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みおしん医師のワクチンダンス動画再拡散。ファウチ文書と“流産率82%”の出所、一律推奨変更の真相

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妊婦にコロナワクチンを積極的に勧めた女性医師の過去動画が、いまXで再び拡散されている。画面には「ワクチンは胎盤へ移行せず、代謝されます」と表示され、医師本人が踊りながら接種を呼びかける。そこに重なったのが、米国で新たに公開されたアンソニー・ファウチ氏の政府支給端末のメッセージだった。2021年には「妊婦も接種を」と呼びかけられた。では現在はどうなのか。5年の間に、妊婦が受け取るメッセージは変わっている。

「妊婦ワクチンダンス」を踊った医師、過去動画が再拡散

X上で再拡散されているのは、「みおしん」の名前で活動する西村美緒医師の過去動画だ。

動画では、女性医師がカメラの前で踊るように動きながら、妊婦向けに新型コロナワクチンについて説明している。画面には「ワクチンは胎盤へ移行せず、代謝されます」と大きく表示される。この動画だけを見れば、かなりくだけた医療情報の発信に見える。しかし、西村氏自身が2021年10月の活動報告で、ダンスと医療情報を組み合わせた発信を行い、「妊婦さんや中高生のコロナワクチン接種を後押しできました」と記している。本人はこの活動を”妊婦ワクチンダンス”とも振り返っていた。つまり、今回の動画について妊婦へのワクチン接種を呼びかける目的だったとすることには、本人の記録という裏付けがある。
一方、現在のXでは
「誤りを認めなければ始まらない」
「一生かけて償え」
などの厳しい投稿が相次いでいる。中には医師免許の取消しを求める声まである。
背景には、彼女のその後の行動もある。2023年10月には、反ワクチンを意味する言葉を発しながら藁人形に釘を打つ動画が拡散。元勤務先であった鎌ヶ谷バースクリニックが公式サイトで「当該医師は当院の職員ではない」と声明を出す事態に発展している。ただし、SNS上の批判は医学的な因果関係を証明するものではない。問うべきなのは、当時この医師が何を伝えていたのか。そして、その背景にあった公的な推奨が、その後どう変わったのかである。

2021年は「妊婦も接種を」 学会のメッセージは明確だった

ここで重要なのは、西村氏個人だけを取り上げると当時の状況を見誤ることだ。日本産科婦人科学会などは、2021年の段階から妊婦への新型コロナワクチン接種について情報を発信していた。5月の文書では、まだ長期的な安全性や胎児・出生児への安全性について今後の情報収集が必要としながらも、当時の感染状況では接種のメリットがリスクを上回るとの判断を示していた。接種する場合には、長期的な副反応などが確立していないことを事前に説明するよう求めていた。その後、8月には妊婦への接種をより明確に推奨する方向へ進む。

日本産科婦人科学会の2021年8月14日付資料では、妊婦について「時期を問わずワクチンを接種することをお勧めします」としていた。さらに厚生労働省も8月23日、妊婦への接種について、希望する場合にはできるだけ早期かつ円滑に接種できるよう配慮することを自治体などに通知している。

2022年になると、その流れはさらに強くなる。日本産科婦人科学会などは2022年1月、妊婦への3回目接種について優先接種を求め、同年6月、7月にも未接種の妊婦に向けて接種を呼びかけた。2022年7月の文書では、第7波による感染拡大を背景に、妊婦への接種を「お勧めしています」と明記している。

つまり、2021年から2022年にかけては、妊婦へのワクチン接種を後押しするメッセージが、医師個人だけではなく学会や行政からも発信されていた。だからこそ、いま過去動画だけが切り取られて再拡散されると、当時の空気と現在の状況との間に、妙な時間差が生まれる。

2023年も推奨は続いた そして2025年に「一律推奨せず」へ

では、方針はいつ変わったのか。実は、2023年5月に新型コロナが5類感染症へ移行した後も、妊婦への接種推奨はすぐには消えていない。日本産科婦人科学会などは2023年5月、オミクロン株流行期の国際共同研究を根拠として、妊婦へのワクチン接種による重症化予防効果を説明。5類となった後も、新たな変異株による再流行も懸念され、コロナワクチンの妊婦への追加接種が推奨されているとしていた。

ところが2025年7月31日、状況は変わった。日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会、日本産婦人科感染症学会は、妊婦への新型コロナワクチンについて「すべての妊婦に対して一律に新型コロナワクチンを接種することは推奨しません」と発表した。

ただし、これは妊婦は接種すべきではないという意味ではない。重症化リスクのある基礎疾患を持つ妊婦には引き続き任意接種を推奨し、本人が母子免疫などを期待して接種を希望する場合には接種可能としている。8月21日の補足では、学会は2023年以降も妊婦への接種を推奨してきたと説明したうえで、国内の感染状況などを踏まえて医学的な立場を再検討したと説明している。ここで見えてくるのは、ワクチンは危険になったという単純な話ではない。

2021年には「時期を問わず接種を」。

2022年には未接種の妊婦へ再度の接種呼びかけ。

2023年には5類移行後も追加接種を推奨。

そして2025年には「すべての妊婦への一律接種は推奨しない」。

同じ妊婦とコロナワクチンをめぐる公式メッセージが、数年の間にここまで変化している。医学では、新しいデータや感染状況によって推奨が更新されること自体は珍しくない。だから、推奨が変わったことだけをもって「以前は間違っていた」と結論づけることはできない。ただ、妊婦から見れば話はもう少し切実だ。自分一人の健康だけでなく、胎児への影響を考えて判断するからだ。去年までは勧められていたのに、今年は一律では勧めない。その間に何が分かり、何が分からなかったのか。そこまで説明されなければ、残るのは推奨が変わったという事実だけになる。

