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三谷産業株式会社

https://www.mitani.co.jp/

〒920-8685石川県金沢市玉川町1-5

076-233-2151

総合商社ではない「複合商社」という在り方、三谷産業

ステークホルダーVOICE 経営インタビュー
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三谷産業株式会社 本社
三谷産業本社外観 撮影:加藤俊

北陸を代表する商社、三谷産業株式会社(石川・金沢)。
扱っている事業領域は幅広いが
コーポレートサイトやのメディア情報をても、「総合商社」という言がでてこない。

代わりに多用されているのが、「複合商社」という聞きなれない語。総合ではなく複合。この言が意するところは何なのか。

上場企業の社長が、ラジオのパーソナリティ?

三谷忠照さん
三谷さん「思春期は、クリエイターになりたかった。テレビの構成作家に憧れた時期も。培ったものがいまの仕事にも活きている」

本題に入る前に、複合商社とは何かを解くためのヒントにもなる面白い話がある。東証プライム市場に上場している三谷産業の社長三谷忠照さんには、地元金沢のラジオ番組「Tad Mitani’s Innovation Now」のパーソナリティという一面がある。

この番組は石川県内の企業経営者を招き、三谷さんが彼らの本音や理念を聞くというものだ。三谷さん自身、「私が企画書を書いて、ラジオ局に企画を持ち込んで始まった番組」と語っている。きっとラジオが大好きな人で、これは経営者の道楽。誰もがそう想像するだろう。ところが、番組をもつ理由には意外な目的があった。

「始めた理由は、石川県内の魅力的な企業を、もっと多くの人に知って欲しいと思ったから。ビジネスの世界に身を置いていると、一般には知名度が低いものの社会に多大な貢献をしている企業を知ることが多々ある」

三谷さん自身、歴史やイノベーション誕生の背景には、幾多の物語があるということを地域の広範な方たちにも伝えたかったという。「これは私が実際に体験したことで、勝手なリスナー像だが 」と前置きをして三谷さんはラジオに対する思いをこう語った。

「能登の小さなパン屋に入った時、店主が店先で客を待ちながらラジオを聞いていた。その時、流れていたのが偶然にも私の番組。私は特に声をかけるでもなく買い物をしたのだが、そんな地域の日常に番組が溶け込み、たまたま面白い事業を展開している地元企業の話を耳にしたことをきっかけに、リスナーが新しい商売のタネに気づく。そういうことができたらいい 。そんな光景が理想だ。声が出せなくなってしまって、クビにならない……限りはやっていきたい」。

「触媒」が起こす想定外の化学変化 ラジオも、雑誌も、イノベーションの場

同社の取り組みは、ラジオだけではない。2021 年3 月に「Carbon」という雑誌を創刊している。一般企業とベンチャー企業やスタートアップとの「架け橋」となることを目的とする新たなイノベーションマガジンと謳っている。

異業種同士との橋渡しについて、同誌の「創刊にあたり」で、三谷さんはこう述べている。

イノベーションマガジン、Carbon
三谷産業が発刊しているイノベーションマガジン、Carbon

「私たちの目的は、日本の産業界における一社一社の企業が、業種・業界を超えて新しい結合を生むための 触媒 となること」

どうやら、三谷産業自身、触媒となり「想定外」の化学変化を生み出すためのハブとなることを役目と自認しているようだ。実際に、異分野との融合や技術の接点が多いシリコンバレーやソーホーなどの地域ではイノベーションが起こりやすい。メディアを通じて地元石川県にもイノベーティブな環境を創り出したい。そうした三谷産業の思いが垣間見える。

他にも、10 代向けクリエイティブラボ 「ミミミラボ(三谷産業みんなの未来創造室)」の開設や地域のイベントへの協賛、海外事業拠点を置くベトナムでの産官学の意見交換会「Aureole カンファレンス」の開催など多方面で新たな取り組みを展開している。

なぜ、こうした取り組みを行っていくのか。そろそろ、本題に入ろう。既に答えは半分でているが、「複合商社」とは何なのか。三谷さんの口から語ってもらおう。

複合商社とは?

三谷忠照さん
「上場するとどうしても株主の方の目線を意識する。株主にとっての良い会社とは『利益率が高い会社』。しかし利益を上げるだけで社員や地域に還元しないわけにはいかない。企業とは、いうなれば八方のステークホルダーに向けて手を広げている天秤のようなもの。どこか 1 つだけに重さがかかってしまうとバランスが崩れてしまう。八方向全てにバランスが保たれていなければ「良い会社」とは言えない」
三谷

総合商社とは商材A もB もC も提供できる会社。しかし三谷産業はA とB を組み合わせたり掛け合わせたりして新たなX を生み出して提供したい。それに、総合商社というと座りが悪く感じる。

総合という言葉はA もB もC もD もあるというイメージだ。それに対して三谷産業の在り方は、誰かと新しい組み合わせ、掛け合わせをしていくことだ。

A とB を組み合わせることでX というサービス、C とD を組み合わせることでY というサービスが生まれていく。総合ではなく複合という言葉が近い。だから、自称するときは複合商社と言っている。

加藤

社員人にも浸透しているキーードか。

三谷

近は、ことあるとに朝礼社式でえている。には定しているとう。三谷産業は複合商社と社長が言っていたとすとう。

加藤

雑誌の発は、まさに複合生み出装置という的なのか。

三谷

そうだ。ープンイベーションを発したい。こんな企業が地にある、という情報が地域の人々の宿ることで、地域のーシャルキャタルのも広がっていく。

石川県にもベンチャーの萌芽生み出したい。何より、があるなら、たな会いをつないでいきたい。視野の中にあることでつながりがまれ、そこにしい何かがが面白いのだ。

加藤

やっしんでいる?

