
チョコの製造で残る皮が最高のビールに変身した。カギヤブルワリーが仕掛けたのは固い環境論ではなく酒好きの心をくすぐる粋な試み。難しく考えずに楽しむ姿勢が街をゆるやかにつないでいく。
チョコの皮が爽やかな一杯に変身した代官山の粋な企み
神奈川県川崎市でクラフトビールを造るカギヤブルワリーが東京の代官山でちょっと面白い一杯を仕立て上げた。街のチョコレート屋さんでどうしても余ってしまうカカオ豆の外皮を引き取り副原料として活かしたダイカンヤマソーリョウビールである。
代官山商店会と地元のビールバーが声をかけ合いカギヤが醸造を手がけた。小麦がベースのヴァイツェンという種類でつくられており口に含むとホワイトチョコを思わせる優しい香りがふわりと広がる。アルコール度数は4.5パーセントと軽やかで代官山のお祭りに合わせて街のあちこちで提供が始まっている。
他人の困りごとをサラリと受け止める醸造のしなやかなアイデア
自社の余りものを減らす取り組みなら珍しくないが今回のカギヤブルワリーは他業種の不要品をビールに変えてしまった点が実にユニークだ。
これまでもビールを仕込むときに出る麦の粕を養鶏場の飼料にしたりシイタケの栽培に使ったりと自社発の工夫は重ねてきた。しかし今回はその逆で街のチョコ屋から出る副産物を自分たちの醸造技術で受け止めている。
お店とバーと醸造所が手を取り合い捨てるはずだった素材を美味しいお酒へと変えてみせた。異業種の不要品すらワクワクする商品に変えてしまう柔軟さこそ彼らだけの面白さである。
まあ酔っ払いましょのひと言に詰まった肩の力が抜けたモノづくり
この取り組みの根底にあるのは難しく考える必要なんてどこにもないというカギヤブルワリーの軽やかなスタンスだ。ビールを味わうのに難しい知識も正解も肩書きもいらない。
街のチョコ屋で余ったものが美味しいお酒になって誰かの手元に届く。その出来事自体を素直に楽しめばいいという考え方が貫かれている。
大げさな環境保護を掲げて身構えるのではなくまあ酔っ払いましょという合言葉とともにみんなが笑顔になる時間をつくり出す。この肩の力が抜けたフラットな思いがあるからこそ街を巻き込んだ自由な発想が形になる。
正しさより楽しさで人を惹きつけるしなやかな仕事のヒント
彼らの姿勢からは自分たちの枠組みだけで頭を悩ませないオープンな発想のコツが学べる。自社の持ち物だけで新しいものを生み出すのには限界があるが街や違う業界に目を向ければ面白い素材はいくらでも転がっている。
さらに社会に良いことを伝えるとき固苦しい正論で縛るのではなく楽しくて美味しい体験に落とし込む工夫も見事だ。一見マイナスに見える素材や制約すらもアイデアひとつで魅力的な強みへ変えてしまう視点は毎日の仕事の現場でも大きなヒントになる。



