ログイン
ログイン
会員登録
会員登録
お問合せ
お問合せ
MENU

法人のサステナビリティ情報を紹介するWEBメディア coki

STARTO社、総務省に反旗 チケット転売裁判の相手側が有識者会議を仕切る異常

コラム&ニュース コラム ニュース
リンクをコピー
STARTO社声明
画像:STARTO社X

旧ジャニーズ事務所のタレントが所属する芸能プロダクション、株式会社STARTO ENTERTAINMENT(以下、STARTO社)が、国に対して異例の”物言い”をつけた。舞台は、チケット転売ヤーの身元を暴くための「発信者情報開示制度」を話し合う、総務省の有識者会議。

その会議を取り仕切る主査が、STARTO社が裁判で争っている転売サイト側に味方する意見書を書いていた人物だったというのだ。「これでは公平とは言えないのではないか」。転売と戦い続けてきた事務所が、ついに制度を作る側へと矛先を向けた。

 

転売ヤーと戦ってきた事務所が、今度は国の会議に噛みついた

STARTO社が公式X(@STARTO_legal)で声明を出したのは、2026年10月9日の午後2時だった。代表取締役CEOの鈴木滝太氏の名前で、関連会社のヤング・コミュニケーション(以下、YC社)との連名になっている。

この会社、チケットの高額転売に対しては、芸能界でも指折りのガチ勢だ。弁護士ドットコムニュースによると、STARTO社は2024年9月、大手転売サイト「チケット流通センター」の運営会社に対して、怪しい出品299件について「誰が出品したのか身元を教えろ」と迫る発信者情報開示請求に踏み切っている。その後も相手を変えながら裁判を重ね、転売ヤーを一人ひとり特定して責任を追及する姿勢を崩していない。ファンが定価で取れないチケットを、高値で売りさばく連中を許さない——その執念は、同社の看板のひとつになっていた。

だからこそ今回の声明は重い。発信者情報開示という武器の使い勝手を左右する会議の行方に、STARTO社は誰よりも敏感だ。その会議の進め方がおかしいと、当の企業が声を上げたのである。

 

「裁判の相手に味方した人」が、会議の議長席に座っていた

STARTO社が「おかしい」と訴えているのは、総務省が令和8年6月から開いている発信者情報開示ワーキンググループ(以下、WG)の運営体制だ。

同社の説明はこうだ。このWGで議長役である「主査」を務める研究者が、じつはSTARTO社の裁判相手である「チケット流通センター」運営会社から頼まれて、「転売出品者の身元を開示すべきではない」という趣旨の意見書を裁判所に出していた。つまり、STARTO社から見れば”敵側に雇われた専門家”だ。その人物が、会議の初回でいきなり、意見書と同じ主張を持ち出してきたというのである。

では、その主査とは誰か。総務省が公開している第1回会合の議事録を見ると、WGの主査は憲法が専門の京都大学大学院・曽我部真裕氏であることが分かる。曽我部氏は、インターネット上の法律問題を長年研究し、2020年の総務省の研究会でも取りまとめ役を務めてきた、この分野の第一人者だ。経歴だけ見れば、まさに適任といえる人選である。

問題は、その適任であるはずの人物が、片方の当事者の味方として意見書を書いていた、という一点に尽きる。しかもこの主査、ただの参加者ではない。会議をいつ開くか、何を話し合うか、結論をどうまとめるか——その舵を握る立場にある。STARTO社は、裁判の相手に有利な話を、よりによってその運営者自身が議題に乗せて取りまとめていくなら、「行政の公平・中立性を揺るがす重大な事態になりうる」と危機感をあらわにした。要は、審判が片方のチームのユニフォームを着て笛を吹いているようなものだ、という訴えである。

 

しかも途中から”非公開”——見えない場所で何が話されているのか

STARTO社は、言うべきところは抑えてもいる。声明では、WGが制度の課題を話し合うこと自体は「現在の制度をより良くするために重要」と認め、研究者がどんな考えを持とうが、それは学問の自由であって自由なのは当然だ、とも明言している。叩いているのは個人の思想ではなく、あくまで会議の回し方だ。

それでも同社の不信を加速させているとみられるのが、議論が途中から見えなくなっている点だ。総務省の資料によると、このWGは第6回(令和8年9月7日開催)以降、会合を非公開にしている。裁判の相手に有利になりかねない話が、外から様子をうかがえない密室で進んでいる——そう映れば、警戒するなというほうが無理がある。STARTO社は最後に、制度の検討を公平・中立に進めてほしいと「切に望む」と結んだ。

 

リプ欄は閉鎖、それでも反応は爆発

この声明、中身の鋭さ以上に注目されたのが見せ方だった。投稿は一部のアカウントしか返信できない設定になっており、リプライ欄は実質的に閉じられている。それでも反応は止まらず、公開から数時間で表示回数は55万件を突破。リポストは1500件超、いいねは3900件超に膨らんだ。あえて言い合いの場を作らず、文書そのものを冷静に読んでほしい——そんな狙いが透けて見える。

転売対策をめぐるSTARTO社の動きには、これまでファンの拍手が付きものだった。J-CASTニュースによると、2024年に同社が初めて開示請求を公表したときも、こんな取り組みは異例だとしてファンから歓迎の声が相次いだという。チケットがいつも転売ヤーに持っていかれる悔しさを知る人にとって、事務所が本気で立ち向かう姿は、まさに溜飲が下がるものだった。

今回の声明も、その流れで受け止められそうだ。ただ、話が「会議の運営体制」や「研究者の中立性」といった込み入った領域に入るぶん、ファンの直感的な応援と、「本当に主査の関与はルール違反なのか」という冷静な議論とは、きれいに重なるとは限らない。専門家が特定の立場で意見書を書くこと自体はよくある話で、どこまでが許されるお仕事で、どこからが”身びいき”になるのか。その線引きは、プロの間でも割れうるテーマだ。

 

一番こわいのは、制度そのものが信じられなくなること

発信者情報開示制度は、匿名をいいことに人を傷つけたり、ルールを破ったりする相手に立ち向かうための大事な仕組みだ。だからこそ、それを見直す会議の公正さが疑われる事態は、制度への信頼そのものにヒビを入れかねない。

STARTO社が真正面から異議を唱えたことで、ボールは総務省側に渡った。どう説明するのか、会議の進め方に手を入れるのか——世間の視線はそこに集まる。転売を本気でなくそうとする企業と、ルールを作る行政。その間に走った今回の緊張は、ネット上の権利を守る仕組みづくりが、いかに薄氷のような中立性の上に成り立っているかを、私たちに突きつけている。

Tags

ライター:

新聞社で記者としてのキャリアをスタートし、政治、経済、社会問題を中心に取材・執筆を担当。その後、フリーランスとして独立し、政治、経済、社会に加え、トレンドやカルチャーなど多岐にわたるテーマで記事を執筆

関連記事

タグ

To Top