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四国電力送配電19歳社員、遺書に「死んどけ」 パワハラ対策はなぜ本人の「相談頼み」になるのか

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四国電力送配電
DALLーEで作成

徳島県上勝町で9月9日、四国電力送配電徳島支社の19歳の男性社員が、送電鉄塔の点検中に高さ約40メートルから転落し、死亡した。男性は今年4月に入社したばかりで、所持品から見つかった遺書には、先輩社員から「仕事できん」「頭悪い」「死んどけ」などと言われたとの記述が残されていた。

入社からわずか5カ月の社員が、なぜ職場への訴えを遺書に残すことになったのか。会社が公表している制度と男性が置かれていた状況をたどると、企業のパワハラ対策が抱える課題が見えてくる。

 

遺書に先輩の実名、「死んどけ」と書き残した19歳

遺族が明らかにした遺書には、先輩社員の個人名とともに、仕事ぶりや能力を否定する言葉を受けていたとの記述があった。「仕事できん」「頭悪い」「死んどけ」。飲み会では、アレルギーがある食べ物をほぼ強制的に食べさせられ、体調に異変が出たという内容も記されている。

遺族は四国電力送配電に要望書を提出し、同社はパワーハラスメントの有無を含めて事実関係を調べている。男性は4月に入社し、研修を経て8月に現場へ配属された。

死亡したのは9月9日。社会人になって約5カ月、配属先で働き始めて約1カ月という時期だった。この短い在籍期間は、今回の問題を考えるうえで大きな意味を持つ。

 

相談窓口もトレーナーも用意されていた

四国電力グループは以前から、コンプライアンス相談窓口やハラスメント相談・苦情窓口を設置している。四国電力送配電にも社内と社外の相談窓口があり、社内は総務部法務グループ、社外は法律事務所が担当する。さらに、新入社員一人ひとりに先輩社員がつく「トレーナー制度」もある。採用サイトでは、仕事の指導に加え、職場でのコミュニケーションや「日々の困りごと」まで相談できる制度と説明している。

つまり、男性の周囲には正式な相談窓口と、日常的に新人を支える仕組みの両方が用意されていたことになる。遺書に書かれた言動が事実だった場合、会社が調べる必要があるのは発言そのものだけではない。本人から相談があったのか、トレーナーや上司が変化を把握していたのか、周囲に問題を認識していた社員がいたのか。制度が実際の職場でどう動いていたかまで検証しなければ、同じ仕組みを残しても再発防止にはつながりにくい。

 

社内も社外も相談は「原則、文書の郵送」

四国電力送配電の公式サイトによると、社内のコンプライアンス相談窓口への相談は「原則として、文書の郵送に限ります」とされている。社外の法律事務所への相談も原則郵送だ。一方、親会社の四国電力ではインターネットの相談フォーム、専用電話、FAX、郵送を利用できる。同じグループでも相談までの手続きには違いがある。

郵送という方法だけで制度の良し悪しは決まらないが、相談制度には一つの前提がある。困っている本人が問題を認識し、相談先を調べ、起きたことを整理して会社へ伝えることだ。四国電力送配電の場合は文書を作成して送る手続きも加わる。問題を受けている社員自身に、「会社へ問題を届ける」という行動が求められる仕組みになっている。

 

支援が必要な新人ほど声を上げにくい

男性は入社から約5カ月だった。会社の人間関係や仕事の進め方を学んでいる途中で、現場配属からも約1カ月しかたっていない。技術職では先輩から仕事を教わり、分からないことを尋ねながら経験を積む。仕事を覚えることと、先輩との関係を切り離しにくい時期でもある。

そこで能力を否定するような言葉を受けたとき、新人自身が「指導の範囲を超えている」と判断し、会社の正式な窓口へ申し出るには高いハードルがある。支援を必要とする立場にいる社員ほど、自分から支援を求めることが難しくなる。この矛盾を埋める役割を期待されるのが、トレーナーや直属の上司、人事など本人の近くにいる側だ。相談を受けるだけでなく、本人が言葉にする前の変化を拾えるかで制度の意味は大きく変わる。

 

「研修受講率100%」では測れないもの

四国電力は2025年度、全従業員を対象としたコンプライアンスeラーニングの受講率が100%だったと公表している。人権教育も毎年実施し、新入社員教育でも人権に関する知識や事例を扱っている。企業としてルールを伝える機会は設けられていた。

一方、100%という数字が示すのは全員が研修を受講したという事実までだ。社員の言動が変わったことや、ハラスメントを早期に発見できるようになったことまでは示していない。企業のコンプライアンス対策では研修回数や受講率を成果として示しやすいが、本来問われるのは研修後の職場で何が変わったかだ。遺書に記された発言が調査で確認されれば、受講率100%と実際の職場との隔たりを検証する必要が出てくる。

 

パワハラを経験した人は約5人に1人

本人が声を上げる難しさは、一企業だけの問題として片付けられない。企業には法律によってパワハラ防止措置が義務付けられ、相談体制の整備、事実確認、被害者への配慮、再発防止などが求められている。それでも厚生労働省が2024年に公表した調査では、過去3年間に勤務先でパワハラを受けたと回答した労働者は19.3%。およそ5人に1人だった。

2023年度に都道府県労働局へ寄せられたパワーハラスメントに関する相談も6万53件で、前年度の4万6149件から約3割増えた。法律、相談窓口、社内研修という仕組みが広がっても、職場で問題を感じる人は残っている。

企業の対策を「制度を導入したか」で評価する段階から、実際に問題を防ぎ、早く発見できたかで評価する段階へ移す必要がある。

 

「相談を待つ会社」では拾えない声

多くのハラスメント対策は、問題を感じた本人が相談し、その後に会社が事実確認や対応を始める流れで設計されている。相談窓口を整え、秘密を守り、適切に調査することは欠かせない。

その一方で、最初の一歩を本人に委ねる限り、声を上げられない社員は制度の外に残る。

新人にはトレーナーとの定期的な面談、直属上司を介さない人事との面談、匿名で職場の状況を伝えられる仕組みなど、会社側から異変を拾う方法もある。相談件数が少ないことを「問題が少ない」と受け取るのではなく、相談に至らなかった社員の状態まで把握する。本人からの申告を待つ仕組みから、職場側が変化を発見する仕組みへ広げられるかが、ハラスメント対策の実効性を左右する。

 

19歳の遺書が突きつけた「制度と現場」の距離

四国電力送配電には社内と社外の相談窓口があり、新人にはトレーナーがつく。グループでは人権教育を実施し、コンプライアンス研修の受講率も100%だった。企業が一般的に用意するハラスメント対策の多くがそろっていた。

だが、19歳の社員は職場で受けたとする具体的な言葉を遺書に残した。

会社の調査では、発言の事実確認とともに、本人への相談制度の周知、トレーナーによるフォロー、上司や同僚の認識なども検証する必要がある。相談窓口を作り、研修を実施するだけで社員を守れるとは限らない。

声を上げられない社員の変化を会社が先に拾えるか。今回の問題は、企業のパワハラ対策を「制度の有無」から「制度の実効性」へ問い直すケースになっている。

 

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ライター:

Webライター。きれいごとだけでは済まない現実を、少し距離を置いて綴っています。

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