
中東情勢が招いた供給危機の背景とメカニズム
2026年2月末以降のイラン関連軍事緊張により、ホルムズ海峡の船舶通航が大幅に制限された。日本は原油輸入の約9割を中東地域に依存しており、この影響でベースオイルやナフサの輸入が急減している。特に高性能エンジンオイルに不可欠なGroup IIIベースオイルの多くが中東産のため、世界的な逼迫が発生。ナフサは溶剤・塗料・プラスチックなどの原料として自動車整備の複数工程に関わるため、単一の品目不足ではなく連鎖的な影響を及ぼしている。
3月にはパニック買いにより石油製品の出荷量が前年比約3割増となり、在庫が急激に減少。政府は全体として必要な量を確保できていると説明するが、特定品目や地域での目詰まりが解消されにくい構造的な問題を抱えている。代替調達ルートの拡大や備蓄放出が進む一方で、添加剤・容器の同時逼迫も製造現場を圧迫しており、長期化すれば新車生産や物流にも波及する可能性が高い。
政府の最新対応策と石油業界への要請内容
資源エネルギー庁は4月17日、石油元売り約300社および関連団体に対し、潤滑油の安定供給を要請した。主な内容は前年同月並みの供給量を基本とし、3月の大量購入分については4月以降に調整を行うこと、インフラや重要需要家を優先し偏りを解消することなどである。
赤澤亮正経済産業相も「日本全体で必要な量は確保できている」と繰り返し強調している。さらに国家備蓄原油の第2弾放出を4月下旬に実施する方針で、約20日分程度の追加供給が見込まれる。国土交通省も4月7日にシンナー・オイル不足に関する相談窓口を全国11カ所に設置し、約50件の問い合わせに対応している。
これらの措置により完全枯渇は回避されているものの、現場への浸透には時間がかかるとの見方が強い。政府は引き続き需要抑制と代替輸入の推進を呼びかけている。
整備工場現場で広がる在庫不足と作業制限
全国の自動車整備工場では、4月上旬からエンジンオイルの入荷が停止または大幅制限される事例が急増している。特にディーゼル車用オイルの品薄が深刻で、一般利用者の交換作業を中止せざるを得ない工場が目立つ。在庫が残る場合も優先順位を関連事業者や緊急案件に絞る対応が広がり、定期点検の予約調整に追われる状況だ。
一部では「来週にも在庫がなくなる可能性がある」との危機感が共有されており、ギアオイルやアドブルーなどの関連資材も連動して不足。ディーラーでは新車納車時のオイル充填に影響が出始め、製造中の車両の引き渡し遅延も懸念されている。こうした中、ユーザーからは「GW前の点検をどうしよう」との相談が相次いでいる。
板金塗装業界の危機 全国調査で99.3パーセントが仕入れ制限
車体補修分野では塗料・シンナーの供給制限が特に深刻だ。全国の車体整備事業者306社を対象とした4月20日の緊急実態調査では、99.3パーセントが通常仕入れに制限を受け、97.7パーセントが生産性低下や売上減を実感していると回答した。
シンナー価格は1.5倍以上に高騰し、一部特殊洗浄作業は溶剤不足で不可能になるケースも発生。養生シートやマスキングテープなどの周辺資材も入荷難で、板金補修全体の工賃値上げが避けられない状況となっている。
現場からは「仕事にならない」「完全な死活問題だ」との声が寄せられ、事故修理の遅延が交通安全に影響を及ぼす恐れも指摘されている。塗料メーカーの小分け出荷や受注停止が相次ぎ、通常業務の維持が困難になっている実態が浮き彫りとなった。
ドライバーへの影響と今後の見通し・対応策
この供給不安は一般ドライバーの自動車生活に直結する。オイル交換や点検を予定する場合は、事前にディーラーや整備工場に在庫状況を確認することが不可欠だ。特に純正指定オイルや高性能グレードは品薄になりやすく、未加入の点検パック利用者は後回しになる可能性もある。
GW中の長距離移動では燃料残量に加え、オイル・冷却水のチェックを徹底したい。中東情勢の推移次第で5月以降も厳しい状況が続くリスクがあり、政府要請の効果と代替調達の進捗を注視する必要がある。ユーザーとしては必要最小限のメンテナンスを心がけ、過度な前倒し購入を避けることが流通の安定化に寄与するだろう。
自動車産業全体として、この令和オイルショックを教訓にサプライチェーンの強靭化が求められている。



