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法人のサステナビリティ情報を紹介するWEBメディア coki

医療法人社団 光志会 奥原歯科医院

https://koushikai17.or.jp/

〒359-1141埼玉県所沢市小手指町1-30-10

04-2921-1036

「誰ひとり取り残さない!」歯科医院発SDGsとは?

サステナブルな取り組み SDGsの取り組み
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奥原歯科委員のみなさん。画像右が奥原先生
奥原歯科委員のみなさん。画像右が奥原先生(画像提供:奥原歯科医院)

医療法人社団光志会 奥原歯科医院は自然が豊かな埼玉県所沢市にあります。平成8年にテナントを借り、たった2台のチェアー(診療台)で始めた一歯科医院が、20年以上SDGsの基本理念「誰ひとり取り残さない」を地道に実践してきた結果、現在歯科医師8名を含む総スタッフ50名の地域最大規模の歯科医院に成長し、2年前から歯科医院では珍しい歯科とは全く関係ない「SDGs専門マネージャー」を正社員として雇い、障がい者の就労継続支援B型施設の活動を応援する「福祉マーケット」を主催する等、歯科にとどまらない活動を展開しています。

訪問歯科診療って知ってますか?

今では当たり前に「訪問(往診)車」を見かけますが、私が初めて「訪問歯科」を始めた20年前には、歯科治療が自宅で受けられる!なんて想像もつかない事で、実際に訪問に出ている歯科医院等ほとんどない状況でした。

市役所の介護福祉課に相談に行った際も、歯医者さんが介護保険のことを相談に見えたのは初めてです!とびっくりされた程です。

「訪問歯科診療」とは高齢や何らかの障害や病気の為医院に通院できない方のために、歯科医院側が訪問用の診療器具や薬剤、機械一式を持ってご自宅(居宅)や施設に出向いて治療を行うものです。

院内で行われている保険治療のほとんどはご自宅のダイニングチェアーに座って、またはベッドで寝たきりでも受けることができます。

院内の大きな診療台を持っていくのではなく(笑)、掌に乗る位の小型モーターや小分けにした器材を持っていきますので、流しのお水と電気さえ貸していただけば十分です。

なぜ訪問診療を始めようと思ったのか?

その原風景は自分がまだ大学を卒業したばかりの研修医時代に遡ります。

平成元年当時大学病院に「障がい者歯科治療室」が初めてできました。まだ教室の体もなさず、各診療科から寄せ集められたドクターが診療していました。

私は医局でお世話になっている先生に連れられ、ほぼ毎日ヘルプで参加していました。

それでも当時各県に「障がい者」を診る環境はまだ全然整備されていなかったので、ご両親が会社を休んでマイカーで県内、隣県から何時間もかけ、たった15分位の虫歯の治療に来られていました。

知的障害や自閉症の子の場合、急に暴れたり奇声を発したりしてしまうので、どうしても公共機関での来院は避けたかったのだと思います。

毎日その姿を見ていた私は「それぞれが生活する地域に障がいを持つ方の特性を理解して、歯の治療ができる歯科医がいれば、みんなが幸せになれるのに…」とずっと思っていました。

そしていつの日か自分が開業することがあったら、絶対に障がいの有無で診療を拒否せず「すべての患者さんを受け入れる」医院を作りたいと心に誓いました。

いざ、訪問歯科の実践へ

訪問歯科診療の様子
訪問歯科診療の様子(画像提供:奥原歯科医院)

開業して6年目、個人病院を医療法人に変更したのと、時を同じくしてずっと「夢」だった「訪問歯科診療」を始めました。

一言で「往診に行く!」と言ってもここが内科医の往診とは違って、聴診器と血圧計で行ける程簡単ではありませんでした。

歯科の場合義歯が割れたとか歯が欠けたとか何か不都合があって伺うので、器材一式コンパクトに収納して車に詰め込みどんな事態でも対応できるような準備が必要です。

加えて休日に往診に行くと私もスタッフも休日なしで働くようになってしまいます。

それでも当時、志のある歯科衛生士、助手が休日出勤で一緒に訪問に行ってくれたのは忘れられません。

最初の1か月はたった一人の患者さんしか依頼がなく、絶対に需要はあるはずなのに「訪問歯科」という仕事は本当に成り立つのだろうか?不安な日々を過ごしていました。

そんな時二人目の患者さんからの依頼があり、スタッフと共に「訪問歯科」が続けられる喜びを分かち合ったのが昨日の事の様です。

それから20年の月日が過ぎ、現在は地域の「訪問歯科」のパイオニアとして多くの居宅介護支援事業所や老健、特養などの施設からの信頼の元、訪問車3台体制、月から土まですべての曜日で訪問できる体制で、月間600人位の患者さんに訪問で治療を行っています。

