
株式会社MIXIが運営する大人気スマートフォン向けゲームアプリ「モンスターストライク(通称:モンスト)」の公式Xアカウントにおいて、5日、不適切な表現を含む投稿が行われ、直後に削除および謝罪が行われる事態となった。
ユーザーとのコミュニケーションを深めるはずのSNS施策が、なぜ批判を浴びる結果となってしまったのか。本稿では、事連の経緯を振り返りつつ、現代の企業広報に求められるSNS運用の境界線について考察する。
発端は「マルチ抽選会」の性格診断、「変態」など煽り文句に批判殺到
事の発端は、同日昼頃にモンスト公式Xアカウントから投稿された、「みんなで応募!マルチ抽選会」に関連するポストである。投稿には「みなさんはどのキャラに応募しますか? 気になるキャラがいる画像をタップ!」という文言とともに、複数のキャラクターが描かれた画像が添付されていた。
一見すると、ゲーム内のイベントを盛り上げるための一般的なプロモーション投稿である。しかし、画像をタップして表示される詳細な文面に、一部のユーザーを不快にさせる表現が含まれていた。
X上でのユーザーの証言や保存された画像によると、この投稿は選んだキャラクターに応じて、ユーザーの性格や行動傾向を診断するような内容となっていた。例えば、「ゾディアック」というキャラクターを選んだユーザーに対しては、「『限定感』にめちゃくちゃ弱いタイプ。普段は冷静なのに、『今しかない』って言われると急にソワソワし始める」といった、ややユーザーを揶揄するようなテキストが表示された。「リンネ」を選んだ場合には、「定番を好む人。ネットショッピングで『ベストセラー』の帯がついている商品しか購入しないタイプ」と診断されていた。
ここまでは「よくあるSNS上の性格診断コンテンツ」として許容される範囲だったかもしれない。しかし、問題視されたのはその他のキャラクターにおける表現である。「久坂玄瑞」を選んだユーザーに対しては「変態(いい意味で)」、「佐久間象山・岡田以蔵」を選んだユーザーに対しては「変態(褒め言葉)」と、明確にネガティブなニュアンスを持つ単語が使用されていたのだ。
「いい意味で」「褒め言葉」というエクスキューズが添えられていたとはいえ、自らが好んで選んだキャラクターに対して「変態」というレッテルを貼られたことに、多くのユーザーが反発したことは想像に難くない。
迅速な削除と謝罪も、ユーザーからは「SNS担当を変えるべき」と厳しい声
事態を重く見た株式会社MIXIの運用担当者は、当該投稿を迅速に削除した。その後、同日午後0時27分に「先程の投稿において、不適切かつ配慮を欠く表現が含まれておりましたため、当該投稿を削除いたしました。本件により、ご不快な思いをされた皆様に心より深くお詫び申し上げます。誠に申し訳ございません」という謝罪文をポストした。
迅速な初期対応自体は評価されるべきかもしれない。しかし、一度インターネット上に放たれた情報は、そう簡単には消え去らない。謝罪投稿の引用リポストや返信欄には、ユーザーからの様々な声が殺到した。
X上の反応を確認すると、「最近のSNS担当は何様なのか」「SNS担当を真面目な人に変えた方が良い」といった、公式アカウントの運用体制そのものに対する厳しい意見が目立つ。「マジで広報を別の人に変えた方がいい」と、担当者の交代を直訴する声まで上がっている。
一方で、「個人的には、ただの冗談で終わる話だと思う」「ネタに走りすぎると一線を超えることもあるから気をつけたい」と、今回の事態を悪ふざけの度を越した結果と冷静に分析しつつ、一定の理解を示すような声も見受けられた。親しみやすさを演出するためのネタ投稿が、受け手によっては不適切かつ配慮を欠く表現として受け取られてしまうという、SNSコミュニケーション特有の難しさが浮き彫りになった形だ。
企業のSNS運用に求められる「ネタ」と「不適切」の境界線
今回のモンスト公式アカウントによる騒動は、決して株式会社MIXIだけの問題ではない。昨今、多くの企業が公式SNSアカウントを運用し、あえて企業らしさ(堅苦しさ)を崩した、親しみやすいコミュニケーション手法を採用している。ユーザーとの距離を縮め、エンゲージメントを高める上で、ある程度のユーモアや時事ネタの取り込みは有効な手段とされているからだ。
しかし、その「親しみやすさ」は、常に「馴れ馴れしさ」や「無神経さ」と隣り合わせの危険性を孕んでいる。企業側が「ちょっとした冗談」「ネットスラングの活用」のつもりで発信した言葉が、顧客にとっては「煽り」や「不快な表現」として受け取られるケースは後を絶たない。
特に、「変態」という言葉は、仲間内のクローズドな空間であれば、一種の愛情表現や突き抜けた熱量を示す褒め言葉として通用する場面もあるだろう。しかし、何百万という不特定多数のユーザーが目にする、日本を代表する巨大IPの公式アカウントが発する言葉としては、明らかに適切さを欠いていたと言わざるを得ない。
企業広報におけるSNS運用の難しさは、ターゲット層の多様化にも起因している。モンスターストライクのように幅広い年齢層に支持されるタイトルであればあるほど、発信される情報の受け取り方は千差万別となる。「この程度の表現なら許容されるだろう」という内輪の論理や、一部のネットカルチャーにおける文脈に過度に依存することは、炎上のリスクを著しく高める結果となる。
MIXI「モンスト」が今後取り組むべき信頼回復への道
今回の事態を受け、株式会社MIXIのSNS運用チームには、情報発信におけるチェック体制の抜本的な見直しが求められるだろう。ユーモアを交えた企画を立案すること自体は否定されるべきではないが、それがユーザーの感情を害する可能性がないか、多角的な視点からの客観的なレビューが不可欠である。
「モンスターストライク」は、長年にわたり多くのファンに愛され、独自のコミュニティを形成してきた稀有なコンテンツである。それゆえに、公式からの情報発信には、単なるゲームの広報を超えた、コミュニティの空気を形成する強い影響力がある。
ユーザーからの厳しい声は、同タイトルへの愛情の裏返しでもある。「SNS担当を変えろ」という直情的な批判に単に萎縮するのではなく、なぜユーザーが怒り、失望したのかを深く分析することが肝要だ。
親しみやすさとは、決してユーザーをイジったり、見下したりすることではない。ユーザーのプレイスタイルやキャラクターへの愛情を尊重し、同じ目線でゲームを楽しむ姿勢こそが、真のエンゲージメントを生み出すはずだ。今回の痛ましい自爆を教訓とし、MIXIがどのようにユーザーとの信頼関係を再構築していくのか。今後の同社の広報姿勢、そしてSNS上での振る舞いを、多くのファンが注視している。



