成蹊大学(東京都・武蔵野)と西武鉄道株式会社は、SDGsの11番目の項目「住み続けられるまちづくり」の実現を目指し、駅ナカ店舗の購買行動に関する産学共同研究を実施した。
この研究は、成蹊大学経済学部の永野護教授を中心に進められ、西武鉄道の41駅を対象とした消費者行動の特徴分析を通じ、地域社会と公共交通の役割についての新たな可能性を探ったものとのこと。
研究結果の概要
研究では、2023年1月から12月にかけて西武鉄道の41駅を対象に、乗降者数、店舗別売上データ、気象条件、競合店舗の数などを分析。その結果、以下の傾向が明らかになった。
1.西武線乗降者数と売上数量
● 駅構内店舗のうち、改札外店舗・改札内外店舗では、乗降者数の増加はほぼすべての商品売上に対しプラスに働く。
● 改札内店舗では、乗降者数の増加がもたらす売上数量への影響は、一部の商品に限られるが、その影響は改札外店舗・改札内外店舗よりも大きい。
2.価格ディスカウントと売上数量
● 駅構内店舗では、価格ディスカウントによる売上への影響は、乗降者数の増加に比べ効果が小さい。
● 改札内店舗、改札外店舗ともに、価格引き下げが売上増を生む商品は32品目中4~6品目である。
3.気象条件と売上数量
● 1℃の気温上昇は、32商品中、10品目ずつの商品に売上増加と減少の双方をもたらす。
● 1%の湿度上昇は、32商品中、21品目の売上数量が減少するが、売上増は3商品のみである。
4.駅周辺競合他店の影響
● 改札内店舗では、駅周辺競合他店数の増減が売上へ影響する商品数は3/32品目である。
● 改札外店舗、改札内外店舗では、 多くの商品が、駅周辺競合他店数の増減が売上へ影響する。
今回の研究は、SDGs11が掲げる「住み続けられるまちづくり」の目標に貢献する取り組みである。公共交通を中心とした地域の活性化や、都市生活の利便性向上が期待される。
産学連携による期待効果
永野教授は、今回の研究について「データ分析を基に駅ナカ店舗の効率的な運営を図ることで、地域経済の活性化と住民の利便性向上につなげたい」と語る。
乗降者数の変動に基づくマーケティング施策や、気象条件を考慮した商品戦略の立案が可能になり、駅を拠点とする商業エコシステムの発展が期待されている。また、公共交通を核とした持続可能な地域づくりが進むことで、都市住民の生活の質の向上や地域コミュニティの強化が図られると見られている。
成蹊大学と西武鉄道は、今後も研究成果を活用し、SDGsの達成に向けた取り組みを推進していく方針だ。
成蹊学園の概要
成蹊学園は1912年に創立され、小学校から大学院までを擁する総合学園である。その教育理念は「個性の尊重と他者との協調」に基づいており、少人数教育を重視した実践的な学びを提供している。
成蹊大学では、社会的課題の解決に向けた研究にも力を注いでおり、今回の産学連携もその一環。非常に面白い教育をしている学校のようだ。
実証研究の概要
標本 | 分析対象データ | |
---|---|---|
西武鉄道乗降者数 | 2023年1月1日~12月31日 | 41西武鉄道駅 |
駅構内店舗商品売上数量・売上単価 | 2023年1月1日~12月31日 | 32商品 |
気象条件(天候・平均気温・湿度) | 2023年1月1日~12月31日 | 出所:気象庁 |
西武鉄道駅所在地 平均所得データ | 2022年度 | 市区町村統計データ |
駅半径1キロメートル以内競合小売店舗 | 2023年1月1日~12月31日 | NAVITIMEより算定 |