
捨てられてきたオリーブの葉が、高機能な化粧品に生まれ変わる。岡山県瀬戸内市の日本オリーブが、岡山大学との共同研究で「2026年度日本農芸化学会中四国支部技術賞」を受賞した。
未利用だったオリーブの葉を微生物の力で変換し、新しい機能性成分を生み出した技術が評価された。
廃棄オリーブ葉から新物質「Bオリボール」
同社によると、受賞の核となったのが、微生物変換という技術だ。これまで廃棄されていたオリーブの葉から、新しい物質「Bオリボール」を生み出した。オリーブ葉に含まれるポリフェノール「オレウロペイン」を、黒酵母の酵素で構造変化させたものだ。ビタミンCやビタミンEを上回る高い抗酸化力を持つほか、体内の抗酸化物質グルタチオンやコラーゲンの産生を促し、コウジ酸を上回る美白効果やシワの改善効果があることも科学的に確かめられたという。捨てられていた葉が、多くの機能を備えた成分へと変わった。
オリーブといえば、実から搾る油がまず思い浮かぶ。栽培の過程で剪定される葉は、これまで顧みられることの少ない存在だった。その葉に眠る成分を引き出し、実に劣らぬ価値を与えたところに、この研究の意義がある。捨てるものから、化粧品の主役級となる成分を生み出した発想の転換が、高く評価された。
「発酵臭」との闘い、35種の花から菌を探す
開発の道のりは、平たんではなかった。同社によると、試作品からはパンのような発酵臭が漂うという壁が、最初に立ちはだかった。これを乗り越えるため、35種類の花から100株以上の菌を調べ上げ、独自の「オリーブ花由来黒酵母」を見つけ出した。さらに、それを大量に培養する技術も確立した。量産化の段階でも、変換の働きを示さない菌が何度も得られるという壁に直面したが、岡山大学や岡山県工業技術センターの支援を受けて乗り越えた。地道な基礎研究の積み重ねが、実を結んだ形だ。
微生物を使って物質を作り変える技術は、狙い通りの働きをする菌を見つけ出すまでに、膨大な試行錯誤を要する。花から菌を探し、選び抜き、安定して働くように育てる。その一つひとつが、長い基礎研究の積み重ねの上に成り立っている。派手さはないが、地道な探究がなければたどり着けない成果だ。
100年の栽培と、未利用資源の価値
この技術は、地域の伝統とも深く結び付いている。同社によると、瀬戸内には100年の歴史を持つオリーブ栽培があり、その「葉」や「花」という、これまで使われてこなかった資源を、付加価値の高い成分へと変えた点も評価された。「Bオリボール」を配合した5種類の高機能化粧品として製品化されている。服部芳郎代表取締役社長は、今回の受賞について「忘れられたオリーブの価値を追究する」という精神が評価されたものだと語る。同社は正社員の一割以上を研究開発にあて、岡山大学や岡山県工業技術センターとの産学官連携で成果を上げてきた。
「眠れる力」を産業に
日本オリーブは、1949年に設立された会社で、オリーブオイルや化粧品、医薬部外品などの研究・開発・製造・販売を手がけてきた。1942年、創業者がオリーブの木を植えたことに始まり、実がつくかも分からないところから栽培を続けてきた歴史を持つ。
岡山大学との共同研究は1997年に始まり、2002年にはオリーブ葉エキスを配合した薬用美白シリーズを発売した。「Bオリボール」の物質特許は2010年に登録され、2021年からは5種類の高機能化粧品を順次売り出してきた。長い時間をかけて、研究を製品へとつなげてきた。
共同研究に加わった岡山大学の神崎浩客員教授は、地道な基礎研究の「眠れる力」を産業化させた点が評価されたとし、地域企業との産学連携が商品開発につながる事例として、同様の動きが広がることに期待を寄せる。
地域に根ざした企業が、大学や公的な研究機関と手を組み、その土地ならではの資源を新しい価値に変える。日本オリーブの歩みは、産学官の連携が地域の産業を育てる一つの道筋を示している。未利用の資源に光を当てる取り組みが、地域の産業をどう育てるのかが注目される。