精神科での歯科治療

「訪問歯科」というと、高齢者のお宅に治療に行くんですよね!と必ず聞かれますが、決して高齢者だけを相手にしている訳ではありません。

自分が通院できない患者様の中でずっと心に引っかかっていたのが精神を病んでいる方の治療でした。

精神科に入院中の患者さんは薬の影響か「歯磨きをしよう」という気力もなく、歯が欠けたら欠けたまま、抜けたら抜けたまま等、歯科治療においては「取り残された場所」だったからです。

何か社会に影響がある事件が起こると、必ず精神科への既往が取りざたされます。

治療するドクターもスタッフも何となく漠然と「怖い!」という感覚があるので、此処での治療は避けていたのかもしれません。

ご縁がつながり、現在は3件、精神科への往診を行っています。

初めは何を言ってるのかも聞き取れず、言ってることはどこまで本当なのか?食べこぼしも多く服装も気にしない人が多いため、私もスタッフも戸惑いだらけでした。

ただ不思議なもので毎週関わっていると、言いたい事も大抵わかるようになり「この人たちって何て純粋なんだろう。

きっと純粋過ぎるが故に汚い裏表のある大人の社会に順応できないのかも?」と思うようになりました。

今ではスタッフも全然普通の患者さんと同じように話しかけたり、冗談言って笑わせたり、障がいを持つ方と一般の方の垣根(心のバリアフリー)がほとんどないことがうちの医院の風土ともなっています。

退院した後も医院に通院してくれている患者さんが非常に多いのも特徴の一つです。

コロナ禍の思わぬ効用

色々な事情のある患者さんを受け入れる!という風土が育っていた当院ではありますが、まだそれは医院の中で完結するレベルにありました。

大きく変わってきたのは「コロナ禍」の影響も大きいかもしれません。

コロナが蔓延しだすと、今まで行われていた会食、勉強会などがことごとくなくなり、余剰な時間が結構できました。

そこで以前から気になっていたSDGsについてきちんと勉強しようと思い、色々検索していくと「CSR(企業の社会的責任)」という文字が頻繁に出て来たので、まず「CSR」をきちんと学んでみよう!ととりあえずCSR検定の勉強から始めてみました。

学びだすと「ステークホルダー(利害関係者)」「エンゲージメント(社員の会社に対する愛情)」「ダイバーシティ(多様性)」「インクルージョン(包摂)」等始めて英語を学んだ時のように、見知らぬ単語のオンパレードで何度もめげそうになりましたが、続けているとだんだん色々な知識が増えていき勉強が楽しくなってきました。

「これを医院に応用するとこんな事ができそうだ!」「これは明日からでも実践できそうだ!」等わくわくした気持ちで学ぶことができました。

とりあえず「CSR」を実践していけば自然とSDGsの諸問題もクリアできる!とわかったことと、今までは自分の医院の利益、従業員の満足度向上だけに目が向けられていたのが、「まず社会で困っている問題や社会が必要としているニーズ(需要)」という外側から「医院の仕事、役割」という内側にベクトルは向かなければならない」という基本が学べたのはとても大きな収穫でした。

いざ「福祉マーケット」開催へ

秋の福祉マーケットでは「手作りパン」や野菜の販売をしました
秋の福祉マーケットでは「手作りパン」や野菜の販売をしました(画像提供:奥原歯科医院)

CSR検定の勉強をする中で、「障がい者雇用」という項目にすごく興味がわきました。

その中で民間企業も法廷雇用率(2.3%)以上の障がい者を雇う義務が法律で定められている事を知り、就労継続支援B型施設における工賃(賃金)の低さ月額1万6118円(2018年度)に驚きました。

ずっと診療に行っていた精神科の実情を垣間見た気がしました。これでは退院しても生活保護に頼るか、再入院という人が多いのも仕方ないなと。

「何か自分にもできる事はないか?」必死で考えました。とりあえず、今できる事から始めてみようと。

コロナ禍で販売場所を無くしていた就労支援B型作業所に声をかけ、医院の前の駐車場の一角に事務用の長机を設置し週1で「手作りパン」を販売してもらいました。

これが「安くて美味しい」と評判になり「うちの作業所も参加したい!」という声がどんどん広がって

7作業所位になったので、休診日を利用して2021.11月に初めて医院の玄関前駐車場で「福祉マーケット」が産声をあげました。

この開催を聞きつけ患者さんが自家農園で育てた野菜を無償提供してくれたり、ご近所の卵専門店の社長が800個卵も寄付してくれました。

こんな沢山の卵を見たのは生まれて初めてでした(笑)
そして、一歩勇気を持って踏み出してみたら、意外とみんな協力してくれることに感激しました。

SDGs専門マネージャー誕生!

