
物価高や電気代の上昇で家計への不安が高まるなか、毎日の洗濯にも節約と環境配慮を両立する余地がある。ライオン株式会社の調査から、すすぎ回数を見直す意義と、行動を変えるために必要な条件を探る。
洗濯習慣の見直しが家計を救う時代へ
物価高、電気代の上昇、そして猛暑による水不足への懸念。家計を取り巻く環境は年々厳しさを増している。ライオン株式会社が実施した「洗濯のすすぎに関する意識調査」では、実に86.9%の人が今後の生活コストに不安を抱いていることが明らかとなった。

興味深いのは、多くの人が節約意識を持ちながらも、日常の習慣そのものは変えられていないという現実だ。調査では79.8%が「光熱費や水不足への不安があっても、洗濯方法などの習慣はなかなか変えられない」と回答している。
今回の調査で示されたのは、「環境にも家計にも優しい」行動の選択肢である。その具体策が、洗濯時のすすぎ回数の見直しだ。
「環境のため」は続かない。でも「お得」なら続く
環境配慮行動というと、「少し不便になる」「我慢が必要」「コストがかかる」といったイメージがどうしても強くなりがちだ。
だが、本来のサステナビリティとは、環境だけでなく経済性や生活の質も両立させる考え方である。
今回の調査で示されたのは、誰もが負担なく取り入れることができるアクションの提案であるといえる。
洗濯のすすぎ回数を減らすことで、水道使用量や電力消費量の削減につながるにもかかわらず、その事実を知らない人は非常に多い。「すすぎ0回で水・電力・CO₂排出量を約半分削減できる可能性」を84.1%が知らなかったほか、洗濯時間を約15分に短縮できることも81.7%が認識していなかった。
つまり、多くの人は節約機会そのものに気付いていないのである。

環境対策というと遠い話に聞こえるが、水や電気の使用量が減れば、当然ながら家計への負担も軽減される。環境配慮がそのまま生活コストの削減につながる典型的な例と言えるだろう。
「2回すすぎ」は合理的な選択なのか
調査によると、現在の洗濯習慣では「2回すすぎ」が40.5%で最も多く、「1回すすぎ」は33.6%だった。
しかし、なぜ2回すすぎを続けるのかを掘り下げると、意外な実態が見えてくる。 2回すすぎ派の56.5%が「洗剤が残ることへの不安」を抱えており、「汚れが落ちない不安」が33.0%、「においへの不安」が29.5%と続いた。つまり、多くの人は「科学的に必要だから」ではなく、「なんとなく安心だから」続けているのである。


環境問題や家計改善において、こうした無意識の習慣は少なくない。
例えば、
- 必要以上にエアコン温度を下げる
- 使っていない家電の待機電力を放置する
- 必要以上に包装された商品を選ぶ
といった行動も、実は思い込みや慣習によって続いているケースがある。
洗濯のすすぎ回数も同様で、「本当に必要か」を改めて見直す余地があることが今回の調査から見えてくる。
家計防衛と脱炭素を同時に実現する行動
サステナビリティの世界では、近年「コベネフィット(Co-benefit)」という考え方が注目されている。
ひとつの行動が複数のメリットを生み出すという考え方だ。
すすぎ回数を減らす行動には、
- 水使用量の削減
- 電力使用量の削減
- CO₂排出量の削減
- 水道料金の削減
- 電気料金の削減
- 洗濯時間の短縮
という複数の効果が期待できる。 特に近年は、節水や省エネを意識する理由として「地球環境」を挙げる人だけでなく、「家計を守りたい」という人が増えている。生活者にとって重要なのは、環境配慮か経済合理性かを選ぶことではない。環境配慮そのものが、結果として経済合理性につながる選択になっていることだ。
行動変容のカギは「安心できる根拠」
一方で、節約効果があるだけでは人は行動を変えないことも今回の調査は示している。
すすぎ回数を見直すきっかけとして最も多かった回答は、「1回すすぎでも問題ないことが科学的データで示されていること」(49.2%)だった。次いで「肌や安全性が保証されていること」が33.8%、「水道代・電気代が下がる実感」が31.1%となった。

つまり、人々が求めているのは単なる節約術ではない。「本当に大丈夫なのか」という不安を解消する信頼できる情報である。サステナビリティ施策が広がらない理由の多くは、コストや手間ではなく、安心材料の不足にある。企業や自治体が果たすべき役割は、環境メリットを訴求するだけでなく、生活者が納得して行動できる科学的根拠を示すことなのだろう。
サステナブルな行動は「節約の新常識」へ
今回の調査が示したのは、環境配慮がもはや特別な活動ではないということだ。
生活コストへの不安を抱える人が約9割に達する中、日々の洗濯習慣のような身近な行動の見直しが、家計改善と環境負荷低減を同時に実現する可能性を持っている。
サステナビリティは「地球のために我慢すること」ではない。むしろ、暮らしをより合理的で豊かにする選択肢である。
物価高が続く今だからこそ、「環境に良いことは、家計にも良いこと」という新しい常識が求められている。洗濯のすすぎ回数を見直すという小さなアクションは、その象徴的な一歩になるかもしれない。



