Indeed Japan株式会社(本社:東京都港区、代表取締役:大八木 紘之、以下Indeed)では、SDGsの目標5「ジェンダー平等を実現しよう」に着目し、日本、フィンランド、アメリカの3ヵ国で「仕事とジェンダー」に対する調査を行っています。「ジェンダーギャップ指数2021」において日本は世界156ヶ国中120位に比べ、フィンランドは2位、アメリカは30位です。それぞれの国でどのようにジェンダーギャップは異なるのでしょうか?
調査主体:Indeed Japan株式会社
Indeed Japan「仕事とジェンダー」に関する3ヵ国比較調査
調査対象:日本、フィンランド、アメリカで現在就業中の20~40代の男女900人
割付方法:各国均等割付(300名ずつ)の上、性別・15歳以下の子供の有無で均等割付(150名ずつ)して実施
調査方法:インターネット調査
調査期間:2021年9月13日~9月21日
日本・フィンランド・アメリカのいずれの国の女性も4割近くが「働く際に自身の性別が不利になる」と感じている結果に
まず、3か国の女性と男性について「働くうえで自身の性別が不利だと感じた経験の有無」を聞いてみた結果です。日本が確かにトップではあるのですが、日本42.0%に対し、アメリカが41.3%とほぼ差がありません。さらに、ジェンダーギャップ指数世界トップクラスのフィンランドにおいてすら、36.0%の女性が「女性であることが不利」と感じています。
男性の統計も興味深いです。日本とアメリカはほぼ差がなく、フィンランドの数値がその半分以下となっています。逆に考えると、男女平等が進み、家事や育児への参画が進んでいるように思われるフィンランドの方が男性は働きやすいのでしょうか?
女性と男性の働きにくさについて、3か国間での違い
回答の詳細を見てみましょう。女性と男性を並べてみると、それぞれの国の処遇の違いが良く解ります。なお、男性は、「自身の性別が不利」だと感じた経験のある割合が少なかったことは念頭に置いておいてください。
性別のロールモデルに縛られる日本
まず、日本です。女性のトップ5位には「給料が上がらない」「セクハラ」「補助や雑務ばかりを依頼される」「昇進昇格ができない」「パワハラ」が並んでいます。これらの問題の根源に見えるのは、日本企業ではいまだ補助や雑務は女性の仕事だと考えているということです。レベルの高い仕事を任せないため昇進もさせず、結果として給料も上がらない。ハラスメント研修を受けているにもかかわらず、女性に対してはセクハラやパワハラ的な関わり方しかできない男性上司という姿が浮かび上がってきます。
日本の男性を見ると、フィンランドとアメリカの理由トップである「昇進・昇格ができない」が見当たらないことからも、男性がまだまだ職場の評価で優遇されていることは明らかです。その代わり「体調不良の際に理解が得られない」「長時間労働」や「許容量を超える業務」は「男性だからだ」だと悩む姿が見えてきます。つまり、出世や高度な仕事内容は、体調を犠牲にして長時間キャパオーバーの仕事を女性よりもしているから……日本ではとかく性別の役割をいまだ強固に持ち続けているのではないでしょうか。
男女平等ではない?雇用流動化で男性にも厳しいフィンランド
それでは、男女平等で知られるフィンランドはどうでしょうか。とかく日本では理想化されがちな北欧ですが、女性の悩みのトップが 「補助や雑務ばかりを依頼される」 「給料が上がらない」 「セクハラ」 「昇進昇格ができない」 など、日本とほぼ変わらない理由が並んでいます。それどころか、日本にはない「出産や子育てのために退職を迫られた」というものまで。少し古いニュースですが、2019年にフォーブス・ジャパンの記事で以下のような指摘がありました。
同じ働きをしていても、フィンランドの女性は男性の84%しか稼ぐことができない。また、高齢者の介護や子育ても母親に任されることが多い。家事に割かれる時間は女性が3.5時間に対して、男性は2.5時間だ。
引用:最高レベルの子育て政策も無駄? 急減するフィンランドの出生率-フォーブス ジャパン 2019/10/19
給与格差が84%というのは、75%の日本からすればマシかもしれません。しかしジェンダー・ギャップ2位のフィンランドでも、依然として女性は給与が低く、家事労働の負担を負わされているのです。
さらに、フィンランドの男性を見てみるともっと深刻な問題が見えてきます。トップが 「昇進・昇格ができない」 「重要な仕事を任されない」 「発言がしにくい・発言の機会がない」 です。
これには、フィンランド独自の雇用問題があります。
フィンランドでは、日本よりも雇用の流動化が進んでおり、契約形態も多様だ。契約社員の数も多く、1年未満の契約もある。その場合、自分が1年後にどのような仕事についているのか、そもそも就労しているのか、予想することが難しい。
引用:最高レベルの子育て政策も無駄? 急減するフィンランドの出生率-フォーブス ジャパン 2019/10/19
つまり、ある意味男女平等に就職するので、男性も女性もキャリアアップできる職に就ける人と、そうでない人の差が大きく開いているのではないでしょうか。首相が若い女性でもあるフィンランドですら 「発言がしにくい・発言の機会がない」 と考える女性の割合が高いところには、考えさせられるものがあります。
アメリカの仕事の悩みは性別によらず共通点が多い
最後に、アメリカです。「ガラスの天井」で知られるアメリカでは「昇進・昇格ができない」がトップ、 「発言がしにくい・発言の機会がない」 「パワハラ」 「給料が上がらない」 「長時間労働を強いられた」と続きます。これは日本・フィンランドとも違った傾向で、とても興味深いことに、男性と似通った理由なのです。
なぜなら男性の悩みトップも 「昇進・昇格ができない」 だからです。次に「許容量を超える業務」や 「長時間労働」と続きます。女性は「個人の許容量を超える業務」とは回答していませんが「長時間労働」に悩む姿は同様です。我々は「欧米」とひとくくりにして「バカンス」「ワークライフバランス」といったイメージを抱きがちですが、アメリカの年間休日数は日本よりはるかに少なく、お正月は1月2日から業務です。さらに女性の産休や育休も整備されていません。日本よりはるかに「働きアリ」の環境なのです。
男女ともに 「昇進・昇格ができない」 というのは、アメリカもフィンランドと同様に雇用の流動性が高い社会だからという推察もできます。日本のように新卒一括採用で、年功序列で昇進することはまずないので、学歴・キャリアを持たない人はずっと昇進できません。役職によって給与が大きく違うため、競争も熾烈です。男女ともに同じような回答をしているのは、アメリカの一般的な職場環境が、私たちが想像しているよりも厳しいものであることを示しています。
働く環境については、ジェンダーによる差別が確かに存在するものの、悩みの発端はそればかりではないパターンもあります。男女同様に苦しむ職場環境であれば、SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」で対応することも必要です。以下のリンク先から調査の全体を見ることができます。フィンランド、アメリカの置かれた状況と照らし合わせると「自分にとって働きやすい環境とはどこか」を考えることにつながるのではないでしょうか。
参照: Indeed Japan「仕事とジェンダー」に関する3ヵ国比較調査