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なぜ『OVER THE SUN』は5000人規模イベントを成功させるのか?ジェーン・スーと堀井美香が作った“おばさんたちの居場所”

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TBSラジオ公式HP『ジェーン・スーと堀井美香の「OVER THE SUN」』より引用

ジェーン・スーと堀井美香による人気ポッドキャスト『OVER THE SUN』。なぜ40代・50代女性を中心に熱狂的な支持を集めるのか。3年連続開催決定の人気イベント大運動会や番組の魅力から、その人気の理由を考察する。

中年女性の雑談番組が5000人規模の会場を埋める異例の人気

「中年女性2人がおしゃべりする雑談ポッドキャストが、5000人規模のアリーナを埋める」
数年前なら、そんな話を信じる人は少なかったかもしれない。
しかし今、それを現実にしているのがジェーン・スー氏と堀井美香氏によるポッドキャスト番組『OVER THE SUN』だ。

2024年・2025年には約5000人を収容するアリーナ会場、横浜BUNTAIを貸し切り、『緑のオーバーザサン 安全第一 私たちの大運動会』を2年連続で開催。全国からリスナーが集まり、大人たちが本気で走り、本気で笑い、本気で盛り上がる人気イベントとなっている。
さらに今年2026年も『緑のオーバーザサン 安全第一 私たちの大運動会2026』の開催が8月29日に開催決定。

もはや人気ポッドキャストという枠を超え、一つの文化現象になりつつある。
ではなぜ、『OVER THE SUN』はここまで支持されているのだろうか。

 

番組終了が生んだ“奇跡のスピンオフ”

そもそもジェーン・スー氏と堀井美香氏の二人のコンビは、TBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』から生まれた。
しかし番組改編により金曜日の放送は終了。
ジェーン・スー氏は引き続き月曜〜木曜日の『生活は踊る』に出演するものの、堀井美香氏とのコンビは一度解散することになった。

ところが、この別れが思わぬ化学反応を生む。
ポッドキャストで始まった『OVER THE SUN』である。
結果として、TBSラジオでは収まりきらなかった二人の魅力が一気に開花した。

 

真面目な人生相談よりも求められていたもの

『生活は踊る』での二人は頼れる相談相手だった。
一方、『OVER THE SUN』の二人は完全に友達である。

健康診断、老眼、更年期、親の介護、体力の衰え……。
若い頃にはなかった身体や人生の変化、そんな話を延々としゃべっている。

しかも特別な成功談ではない。
キラキラした話でもない。
失敗談や愚痴も多い。
それなのに面白い。むしろ、それだからこそ面白い。

リスナーが聞いているのは情報ではない。
「わかる」「私も同じ」という共感なのだ。

 

「OVER THE SUN」に込められた意味

番組タイトルの『OVER THE SUN』(オーバーザサン)には、ジェーン・スー氏と堀井美香氏らしい遊び心と優しさが込められている。

「太陽(SUN)の向こう側へ」。
人生には楽しいこともあれば、しんどいこともある。
仕事、家事、育児、介護、病気、人間関係など、時に照りつける太陽のような厳しい現実を、リスナーとともに乗り越え、その先へ進んでいこうという意味がある。

そしてもうひとつ。
『OVER THE SUN』を略して発音すると「オヴァサン」。
つまり「おばさん」であり、ダブルミーニングになっているのだ。

リスナーは「互助会員」と呼ばれ、投稿者のラジオネームは「おばさんネーム」と呼ばれる。
年齢を重ねることを隠すのではなく、むしろ楽しむ。
そんな番組の思想が、タイトルそのものに詰まっているのだ。

 

「人生相談」ではないおしゃべりが心地よい、しかし最初は良さが分からなかった

『生活は踊る』の人気コーナー『相談は踊る』では、二人はリスナーの悩みに真摯に向き合い、多くの人を励ましてきた。
しかし『OVER THE SUN』で聞けるのは、人生相談ではない。
日常のどうでもいい出来事で、同世代の友人同士が延々としゃべっているような内容だ。
そして、それが面白い。

今でこそ大ファンの筆者だが、実は初めて『OVER THE SUN』を聴いた時は正直物足りなさを感じていた。
「雑談」といえば、ジェーン・スー氏と桜林直子氏による『となりの雑談』という人気ポッドキャストもある。
あちらは雑談のようでいて発散的思考やブレインストーミングの要素があり、人生を生きるヒントや考え方のきっかけ、アイデアの種が転がっている。

