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世界に晒された大失態 愛知・名古屋アジア大会で不手際続出 GL events、組織委、愛知県…犯人を追う

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「史上最悪」「poor organisation」世界が嘲笑う日本のお粗末な運営能力

アジア大会
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バスが来ない。来たと思えば、サッカー選手を乗せて野球場へ行く。宿泊施設へ着いても部屋に入れない。世界王者が6時間待たされ、朝食を食べた後、次の食事は12時間近く後。とうとう自分でホテルを取った。韓国代表が試合前に整列すれば、流れてきたのは韓国国歌ではなく北朝鮮国歌だった。

これが、2026年9月、日本で開幕した愛知・名古屋アジア大会で起きている。しかも、笑えないのはここからだ。

 

いま海外メディアが報じているのは、単なる大会の小さなトラブルではない。記事の中で比較され始めているのは、これまで日本が海外で築いてきた緻密に物事を運営する国という評判そのものなのである。

ロイターは9月19日、開会式を伝える記事で、準備期間を「operational gaffes and logistical problems」、つまり運営上の失態と物流上の問題に見舞われたものと描写した。そのうえで、日本が組織運営で高い評価を得てきたことと、今回の宿泊、輸送、登録の混乱を対比させた。

AFPの見出しはさらに容赦がない。

「Athletes ‘can’t take it any more’ as Asian Games issues mount」

選手が「もう耐えられない」と訴えるほど問題が積み上がっている、と世界へ配信した。記事本文にも「poor organisation(お粗末運営)」という言葉が躍った。

 

中国国営の新華社通信は、韓国バスケットボール関係者による「これまでの経験で最悪」という発言を大きく報じ、狭いベッド、水漏れ、部屋不足を列挙した。別の記事では、中国卓球、体操、武術などの選手団で宿泊情報を確認できず、バドミントン代表は迎えの車が来ず、ハンドボール代表ではシャトルバスが予約されていなかったと報じている。

韓国紙コリア・タイムズの見出しは「Operational blunders」。アルジャジーラは「What’s gone wrong at the Asian Games in Japan?」と問いかけた。インディアン・エクスプレスも、日本の「precision(精密さ)」という評判を今回の大会運営と重ね合わせている。

いつの間にか、世界が見ているのは競技だけではなくなった。

「あの日本で、いったい何が起きているのか」

そんな記事がアジアを駆け巡る事態になっている。

 

選手を救ったのは大会バスではなく地元住民

ドタバタぶりを並べてみると、その異常さが分かる。中国の体操スターで、パリ五輪銀メダリストの張博恒は9月16日、日本到着後に登録手続きなどで待たされ、宿泊先のクルーズ船へ行けば大雨で乗船できなかった。宿に入るまで約6時間。朝7時に朝食を食べ、次に食事を口にできたのは午後7時近く。本人は「完全に疲労困憊」と訴え、最後には自分でホテルを予約した。

さらに驚くのは中国バドミントン代表だ。新華社通信によると、シャトルバスなどの問題を受け、中国総領事館は名古屋周辺の中国人住民に連絡し、選手の送迎への協力を求めた。大会が用意した輸送網で運べず、地元住民が救援に入る事態となった。

インドでは、もっと先まで想定していた。AFPによれば、大会側の宿泊施設だけでは対応できなくなった場合に備え、名古屋周辺のインド人家庭が、選手を自宅へ泊める待機態勢まで組まれた。フィリピンでは一部のコーチらがAirbnbへ移された。

これは国際大会の話であり、日本で開催している話なのだ。

 

サッカー選手を乗せたバスは、野球場へ向かった

選手の送りでさえろくにこなせなかったらしい。9月15日、韓国とカタールの男子サッカー代表が試合会場である瑞穂ラグビー場へ向かった。ところが、両チームを乗せたバスは隣接する野球場へ行ってしまった。聯合ニュースによると、両代表は予定より約30分遅れて会場入り。ウォーミングアップまでほとんど時間が残っていなかった。

