かれた」
宮崎被告は、これをセクハラだとして国税局に抗議したという。
また、当初は「授乳への配慮だった」と説明されたものの、その後、「そのような事実はなかった」と覆されたとも主張した。
そして、こうした対応への不信感が、査察時に虚偽説明を続けた理由につながったと訴えた。
一方、国税局側は「セクハラの事実はありません」と否定している。
当然ながら、仮に不適切発言が事実だったとしても、脱税行為そのものが正当化されるわけではない。
それでも、この証言が大きな注目を集めた背景には、捜査機関による対応やハラスメントへの社会的関心の高まりがあるとみられる。
SNS上でも、
「本当にそんな発言があったのか」
「もし事実なら問題では」
「脱税とハラスメントは別問題」
など、さまざまな声が上がっている。
「節税と脱税の違いがわからなかった」は通用するのか
宮崎被告は法廷で、「節税と脱税の違いがわからない部分があった」とも説明した。
しかし、節税と脱税は法律上、大きく異なる。
節税は、法律の範囲内で税負担を軽減する行為。一方、脱税は、所得隠しや虚偽申告によって納税を免れる違法行為を指す。
今回の事件では、架空領収書を使ったとされる点が重く見られている。
検察側は論告で、「多額の架空経費を計上する手口は悪質」と指摘。そのうえで、「社会に影響力を持つインフルエンサーによる事件であり、“脱税は割に合わない”と社会に示す必要がある」として、宮崎被告に懲役2年6か月を求刑した。
一方、弁護側は、
・税金を全額納付済みであること
・延滞税なども支払う意思を示していること
・5人の子どもを育てていること
などを理由に、執行猶予付き判決を求めている。
法律上、3年以下の拘禁刑には執行猶予が付く可能性がある。
ただ、約1億5700万円という脱税額は極めて高額であり、実務上、1億円を超える脱税事件では、初犯でも実刑判決となるケースがある。
判決は7月15日に言い渡される予定だ。
SNS時代の“見せる生活”と転落の衝撃
今回の事件が大きな関心を集めている背景には、宮崎被告が“インフルエンサー”という立場だったこともある。
SNSでは、高級外車、ブランド品、豪華な暮らし、家族との幸せな日常などが発信されていた。
特に女性向けの発信では、“理想のライフスタイル”として支持を集めていた側面もある。
だからこそ、巨額脱税事件との落差に衝撃を受けた人も少なくなかった。
さらに、一部では夫との離婚協議も報じられている。
SNSで見えていた華やかな生活と、現在の状況とのギャップに対し、「SNSで見える成功とは何なのか」と感じる人もいるようだ。
また宮崎被告は法廷で、「生きる価値がないと思ったこともあった」と語り、事件報道後、誹謗中傷や脅迫が続いたことも明かした。
今回の事件をめぐっては、単なる脱税事件にとどまらず、SNS時代の“見せる生活”の重圧や、インフルエンサーを取り巻く環境の危うさを重ねて見る声も出ている。



