深刻な人手不足が続く学校給食業界。その中で、創業以来半世紀以上にわたり学校給食事業を展開する東洋食品は、全国約4,000校への給食提供を行い、業界トップシェアを維持している。
同社はいかにして人材確保の課題を乗り越え、成長を続けているのだろうか。その秘訣は、現場の省力化・省人化、人材育成、働きやすい職場づくり、そして付加価値の提供といった多角的な戦略にあった。
現場の省力化・省人化で効率アップ
東洋食品は「おいしさ」の決め手となる工程には人手をかけつつ、付加価値の向上に繋げている。一方で省力化にも注力しているという。
具体的には、作業時間表や調理手順表、チェックリストをマニュアル化し、一定の品質で給食を調理できるようにしていること。生産性向上、労務負荷軽減のために、フードミキサーや成型機、野菜の皮むき機などを活用したり、ルーティーンワークはDXを推進したりするなど効率化をすすめたこと。調理、配送、配膳の各業務を兼任化(マルチタスク化)することで、省人化を進めたこと、などの工夫が挙げられ、省力化を実現しているそうだ。
人材育成と働きやすい環境づくりで定着率向上
東洋食品では、人材育成においてもさまざまな取り組みを行っている。
2008年より、スキルレベルを5段階に分け、明確なキャリアパスを提示。昇進・昇給と連動させることで、ハイスキル人材の育成と従業員のモチベーション向上を図っている。
また、従業員の8割を占める女性が働きやすい環境づくりにも注力。育児と仕事を両立できる制度や、育休明けのメンター制度などにより、育休後の復職率95%を実現している。
働く社員の声
「以前よりも産休・育休がとりやすくなりました。」
「給食の仕事は朝がとても早いので、時短勤務で出社時間を調整できて助かっています。」
「2人目を出産しても仕事を続けられています。」
食育や地域連携で付加価値を提供
また、東洋食品では食育活動にも注力しており、調理室と教室をオンラインで繋ぐ実況中継や親子料理教室などを実施しているとのこと。
さらに、地元農家や飲食店との連携、食品ロス削減への取り組みなど、地域社会への貢献にも積極的に取り組んでいる。近年需要が高まる学童保育や高齢者施設への給食提供など、事業の多角化も進めているとのことだ。
「通常廃棄されるキャベツの芯部分を使用した「エコ献立」や、廃棄する野菜くずから出汁をとった「ベジブロス」などを給食に活用し食品ロス削減に取り組んでいます」(専務取締役 荻久保瑞穂さん)
災害時の炊き出しや物資を支援
その他にも、東洋食品は、地域貢献の一環として、42の自治体と災害協定を締結。被災経験で培ったノウハウを活かし、速やかな災害支援に備えている。
震災や豪雨などの災害時には、給食センターを避難所や防災拠点として炊き出しを提供するようだ。
東日本大震災のときは、東北地方にも東洋食品の受託している給食センターが多数あり、翌日から災害支援を実施したそうだ。
日本の学校給食モデルを世界へ
東洋食品は「学校給食に携わること、それは日本の未来を創るお手伝いをさせて頂くこと」という理念のもと、安全・安心でおいしい給食を提供し続けている。
同社の取り組みは、人手不足が深刻化する業界において、持続可能な事業モデルの構築を示す好例と言えるだろう。将来的には、日本の学校給食システムを海外に展開することも視野に入れ、更なる成長を目指している。