そして、今度は翌日。今度は韓国代表のリカバリー練習へ向かうバスそのものが来なかった。代替車両を探し、練習開始は20分遅れた。韓国サッカー協会関係者は聯合ニュースに、車両の手配や運行を巡る小さな問題が大会を通じて繰り返されていると説明している。

 

さらには20日。日本との男子バスケットボール決勝を数時間後に控えた韓国代表が、朝のシュート練習へ出ようとした。またバスが来なかった。理由の説明もなく、韓国代表は練習そのものを断念した。キャプテンは「受け入れられない」と聯合ニュースに語っている。

選手村で多少設備に不具合があった、というレベルではない。選手を競技会場へ運ぶという、国際スポーツ大会の最も基本的な仕事で躓いているのだ。

 

そして韓国代表に「北朝鮮国歌」

とどめのような出来事が18日に起きた。男子ホッケーの韓国対バングラデシュ戦。韓国代表が整列する。アナウンスでは韓国国歌が演奏されるはずだった。流れたのは、北朝鮮国歌だった。

AP通信やロイターは、韓国選手が困惑して顔を見合わせる様子まで世界へ配信した。韓国と北朝鮮の関係を考えれば、単なるCDの入れ間違いでは済まない。組織委員会は謝罪に追われた。いやいや、失態を犯した人間はまともな神経をしていたら、辞職以外の道がない不始末だろう。日本と韓国との関係を想起すれば、本来なら国際問題化してもおかしくない話だが、韓国から見ても、日本はもはや「こいつらのポンコツさなら、しょうがない」と嘲笑されて終わるレベルの対象に陥っていたのが幸いか、バカにされて終わるレベルの話になっているらしい。

 

さらにさらに、大会の歓迎行事では、その前から韓国側との摩擦も起きていた。クルーズ船の歓迎行事に、朝鮮出兵を主導した豊臣秀吉に扮した人物が登場し、韓国側が抗議している。宿泊、輸送、登録、式典、競技運営。

ここまで違う場所で問題が起きると、さすがに疑問が湧いてくる。

誰が、この大会を動かしているのか。

ここから“犯人捜し”を始めてみよう。

第1の容疑者、GL events 実は「会場設営屋」ではなかった

 

まず名前が浮かぶのが、フランスのイベント大手GL events Japanだ。同社は自ら、2025年4月に愛知・名古屋大会の大型契約を獲得したと発表している。

GL eventsの発表では、アジア大会・アジアパラ大会の計58会場について、設計、仮設施設の整備、ホスピタリティエリア、メディアゾーン、アクセス・認証システム、表彰式などを担う。自らを「Event Delivery Entity」と位置付けている。文字通り、大会を現場へ落とし込む中核事業者である。

大村秀章知事も2025年7月の記者会見で、GL events Japanについて、アジア大会の53会場で「仮設の設備の設置だとか、そうしたものの運営等を一括して委託」していると明言している。まぁ、大会運営の失敗の多くの責任は、こいつらGL events Japanにあるという見方は正しいだろう。これを「単なる施工会社だから運営トラブルとは無関係」と扱うことはできない。会場アクセス、認証、メディア対応、表彰式など、大会当日のオペレーションそのものが契約範囲に入っている。

それだけに、会場周辺で公式車両の運行や案内が混乱し、国歌まで取り違える大会で、同社が契約上どこまで担当し、どの部分を実際に統括していたのかは、当然検証対象になる。

 

しかも開幕前、GLにはすでに「赤信号」が灯っていた

しかも、同社は過去のイベントでもミソをつけていた。GL events Japanは大阪・関西万博を巡り、下請企業との工事代金問題を抱えているのだ。係争中の案件であるがゆえ、どちらにも言い分があるのであろう。ただ、複数のサプライヤーとトラブルを起こすようなイベント会社にそのまま運営を委託し続けるという決断を下したアホがいるわけで、その点で、愛知県の責任は重い。

実際に、愛知県側は知らなかったわけではない。2025年7月15日の大村知事会見では、この問題について組織委員会がGL events Japanに事実関係を報告するよう文書で要求したことが明らかにされた。大村知事は、53会場の運営等を一括委託している以上、委託業務が適正に実施されるよう対応すると語っていた。

