ヴェンカテシュ・アディティヤさん、中野有香さん、内田圭亮さん
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法人情報
高砂電気工業株式会社は、名古屋で創業62年の歴史を持つ流体制御の課題解決カンパニー。同社の技術は医用診断や環境測定をはじめとする分析機器のほか、大学発のプロジェクトなど最先端の分野で採用され、「細胞から宇宙まで」を支えています。2020年に社内カンパニー制を採用し、品質と供給責任を追求する既存分野、新技術でイノベーションを起こす新規事業の2体制をスタート。
名称 | 高砂電気工業株式会社 |
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代表者名 | 浅井直也 |
住所 | 愛知県名古屋市緑区鳴海町杜若66番地 |
URL | https://takasago-elec.co.jp/ |
業種 | ソレノイドバルブ(電磁弁)およびポンプを中心とする流体制御機器等の設計・製造・販売 |
電話番号 | 052-891-2301 |
資本金 | 9000万円 |
社員数 | 257名 |
設立 | 1963年1月 |
創立 | 1959年7月1日 |
SDGs
ありがとうの総数 | 7 |
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社会貢献ポイント総数 | 700 |
法人メッセージ
「細胞から宇宙まで」。流体制御の技術で新しい未来をつくる|高砂電気工業株式会社 代表取締役会長 浅井直也さん
高砂電気工業株式会社は、名古屋で創業62年の歴史を持つ流体制御の課題解決カンパニー。同社の技術は医用診断や環境測定をはじめとする分析機器のほか、大学発のプロジェクトなど最先端の分野で採用され、「細胞から宇宙まで」を支えています。2020年に社内カンパニー制を採用し、品質と供給責任を追求する既存分野、新技術でイノベーションを起こす新規事業の2体制をスタート。「これまで以上にグローバルレベルの目標をもち、流体制御の技術で世界の未来に貢献していく」と語る同社の浅井直也会長に、今後の事業展開や同社が目指す未来について伺いました。
流体制御の技術で幅広い分野の課題解決に貢献
―まずは、御社の事業内容と強みについてお聞かせください。
弊社は、医療や環境、宇宙工学などさまざまな分野に流体制御と呼ばれる専門技術を提供する「流体制御のコンシェルジュ」です。お客様の用途に合わせてポンプとバルブを使い、最適な流れを作っていくのですが、小さなものではマイクロリットル(100万分の1リットル)という微量の液体を操作して細胞を移動させる培養装置から大きなものではロケットの推進エンジンまで、「細胞から宇宙まで」に当社の技術が貢献しています。
大学の研究室やNASAなどのお客様は先端的な事業をされていますから、ほぼ毎回オーダーメイドまたはカスタムメイドです。「こういうことをやりたい」とゴールを示され、我々が具体的な技術を提案する。マニュファクチャラーであるとともにコンサルタントであると自負しています。世界中から問い合わせをいただき、大学からの問い合わせは毎日のようにあって、ハーバードやケンブリッジなど世界の大学ランキング上位10の7大学と取り引きの実績があります。「これまで世界になかったもの」をつくるプロセスにお客様と一緒に関与させてもらうことは我々のいちばんの価値であると考えています。
―蒼々たる名前のお客様が並びますが、どのような経緯でオーダーがあるのでしょうか。
弊社のウェブサイトに掲載している「尖った」製品を見て問い合わせいただくケースが多いですね。必要とするのは世界で数人、数社ですが、だからこそコアとなる技術です。そこに狙いを絞ったマーケティングを行なっています。一般的にマーケティングと言うと大きなマーケットに広く浸透することを狙い、潜在顧客のニーズを捉えようとするものですが、弊社の場合、私はミクロマーケティングと言っているのですが、尖った製品に着目し、「これを探していた」「こういうものがほしい」と問い合わせしてくださるお客様を待つスタイルです。そして、とことんおつきあいしていきます。
成熟とイノベーション。2つのカンパニーで事業を展開
―御社は2020年に社内カンパニー制を採用し、「流体制御システムカンパニー」と「未来創造カンパニー」という2つの会社が両輪となって事業を展開されています。狙いや経緯を伺わせてください。
弊社は62年前に父である先代社長が創業し、当時アメリカの後を追いかけて技術力を磨き、新しいバルブを開発して幅広い分野に貢献することを目的に事業を拡大してきました。当時から現在に至るまで弊社の事業の中心は分析装置向けの製品の供給で、中でも血液分析装置向けは売り上げの4割を占める基幹製品です。血液分析装置であれば、少しの誤差が検査結果に影響し、最終的には命に関わりますから、この分野でもっとも求められるのは品質の安定です。高い品質の製品をできるだけ安価で大量に、納期どおりに納める製造業としての役割を果たすことが使命です。
