
NHKで放送中の大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」で、花魁・五代目瀬川(花の井)役を演じる小芝風花(27)。これまでの元気で素直なイメージとは異なり、気品と色気を兼ね備えた花魁役に挑戦し、女優として新たな一面を開花させた。
デイリースポーツによると、 小芝は「普段は色気があるとは口が裂けても言えないタイプ」と語りながらも、指先の動き、歩き方、視線の使い方にまでこだわり、徹底的な役作りを行ったという。特に、キセルの扱い方には苦労し、細部まで練習を重ねた。「タバコは吸いませんが、キセルでむせたらカッコ悪いので、ニコチンの入っていないタバコを使って練習しました」と明かし、リアリティを追求する姿勢を見せた。
花魁に求められたもの 「美しさ」と「品格」の融合
花魁とは、江戸時代の遊郭で最上位に立つ遊女のことを指す。しかし、彼女たちは単なる遊女ではなく、知性・教養・技芸に優れた女性であった。
江戸時代の文献によると、花魁には以下の要素が求められた(参考:『江戸吉原の遊女文化』(岩波書店)、『江戸文化事典』(東京堂出版))。
- 教養と知識
花魁は、漢詩や和歌、書道などを学び、客と対等に会話できる知識を持つことが求められた。 - 芸事の習得
三味線、唄、舞踊などの芸事に秀でていることが、高級遊女としてのステータスを示す要素だった。 - 美しい立ち居振る舞い
花魁道中では「外八文字」と呼ばれる独特の歩き方をし、優雅な所作で客を魅了した。 - 言葉遣いの上品さ
「ありんす言葉」と呼ばれる特有の言葉遣いを用い、他の遊女と差別化されていた。
こうした背景を踏まえ、小芝は花魁の所作を徹底的に学び直し、作品の中で表現している。
花魁の実態 華やかさの裏にある現実
一方で、花魁は単なる「美の象徴」ではなく、厳しい環境の中で生きた女性でもあった。
遊郭の女性は、幼少期に貧困家庭から売られるケースが多く、生活は厳しかった。『吉原細見』(江戸時代の吉原ガイドブック)によると、花魁になれるのはごく一部で、多くの遊女は若くして病に倒れたり、借金に苦しんだりしていた。
五代目瀬川は、史実にも名が残る花魁であるが、身請けされた後の詳細な記録は残っていない。小芝は「幸せだったと思いたい。どこにいても蔦重が元気にやっていると思っていたはず」と語るが、当時の女性たちが自由を得ることは難しかったことも事実だ。
日本女性の所作 国内外で評価される「静の美」
日本女性の所作は、国内だけでなく海外でも高く評価されている。特に、伝統芸能や日本文化を学ぶ外国人の間では、日本女性の仕草や立ち居振る舞いが「エレガントで洗練されている」と評されることが多い。
- 映画やドラマでの注目
『SAYURI』(2005)などのハリウッド映画では、日本の舞妓や芸者の所作が取り上げられ、西洋の観客に「神秘的な美しさ」として印象づけられた。一方で、一部の批評家からは「ハリウッドが作り上げた虚像」との指摘もあり、日本文化の正確な伝達が課題となっている。 - ビジネスシーンでの評価
日本企業の海外駐在員向けマナー講座では、「日本女性の立ち居振る舞いが礼儀正しく、控えめで上品」と評価されることが多い。お辞儀の仕方や静かな動作が「プロフェッショナルな印象を与える」との調査結果もある(出典:国際ビジネスマナー協会)。 - フェミニズムの視点からの批判
一方で、日本女性の「控えめな所作」が、伝統的なジェンダー観に基づいたものとして批判されることもある。欧米のフェミニズムの視点では「女性の自己表現を抑圧する要素」と見なされることがあり、日本文化と海外文化の間にギャップが存在することも事実だ(出典:『Gender and Japanese Society』(Oxford University Press))。
小芝風花が体現する日本女性の美しさ
小芝風花が演じる五代目瀬川は、単なる歴史上の人物ではなく、時代を超えて現代に通じる「日本女性の美しさ」を表現する存在ともいえる。
しかし、その美しさの裏には、女性たちが置かれていた厳しい社会的背景があったことも忘れてはならない。花魁文化の功罪を知ることで、現代の日本女性がどのようにその遺産を受け継ぎ、新たな価値観を生み出していくのかを考えるきっかけになるだろう。