 

12月の愛知県議会でも、GL events Japanを大会業務に使い続けて問題はないのかが質問された。県側の回答を見ると、選定方法も興味深い。

親会社のGL events SAが大会の「プレステージパートナー」だったため、組織委員会の規則に基づく随意契約の候補者として選ばれ、理事会の承認を受けて契約したという。県側はその時点で、GLの国際スポーツ大会の経験を生かし「円滑かつ効率的に業務が進められている」と説明していた。

その約9か月後。海外メディアが報じるのは「poor organisation」である。

この落差は小さくない。

だがGLを追っていくと、別の会社が次々現れる

 

ところが調べるほど、話はGL一社では終わらなくなる。クルーズ船を使った「ホテルシップ」はJTB名古屋事業部

名古屋港に置かれた移動式宿泊施設は「愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会JVニトリ・アーキビジョン21」。

大会のスポンサー獲得やライセンス業務は、新東通信を代表に、JTBコミュニケーションデザイン、TOPPAN、楽天グループが参加する共同事業体が担当している。

 

大会は巨大な分業体になっていた。会場はGL。船はJTB。仮設宿泊施設は別JV(ジョイントベンチャー)。マーケティングも別JV。そして多数のホテル、輸送事業者、各競技団体がぶら下がる。個々には専門会社が入っている。

それでも選手は運べない。部屋割りが合わない。登録情報が出てこない。

となれば、次に探すべきなのは個々の作業員ではない。

この巨大な分業を、一つの大会として束ねる「司令塔」はどこだったのか。

すべては「選手村を造らない」から始まった

 

時計をさらに2023年へ戻す。大村知事は3月27日の会見で、当初予定していた選手村の建設を取りやめると発表した。2016年の招致時、大会予算は850億円。そのうち選手村が300億円だった。しかし建設費が上昇し、大村知事によれば300億円がざっくり倍に膨らむ状況になっていた。

そこでホテルを利用することにしたようだ。大村知事は、この時こう説明している。県内や競技会場周辺のホテルにはすでに話をしており、1万人を超える選手団の宿泊能力について「手配はもう既にできております」。

さらにOCAに対しても、「日本が、そして私ども愛知がやりますので、そこは心配をいただかなくても結構ですよと、十分やれますよ」と伝えていると語った。

 

この発言は、いま読むと重い。なぜなら、その後計画はどんどん複雑になったからだ。

当初はホテル活用だった。ところがOCAから、選手同士が交流できる選手村的な集約拠点を求められる。

そこでクルーズ船を用意する。さらに「7000室程度に集約してほしい」と求められ、名古屋港ガーデンふ頭に2400室規模の移動式宿泊施設を追加した。

これは愛知県議会で、県側自身が説明している経緯だ。そこへ、もう一発来る。選手・役員は最大1万5000人で準備していたのに、実際の登録は1万7000人を超えた。8月下旬の段階で組織委員会はOCAと人数調整を迫られていた。

選手村一つなら、選手をそこへ集めればいい。しかし愛知・名古屋方式では、ホテル+クルーズ船+仮設宿舎へ1万7000人を振り分け、そこから毎日、50を超える競技会場へ送り出さなければならない。宿泊と輸送を安くしたのではない。巨大なパズルに作り替えたのである。

 

そして最後にたどり着く「運営主体」

では、そのパズルを完成させる責任を担っていたのは誰か。ここで公開資料に答えが書かれている。大会の運営主体はGL eventsではない。公益財団法人愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会組織委員会(AINAGOC)である。

愛知県、名古屋市、JOCが発起人となり2019年に設立。現在の会長は大村秀章・愛知県知事、会長代行には広沢一郎・名古屋市長らが並ぶ。愛知県自身の資料も、この組織委員会を明確に運営主体と記載している。

そして、そもそもの開催都市契約をOCAと締結しているのは、愛知県、名古屋市、JOCだ。

 