訪問歯科時の一枚
訪問歯科時の一枚(画像提供:奥原歯科医院)

試行錯誤で始めた第1回福祉マーケットですが、今後の継続開催の必要性も実感し歯科医として現職で働いている自分が現実問題として前線で動く事は不可能。

どうしたらいいだろうか?と悩んでいた時にふっと事務職で中途採用した勝畑が頭に浮かびました。

前職は外食産業のマネージャーをしていた彼ですが、医院の事務職には何となく向いていない感じで居場所のなさを感じていました。

そこで彼に歯科医院でこんなポジションは普通ないのだけれど、今後絶対に必要になるから「SDGs」専門のマネージャーにならないか?と打算した所、二つ返事でOKをもらい、その日を境に水を得た魚のように彼の長所が前面に押し出され、行政との交渉、B型作業所同志の横の連携、新しいSDGsの企画等自分一人では到底成しえなかったことが次々と実現していきました。

このことから大企業ではなく中小企業が行うSDGsでも経営者の他に専門で行ってくれる「SDGs専門職」がいることが今後様々なSDGsを実現していくためのキーワードになる気がしています。

人にはそれぞれ「咲くべき場所」があり、そこにピタッと配置された時に咲く花は予想もつかない位の大輪の花かもしれないのです。

新しい社員を雇わなくても、今のスタッフの中に居場所が見つからず、芽が出ていないスタッフがいるかもしれません。

SDGsを実践して変わったこと!

回を重ねて「福祉マーケット」も5回目を無事に終える事ができました。2回目からは行政にお願いして近所の公園を貸し切って行っております。

今回は天気も良く、桜満開の下有意義な時間が過ごせました。
出店施設も16に増え、協賛企業も23にもなりました。

毎回藤所沢市長をはじめ、地元選出の国会議員、県会議員、市会議員の皆さま、社会福祉協議会様にもご参加いただき、会を増すごとに認知度が上がり、人と人とが繋がり自然と大きな輪が広がっているのが実感できます。

参加施設からは販売によって収入が増える機会を与えていただいてるだけではなく、このマーケットでの販売を通じ「自分たちが作ったものが来場してくださった方に喜んでもらえる!」という経験を直接施設利用者がすることで、今まで惰性でやっていた作業を一生懸命に行ったり、休みがちだった方が作業を休まなくなった!等副次的な効果も出ていると聞き来ます。

SDGsを実践してみて、一歯科医院で診療しているだけでは絶対に知り合う事のなかった方々と触れ合えたり、行政のトップの方から直接会って活動を評価され、議会で話題にしていただいたり、何より通院している患者さんが「診療だけでも大変なのに、先生はすごい!」と評価してくれるのが一番うれしく思います。

SDGsの実践を通じて、社会の問題と向き合う事は、一見利益につながらず無駄におもえるかもしれませんが、巡り巡って必ず自分の仕事の評価にもつながると感じています。

これからも勝畑と二人三脚でどんどん福祉の輪を広げていきたいと思っています。

◎法人概要
法人名:医療法人社団光志会 奥原歯科医院
URL:https://koushikai17.or.jp/
住所:埼玉県所沢市小手指町1-30-10
診療時間:9:00〜13:00/14:30~19:00(日曜定休)
※土曜のみ〜18:00まで
※第一日曜 矯正診療
医療法人社団光志会は所沢市小手指町に1996年に開業した奥原歯科医院が母体です。2002年より地域に貢献できるよう法人化し、2007年に現在の自社ビルに移転し開業27年目を迎えました。一般診療のみならず、20年前から居宅、施設への訪問歯科診療(往診)も積極的に行っており「誰ひとり取り残さない!一人一人の患者様の気持ちに徹底的に寄り添う!」姿勢を守り続け7年前からは通所リハビリ施設「風ステーション」も併設し、現在診察台12台、訪問車3台、歯科医師8名を含む総スタッフ60名で奮闘中。

◎プロフィール
奥原 利樹
1963年長野県松本市生まれ。1989年広島大学歯学部卒業。
1996年埼玉県所沢市に奥原歯科医院を開業。その後医療法人を立ち上げ2007年に現在の自社ビルに移転し開業27年目。一般診療のみならず、20年前から居宅、施設、精神科等への訪問歯科診療(往診)も積極的に行っている。
「1本1本の歯に対する患者さんの気持ちに徹底的に寄り添う」姿勢を守り続け、現在はチェアー12台、歯科医師10名を含む総スタッフ50名の医療法人社団光志会理事長として、また現役の歯科医師として現場で若いドクターの教育に診療に奮闘中。
2021年よりSDGs、CSRを実践するため、障がいを持つ方の就労支援や「福祉マーケット」の定期的な開催、運営にも力を入れている。
著書「やっぱり、歯科医って素晴らしい!!」Discover21
「歯科医志望者が絶対に知っておくべき32のこと」幻冬舎

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