そのため最初は、『OVER THE SUN』を聴いて「これは雑談ですらない、ただのおしゃべりじゃないか」と感じてしまった。
失礼な感想で大変申し訳ないのだが、正直そう思った。
しかし今なら分かる。
その“ただのおしゃべり”こそが、この番組最大の魅力なのだ。

 

タイパ時代だからこそ必要なおばさんの休憩所。こういうの”が”いいんだよ

昨今の私たちは、あまりにも効率を求められすぎていやしないだろうか。
動画は倍速再生。
飲食店は事前に口コミ確認。
映画もドラマもレビューを見てから判断。
つまらない作品は「1話切り」。
AIのレコメンドに従い、最短ルートで情報を消費していく。

そんな「タイパ」「コスパ」に追われる社会の中で、『OVER THE SUN』は異質な存在だ。
役に立つ知識が得られるわけでもない時も多い。
投資術も教えてくれない。
人生が劇的に好転するノウハウもない。
それでも毎週聴いてしまう。
なぜなら、この番組は効率化された社会の中の「休憩所」だからだ。

ネットには、素朴な手料理やベタな展開などに対して、安心と信頼を込めた「こういうのでいいんだよ」という有名な言い回しがある。
『OVER THE SUN』もまさに「こういうのでいいんだよ」であり、むしろ「こういうの”が”いいんだよ」なのだ。

効率も成果も求めない。
ただ笑って、ただ喋って、ただ一緒に年を重ねていく。
そんな時間を求めている人が、思っている以上にたくさんいたのである。

 

「よくぞよくぞ金曜日までたどり着きました」

『OVER THE SUN』は毎回こんな言葉から始まる。

「みなさま今週も、よくぞよくぞ金曜日までたどり着きました。」

たった一言だ。
だが、この言葉を待っているリスナーは多い。
筆者はこの言葉を聞くたびに思う。

「スーさ〜ん!美香さ〜ん!私も今週、頑張ったよ!リスナーのみなさんも本当にお疲れ様!!」

仕事、家事、育児、介護、人間関係。
誰もがそれぞれの一週間を生き抜いている。
その全てをひっくるめて「よく頑張ったね」と言ってもらえるような感覚になるのだ。
極端な話、この言葉を聞くために一週間頑張っていると言っても過言ではない。

 

「オ万博」構想にも期待

『OVER THE SUN』の魅力は、大運動会だけでは終わらない。
番組内では以前から、「おばさんが喜ぶ物産展」を意味する『オ万博(おばんぱく)』構想も語られている。
全国各地のおいしいもの、便利な生活雑貨、おばさんたちが本気で楽しめる催し。

まだ構想段階ではあるが、互助会員としてはぜひ実現してほしい企画のひとつだ。
大運動会で5000人規模を集める番組である。
もし本当に開催されたなら、多くの会員たちが全国から集まる光景が見られるかもしれない。

『OVER THE SUN』は“おばさん文化”を解放した

この番組の本質は、おばさんを肯定したことにある。
日本社会では長らく、女性は年齢を重ねるほど肩身が狭くなる空気があった。
若さ、美しさ、キャリア、家庭……。常に何かを求められ続ける。

だが『OVER THE SUN』では違う。
老眼になってもいい。
疲れやすくなってもいい。
失敗してもいい。
思い通りにならなくてもいい。
それでも人生は続く、そして案外楽しい。
そんなメッセージを、説教ではなく笑いと雑談で伝えている。

だからリスナーは救われる。
頑張れとも言われない。
意識を高く持てとも言われない。
ただ、「みんなで楽しく歳を取ろう」というメッセージだけがある。

 

「おばさんパワー」はまだまだ大きくなる

『OVER THE SUN』のリスナーは自らを「おばさん」と呼び、笑い合う。
だが、そのエネルギーは決して小さくない。
イベント会場を埋め、グッズを買い、”互助会員”同士でつながり、交流を持つ人もいる。

ジェーン・スー氏と堀井美香氏が作ったのは、人気ポッドキャストではない。
年齢を重ねることを楽しむためのコミュニティだ。
若さだけが価値ではない。人生はまだまだ面白い。
そんな空気を日本中に広げている。

2026年もまた、全国から集まった”互助会員”たちが緑の服を着て笑い合うだろう。
『OVER THE SUN』はこれからも、「よくぞ今週を生き抜いた人たち」の居場所であり続けるはずだ。

 

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