三谷

に、つなげることができるはつなたくなる。たまたま視野の範囲にあるつながるとイベーションになるのではないかと面白がってやっているというのは定しない。

ただ、自社のビネスを真剣えてのことではある。金沢を舞台にというのは、に三谷産業の発祥の地が金沢だということ。そして、それ以上に色々なで大きくさてもらっている。

を広げていきながら、自分たちがえる良い会社とは何かという問いの答えしていきたい。

加藤

三谷産業が大事にしてきたものは。

三谷

本的にはよし。りとの調重要視している。同に、自分たちも革新ること。それが、当社がえる「良い会社」だ。

企業価値を測る指標はいま、財務指標や純利益だけという時代ではなくなった。明示的で分かりやすいから、かつてはそれらの数字だけで企業を評価せざるを得ない面もあった。

しかし、いまやそれではだめだと、多くの人が気づいている。例えば企業の内部留保の増大が生活実感や給料の上昇とリンクしないことも明らかになっている。

この現状の中で、多くの人の理解を得られる「良い会社」像とはどのようなものか。独自の非財務目標を策定し、様々なステークホルダーからのフィードバックを得ることで、そのヒントが欲しかった。

加藤

「良い会社」をしようとするいは、社にも浸透しているのか。

三谷

くの社員が、「良い会社」であろうと、真剣えて行してくれている。当社は「創90 年をえるベンチャー企業」としているように、からも様々な事業のがある。

当社ではしい事業をしながら「良い会社」の答えし、理かって員員で錯誤けている。

「良い会社」には「こうでなければならない」という
確な姿はない。大切なのは、理の「」をするためにへ進は、会社自が持つのではなく、会社を構成している人々が持つことだ。

ダイキン
業株式会社の会長が「会社とはのものか。経営、株主、社員のものか。そでもない。会社は自社の品をし、会社の存在めてくれているての人のものだ」とってた。く同だ。


三谷さんのインタビューから見えてきたのは、同社が大切にしている「八方よし」という価値観だった。最近は、持続可能な社会がトレンドになっており、どの会社も三方よし的な理念を掲げるようになったが、三谷産業がこうした価値観を大切にしてきたのは、創業期からだという。

最後に象徴的なエピソードを紹介する。

お客様のため「あえて売らなかった」創業者が教えること

三谷産業は、創業当時は石炭の販売業からスタートしている。三谷さんの祖父・進三さんが創業者で、当時は、自ら自転車で駆け回って、顧客を獲得していったそうだ。ただ、その売り方は変わっていた。顧客から注文が入っても注文どおりに持っていかなかったのだという。

ある時のこと。石炭10tの注文が入ってきた。しかしその注文を受けた進三さんは「本当にそのお客様には石炭が10tも必要なのか?」と考え、先方の生産設備や生産計画を調査した。その結果「6tで充分」と判断したという。

「10tの注文依頼が来たら予備も含めて10.5tに増量したり、希望より早く納品したりするのがサービスとして当たり前なのかもしれない。しかしあえてこのお客様には6tで充分と考えて提案した。お客様からは最初はお叱りを受けたが、計算根拠を説明したら納得してくれた。

弊社にとって短期的には売上減になるが、お客様は余剰在庫を抱えずに済み利益も増える。お客様は、その分の資金を新規事業への投資に振り向けることもできる。長期的に見れば、そこに私たちのビジネスチャンスも生まれてくる。そのようなお互いの最適な関係を見極めて行動していくことを大切にしている」

顧客の要望に応えていくことで調和は保たれる。しかし、それ以上の真の最適を実現するために新たな提案をすることで、相乗効果が期待できる、より良い関係を築いていく。こうしたベンチャー精神を創業期から今までずっと持ち続けているから、多くの人が「北陸を代表する良い会社」と称するのだろう。

このエピソードからも、複合商社としてイノベーションを生み出し続ける同社が目指す「良い会社」の理想形が垣間見える。


ローカル企業として地元で積み重ねた信頼の歴史とともに、挑戦の歴史を併せ持つ「老舗ベンチャー」と評される会社。そして自らは「複合商社」を名乗る三谷産業。VUCA と言われる時代に、老舗ベンチャーはどこに向かっていくのか。三谷さんのラジオを聞いていると、自身が本当に楽しみながら、相手の良さを引き出そうとしていることが伝わってくる。radiko から聞くことができるし、また下記にある放送内容を記事化した「読むラジオ」を見てほしい。もしかしたら、X が生み出される瞬間に立ち会えるかもしれない。

何より、コンテンツとして純粋に面白い。

ラジオ番組「Tad Mitani’s Innovation Now

三谷産業株式会社 三谷忠照代表取締役社長

プロフィール
三谷忠照
1984 年生まれ。慶應義塾大学卒業後に渡米しベンチャーキャピタルに勤務しながらサンフランシスコ・シリコンバレーで2 社の起業経験を持つ。2010 年三谷産業(株)取締役就任。2012 年に帰国し常務取締役就任。2017 年より同社代表取締役社長就任。

企業概要
三谷産業株式会社
https://www.mitani.co.jp/
金沢本社 本店
〒920-8685 石川県金沢市玉川町1-5
076-233-2151(代表)
東京本社
〒101-8429 東京都千代田区神田神保町2-36-1住友不動産千代田ファーストウイング
03-3514-6001(代表)

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ライター:

株式会社Sacco 代表取締役。一般社団法人100年経営研究機構参与。一般社団法人SHOEHORN理事。週刊誌・月刊誌のライターを経て2015年Saccoを起業。社会的養護の自立を応援するヒーロー『くつべらマン』の2代目。 連載: 日経MJ『老舗リブランディング』、週刊エコノミスト 『SDGs最前線』、日本経済新聞電子版『長寿企業の研究』

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