一方で、先代が創業した時の「アメリカを追い越せ」という想い、イノベーションを追求する精神は弊社のコアであり、その精神のもとで60年以上にわたって蓄積してきた技術とノウハウをベースにイノベーションを起こし続けていく事業があります。スピード感をもって先端技術に対応した製品を創出するこれらの事業と既存の事業とでは、求められるものも文化も異なる。それぞれの特性をより追求できるよう、社内カンパニー制に踏み切りました。経営の基盤をなす既存事業の「流体制御システムカンパニー」と、新技術と新規事業への積極的な展開を図る「未来創造カンパニー」との「両利きの経営」を行っています。
―成熟とイノベーションというある意味相反するものをそれぞれ特化し、経営なされているということですね。
そうですね。創業時から取り引きのあるお客様には、ベンチャー的な企業から成熟し、大企業になった会社も少なくありません。その代表が株式会社堀場製作所さんです。70年以上前に京都大学の学生だった創業者がpH測定装置で起業し、今は自動車の排気ガス測定装置でグローバルシェア8割を超える企業になられました。同様に、今大学の研究室で始まっている先端的なプロジェクトが成長・普及し、量産型の技術や製品になっていくケースも出てくると思います。そのどちらにも対応できるのも社内カンパニー制のメリットです。
新規事業の場合、若手社員が自由にものを言える環境も大切で、そこからイノベーションが起きていきます。カンパニー制にして約1年がたち、ようやく形になってきたと感じています。
持続可能な世界のために。医療や環境、幅広い領域に貢献
―御社はSDGsも意識して経営なされていると聞いています。今後どのような分野に注力していくのかなど今後の展開について伺わせてください。
創業期からの主力である分析装置向けの事業は、医療系、環境系、クロマトグラフという領域がありますが、20年前に私が社長に就任してからは特に医療に力を入れたいと考えました。私は小学生の時に母をガンで亡くしていまして、ガン治療の分野に貢献したいという気持ちをずっともっているからです。
ガン治療には血液診断技術の開発や、発生のメカニズムにつながる細胞や組織の研究、新たな治療薬の開発などさまざまなアプローチがあります。そのひとつが、東京大学 工学系研究科・化学システム工学専攻 酒井・西川研究室が取り組む人体模倣プロジェクトです。小腸と肝臓の組織をiPS細胞から作り、例えばそこでガンを発生させてクスリの研究を行うようなシステムづくりを目指しているのですが、人工的な臓器を作るために必要な血流に相当する流れや小腸の蠕動の動きを弊社が手がけました。今後もライフバイオサイエンスに関わりながら、SDGs3「すべての人に健康と福祉を」に貢献していきたいと考えています。
また、水の分析装置向けの事業ではSDGs6「安全な水とトイレを世界中に」に貢献しています。なかでも中国においては、技術面と普及との2つで貢献できていると自負しています。産業が急速に発展した中国では工業廃水や農業廃水による水質汚染が課題になっていましたが、当初は水質分析装置を作る国産メーカーはなく、すべて輸入品でした。20年ほど前に現地のベンチャー企業が国産品に乗り出すことになり、弊社の中国の現地法人が協力したのですが、日本とは異なる測定方法のため、より高い温度と高い圧力に耐えるバルブが必要で、一から作り込んで二人三脚で完成させました。その分析装置は爆発的に売れ、中国でトップシェアを獲得しました。
国内外を問わず必要とされる技術を提供してきましたが、今後はSDGsもより意識しながらグローバル市場に進出し、幅広い領域で世界の未来に貢献していきたいと考えています。
ステークホルダーへの想い
社員・家族へ
社員への想い
取引先へ
サプライヤーへの想い
社員・家族へ
家族への想い
未来世代へ
2014年に住友ゴム工業株式会社との合弁で住ゴム高砂インテグレート株式会社を設立し、例えばマラリアで何万人も亡くなっているような途上国に検査機器を普及させて命を救うことを目指しています。会社のスローガンは「世界の平均寿命を5年のばす」。それは、高砂電気工業という企業がやりたいことでもあります。今まで世の中になかった新しい流体技術で世界の命に貢献すること。
昔の「藩」の時代から、今の日本という「国」の時代になったように、ずっと先の未来は国も消えて「世界」がひとつになるイメージをもっています。さらに宇宙にもつながっていく。それくらいのスケール観をもって仕事をしていきたい。社員にもそう伝えています。そういう視点で考えることで私たちの出番はもっと増えると確信しています。市場を考えても日本はいかにも狭い。国外にははるかに大きい市場があり、ビジネスチャンスがあります。若い世代には世界に目を向けてどんどん外に出ていってほしいと伝えたいですね。
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