「82%が流産」は本当なのか 数字の正体

 

今回の再拡散では、「妊娠初期にワクチンを接種した女性の流産率は82%だった」とする主張も目立つ。この数字は完全な創作というわけではない。元になったデータと、そこから導き出された再計算が存在する。

2021年にNew England Journal of Medicineで公表された研究では、V-safe妊娠登録に参加した3958人のうち、研究期間中に妊娠が完了していた827人が分析対象となった。そのうち104人が20週までの自然流産となり、論文では12.6%とされた。NEJMは後に表記を訂正しているが、104人という数字自体は変わっていない。

一方、今回公開されたロン・ジョンソン上院議員側の資料では、産婦人科医ジェームズ・ソープ氏による再計算が紹介されている。827人のうち700人は妊娠28週以降に接種していたため、20週未満の自然流産を計算する分母からこの700人を除外すべきだという考え方だ。すると、104人を127人で割ることになり、約82%になる。

ただし、ここには非常に大きな注意が必要になる。この82%は、元のNEJM論文が「ワクチンを接種した妊婦の82%が流産した」と結論づけた数字ではない。研究期間の時点で妊娠が完了していた827人を対象にした12.6%という数字に対して、別の分母を設定して再計算した数字である。しかも、研究期間終了時点でまだ妊娠が継続していた人は「妊娠完了例」に含まれない。したがって、127人だけを分母にして妊娠初期の接種者の流産率とみなすことには統計上の問題がある。82%という数字がどこから出てきたのかを追うことと、「ワクチンで82%が流産した」と結論づけることは、まったく別の話だ。今回の騒動では、この二つがSNS上で一つに結びついている。数字は、分母を変えるだけでまるで違う顔を見せる。だからこそ、妊婦の身体に関わる話では、強烈な数字ほど一度立ち止まって確認する必要がある。

ファウチ氏の端末から「流産との関連」記述 何が書かれていたのか

そして今回、過去の動画が再び注目される背景には、米国で新たに公開された資料もある。2026年8月10日、米共和党のロン・ジョンソン上院議員とランド・ポール上院議員は、アンソニー・ファウチ氏の政府支給携帯電話から取得されたメッセージの一部を公開した。ジョンソン氏側によると、端末には3万4000件を超えるテキストメッセージと522件のボイスメールが残されているという。今回公開されたのは、そのうち2021年1月25~26日にファウチ氏、当時CDC長官だったロシェル・ワレンスキー氏、当時の米国公衆衛生局長官ビベック・マーシー氏との間で交わされたやり取りだ。その中でファウチ氏は、2回目の接種後に発熱や強い免疫反応が起こる可能性に触れ、それが「妊娠初期の流産と理論上関連する可能性」があるとの趣旨を記していた。ここは確かに気になる記述だ。

しかし、「理論上関連し得る」と書かれていたことと、「ワクチンが流産を引き起こしたことをファウチ氏が知っていた」ということは同じではない。むしろ、この資料を読むと、2021年当時に安全性について内部でどのような懸念が検討されていたのか、そしてそれが公の説明にどう反映されたのかという、新たな検証課題が浮かび上がる。ジョンソン氏側の資料には、2021年2月3日にファウチ氏が妊婦について「これまでのところ赤旗はない」と発言した記録や、同年8月、9月にCDC側が妊婦への接種を推奨した記録も掲載されている。

つまり現段階で確認できるのは、内部メッセージに理論上の懸念への言及があったことまでだ。「危険性を知っていて隠蔽した」と断定するには、今後公開される資料を含め、さらに検証が必要になるが、妊婦への接種をめぐる情報が当時どのように形成され、何が公に伝えられていたのかを考える材料としては無視できない。

5年前の「安心してください」は、いま何を意味するのか

 

今回再拡散されている動画には、医師が踊りながら妊婦に向けてワクチンを説明する姿が残っている。本人は当時の活動について、妊婦や中高生の接種を後押しできたと振り返っていた。2021年当時の日本産科婦人科学会も、妊婦への接種を明確に推奨していた。2022年、2023年にもその方向は続いた。だから、2026年になってこの動画だけを見てなぜこんなことを言ったのかと問うだけでは足りない。

当時は、学会も行政も同じ方向を向いていた。そして現在、そのメッセージは変わっている。2025年の学会は、すべての妊婦への一律接種を推奨していない一方で、重症化リスクのある妊婦への接種は推奨し、希望者には接種可能としている。医学の世界では、情報が増えれば判断が変わる、それ自体は当然だ。しかし、妊婦にとって重要なのは、何が変わったのか。なぜ変わったのか。何が分かっていて、何がまだ分からないのか。そこまで伝わって初めて、「自分で判断してください」という言葉に意味が生まれる。

2021年には、時期を問わず接種を。
2022年には、未接種の妊婦へ再び接種が呼びかけられた。
2023年には5類移行後も追加接種が推奨された。
そして2025年には「すべての妊婦への一律接種は推奨しない」とされた。

この変化を、ただ医学が進歩した、で片付けることも、最初からすべて間違っていた、と断じることもできない。ただ一つ確かなのは、妊婦が受け取る公式メッセージが、この数年で変化したという事実だ。いま過去の動画を見返した人が感じている違和感は、ひょっとするとワクチンそのものだけに向けられたものではないのかもしれない。あの時、何を根拠に安心と言われ、そして現在、その説明はどこまで更新されているのか。画面の中で踊る医師の姿は5年前のままだ。変わったのは、その動画を取り巻く情報のほうである。

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ライター:

2人育児8年目ママ。健康を意識した丁寧な暮らしを大切にしています。好きなテレビ番組は『クレイジージャーニー』。日々のリアルな視点から、役立つ情報を発信したいです。

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