
千本鳥居で知られる人気観光地で、神聖な神域が傷つけられる事態にネット上では強い批判が集まっている。インバウンド急増の影響が浮き彫りになった。
伏見稲荷大社周辺の落書き被害
京都市伏見区の伏見稲荷大社近くの竹林では、2026年1月時点で周辺私有地だけで100本以上の竹に落書きが確認されている。被害はアルファベットの名前、イニシャル、日付、ハートマーク、中国語や韓国語とみられる文字などが深く刻まれるケースだ。
ナイフや鍵、コインなどの鋭利な物で彫られるため、竹は再生せず枯死や伐採を余儀なくされる。
5月17日頃に投稿された動画では、外国人男性が参道近くの竹にカッターなどで名前を刻む様子が映されており、大きな反響を呼んだ。この行為は私有地や境内寄りの竹林で繰り返され、所有者らは心に刻んでほしいと訴えている。
被害はコロナ禍明けのインバウンド急増とともに顕在化し、景観の永久的な損失を招いている。
伏見稲荷大社の公式声明
伏見稲荷大社は2026年5月19日、公式サイトに2つのトピックスを掲載した。
1つ目は境内における落書き行為についてで、SNS拡散の動画を念頭に境内は神聖な神域であり祈りの場。落書きは他の参拝者の迷惑となり景観を損なうと指摘。大社禁止事項に抵触する行為としてマナー遵守を呼びかけた。
2つ目は伏見稲荷大社からのお願いとして、711年の鎮座以来の神域を守るため立ち入り禁止区域への侵入や鳥居・樹木を傷つける行為などを挙げ、発見時は注意・退去を求める内容だ。
大社は参拝者への注意喚起を強化している。
類似する外国人観光客による落書き事案
伏見稲荷の被害は京都・嵐山の竹林の小径と類似する。嵐山では2025年秋に市有地約7000本のうち約350本以上に落書きが確認され、京都市が一部伐採を実施した。
アルファベットやハート、日付が主で、観光客の手が届かない高さへの調整を試みたが、被害は続いている。
過去には唐招提寺の柱に名前を刻んだカナダ人少年の事例や、春日大社などの文化財被害も報告されている。共通するのはSNS映えを目的とした外国人観光客の行為で、日本人による被害は極めて少ない。
京都市は多言語ポスターや罰金明記の文書を作成し、海外拠点を通じて注意喚起を続けている。
なぜ外国人観光客が落書きをするのか
取材で多くの観光客は自分の国では問題ない、なぜダメかと答える。
文化の違いが背景にあり、一部地域では観光地に名前を残す行為が記念の表現とされる。
SNS投稿のための自己顕示欲も強く、すでに落書きがある竹を見ると連鎖的に広がる傾向がある。
観光客心理として非日常の脱抑制が働き、長期的な被害を想像しないケースが多い。
直撃取材では悪びれず行為を続ける姿も見られ、無知と無配慮が重なる結果だと指摘されている。
所有者らは思い出は心に刻んでと願うが、根本解決には敬意ある観光の啓発が必要だ。
竹林所有者の切実な声と対策の限界
私有地中心の被害が多い伏見稲荷周辺では、土地所有者らの負担が深刻化している。
所有者の一人は先祖代々受け継いできた土地の竹が傷つけられ困ったものだと語り、柵を設置しても乗り越えて落書きされるケースがあると明かした。
竹は一度傷がつくと再生せず、伐採するしか対応策がないため、体力的にも限界を感じているという。別の管理者も悪質で竹がかわいそうと憤りを隠さない。
京都市は多言語ポスターで器物損壊罪を警告するが、私有地が多いため行政の一律対策が難しく、監視カメラの設置や入場制限の検討が課題となっている。
所有者らは静かにお参りしてほしいと願い、インバウンド増加の中で美しい景観と神域を守るための抜本的なルール作りが必要だと指摘している。



