
脊髄性筋萎縮症(SMA)でほぼ寝たきりの23歳YouTuberが、性欲処理を福祉として検討すべきだと投稿したところ、大規模な批判を浴びた。
投稿内容自体は短く抽象的だったが、過去の発言と結びつき「若い女性介護職に負担を押しつける」との解釈が広がり、障害者当事者からも反発が出ている。
SMAを患う23歳YouTuber・ネタケーとは
ネタケー氏(@netakee_)は、脊髄性筋萎縮症(SMA)を抱える大学心理学部出身の23歳YouTuberだ。
SMAは運動神経が徐々に障害され、筋力が低下していく進行性の難病で、発症時期や型によって重症度が異なる。
重度の場合、歩行はおろか上肢の運動も著しく制限され、呼吸や嚥下にも影響が出ることがある。
氏は幼少期から症状が進み、現在は指先をわずかに動かせる程度で、日常生活のほぼ全てを介護に依存している。
これまでXやYouTube、noteで「福祉のリアル」を発信し、Eテレ「バリバラ」にも出演した経験を持つ。
訪問介護事業所の設立を目標に掲げ、障害当事者の視点から情報を発信してきた人物だ。
YouTubeでは性事情や恋愛についても赤裸々に語る動画を公開しており、彼女募集の条件として20代前半を希望する内容なども過去に公開していた。今回の投稿はその延長線上にある。
一方で、重度障害のため自力で性的欲求を処理できない身体的制約は、氏個人の切実な悩みである点も事実だ。
炎上のきっかけとなった投稿
2026年10月15日頃、氏はXで次のような内容を投稿した。
「僕は難病で体が動かない。生きる上で必要な性欲も処理できない。朝起きると白い汚れがパンツに付いていることがある。そういった時は着替えも行ってもらわないとならない。
正直、生理現象であるが故に辛い。障害者も性欲はある。性処理も福祉の一つと捉える国もある。日本も検討すべきだと思う」。
投稿は短時間で数千万単位の閲覧を集め、引用や返信が急増した。
氏は後に複数回にわたり「介護士にやらせるつもりはなく、公費負担を求めているわけでもない。国として公的な位置付けが欲しいだけ」「排泄と同様に、したくてもできない事実を話しただけ」と説明している。
また「下心で話しているわけではない」とも弁明した。
ドイツなど一部の国で障害者の性に関する支援が議論されている点を踏まえた主張で、完全に根拠のないものではなかった。
批判が急拡大した具体的な理由
炎上の中心は、投稿の抽象性にあった。
多くの読者は「税金で介護士に性的行為をさせろ」という要求と受け止めた。
特に氏が過去に「同性介助より女性の方が力加減が良い」「若い介護士が増えてほしい」と発信していた点が結びつけられ、若い女性介護職への負担を連想させる声が相次いだ。
YouTubeでは彼女募集の条件として年齢制限を設けていた点も指摘され、性的な意図を疑う意見が広がった。
コミュニティノートでは、すでに一般社団法人ホワイトハンズなどが、脳性まひや神経難病・筋疾患の男性を対象とした有料の射精介助サービスを提供していることが指摘された。
これに対し「既存の民間サービスを無視している」「具体的な提案がない」「現場の負担を考慮していない」との批判が強まった。
一方で「去勢しろ」「薬で性欲を無くせ」といった議論を逸脱した中傷も多数寄せられ、氏はこれらを「人権や倫理観を損なう発言」と批判している。
抽象的な「当事者のリアル」が招いた誤解
氏は一貫して「障害者のリアルを伝えたい」と主張してきた。
しかし今回の投稿は、具体的な制度設計や他者への影響への言及が乏しく、個人の生理現象と社会的福祉を短絡的に結びつけた印象を与えた。
介護現場ではセクハラ対応がすでに負担になっている中で、「性処理を福祉に」という抽象的な提案は、現場の現実を軽視したとの指摘を招いた。
また、障害者全体を主語にした表現が「自分個人の欲求を障害者全体の問題にすり替えた」と受け取られ、共感よりも反発を生む結果となった。
表現の曖昧さが、意図と異なる解釈を広げた典型例と言える。
氏自身も後に「建設的な表現や発信方法がなかった」と認めている。
一方で、重度障害による性的な困難を公に語ること自体は、これまでタブー視されがちだった領域を可視化した側面もある。
障害者当事者からの反発と本人の対応
批判は健常者だけでなく、他の障害者からも出ている。
YouTubeの説明動画では「自分も身体障害者だが、同じ括りにされたくない」「肩身を狭くしないでほしい」「主語を大きくするな」「発言した言葉に責任を持ってほしい」といったコメントが複数寄せられた。
X上でも「個人の性的な悩みを福祉全体の課題として押し出さないでほしい」との声が見られた。
氏は10月18日、YouTubeで経緯を説明した動画を公開した。
体調不良中の判断ミスだったと謝罪し、若い介護士に性的行為を求めたわけではないと否定した上で、SNS投稿を一時休止すると表明した。
動画では「去勢しろ」などの発言を「優生思想的でつらい」と語りつつ、「性欲は人間の三大欲求の一つであり、尊厳に関わる」という主張自体は維持している。
投稿再開時期については明言していない。
批判の多くは表現の稚拙さに向けられたものだが、障害当事者が性の問題を提起すること自体を否定する声も混在していた。
この一件は、障害者の性に関する課題をどう議論するかという問題を浮き彫りにした一方で、抽象的な発信が当事者間の対立を招きやすいことを示した事例となった。