ここまでたどると構図はかなりはっきりする。GL eventsには、巨大な会場運営業務を請け負った企業として問われる部分がある。

JTBなど宿泊関連事業者には、それぞれ契約した業務がある。輸送会社にも仕事がある。しかし、数十社に分割された仕事をアジア大会という一つのオペレーションにつなぐ主体として設けられたのが組織委員会だった。

外部へ仕事を委託しても、開催都市契約の当事者が入れ替わるわけではない。

世界に流れたのは「愛知県の事情」ではなく「日本の失態」

 

ここが今回、最も深刻なところだろう。外国の選手にとって、「GL eventsの管轄でした」「JTBとは別契約です」「輸送担当とは情報共有ができていませんでした」などという日本国内の発注事情は、知ったことではない。

もちろん、日本にとってみても、突如OCAからよくわからんサッカーとテニスを組み合わせた「テックボール」なる競技を追加されているといった言い分もあるだろう。ただ、ステークホルダーの多い大会運営とはそもそもこういったものだろう。本来なら、そうした各国の無謀や無茶をも併せのんだうえで、相手をまとめ上げていくのが手腕というものだ。この点で、多くの人がいう電通を省いた悪影響という話はあるのかもしれない。

 

とかく、中国の選手から見えたのは、日本へ来たら宿に入れず6時間待ったという事実だ。

韓国代表から見えたのは、日本でバスが来ず、来たバスは野球場へ行き、試合前には北朝鮮国歌が流れたという体験だ。

インド側では、日本在住の一般家庭に選手を泊める可能性まで検討された。

そしてロイターは、今回の混乱を報じる際、日本がこれまで持っていた「組織運営に優れた国」という評判そのものを引き合いに出した。

これは愛知県内の失敗談だけでは終わらない。海外報道の主語は「Japan」だからである。

 

「十分やれますよ」。3年半前、味噌クソ大会のおひざ元の大村知事はそう語っていた。

その言葉を信じ、選手村をやめ、ホテル、船、仮設施設へ分散する前例の少ない大会へ踏み切った。そして会場運営をGL eventsなどへ発注し、多数の企業を束ねる巨大な分業方式で本番を迎えた。

結果、開幕前から海外通信社や各国メディアに、「poor organisation」「worst ever」「operational blunders」という言葉が並んだ。

GL eventsがどこで躓いたのか。宿泊と輸送の指揮系統はなぜ機能しなかったのか。1万5000人の想定が1万7000人になった時点で、誰が本当に回せると判断したのか。そこは今後、契約書と当日の運行記録まで掘る必要がある。

ただ、責任の矢印を上へ上へとたどっていけば、最後に現れる組織は明確だ。

 

大会の「運営主体」として設立された組織委員会。その会長を務める大村知事。そして開催都市契約を結んだ愛知県と名古屋市である。

いやはや、この責任はどうとるのだろう。愛知県のせいで日本の信用が失墜してしまった。クソ煮込みうどんばりの大みそをつけてしまったのだ。海外へ流れてしまった記事を、あとから消すことはできない。

「日本ならきちんとやる」。

国際社会で長い時間をかけて積み上げてきたそんな評価が、今回の大会では逆に海外記事の皮肉な比較材料になってしまった。

愛知県に問われているのは、もう「多少の初期トラブルはあった」という説明ではない。

なぜ、ここまで壊れたのか。

 

GL eventsを含む受託企業に何を任せ、誰が全体を束ね、どこで情報が途切れ、なぜ本番まで止められなかったのか。いままでは、電通などの実績ある会社にそのまま委託していればよかったのかもしれない。でも、こうしたミソを付けてしまった以上、下請け任せ、無責任対応はもう許されない。まぁ、もう二度と大きな大会を日本で開くことは叶わなくなっただろうという点で、もう気にしないでいい問題かもしれないが笑

とまれ、日本の看板を背負って開いた国際大会である以上、その経緯を説明するところまでが、開催側の仕事である。

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寒天 かんたろう

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ライター歴26年。月刊誌記者を経て独立。企業経営者取材や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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