
建設機械をレンタルする会社の展示会、と聞けば、業界関係者が集まる専門的な催しを思い浮かべるかもしれない。だが神奈川県藤沢市の株式会社鈴機商事が開く「建機展」は、少し様子が違う。会場では、子どもがショベルカーによじ登り、家族連れがキッチンカーの列に並ぶ。
同社はこの展示会を、業界内のイベントから「建設業と地域をつなぐ場」へと育ててきた。その先に見据えているのは、建設業界が抱える担い手不足という課題である。
機械を貸すだけではない、地域密着の建機会社
株式会社鈴機商事は、神奈川県藤沢市に本社を置く、建設機械のレンタル会社である。ブルドーザーや油圧ショベルといった大型建機から、発電機や電動工具などの小型機器まで幅広く取り扱い、レンタルに加えて、新品・中古の販売や買取、修理までを一体で手がける。1971年の創業、1974年の設立から半世紀、神奈川・東京・埼玉に9拠点を構え、グループ全体で83名の体制を築いてきた。
同社が掲げるのは、「機械を貸すだけではない」という姿勢だ。現場ごとに最適な機材や運用方法を提案する、現場アドバイザー型のサービスを特徴としている。整備の資格を持つ技術者が多数在籍し、機械の状態管理からトラブル対応までを一貫して支える。借り手にとっては、機械そのものだけでなく、それを使いこなすための助言までを頼れる相手ということになる。
こうした事業の土台には、地域の建設事業者との長年の関係がある。創業から半世紀にわたって神奈川を中心に地歩を築き、地域のインフラを支える現場に機械を送り出してきた。同社を率いるのは、代表取締役の鈴木百合子氏である。
そして同社には、建設機械を貸すという本業とは別に、毎年続けてきた一つの取り組みがある。展示会「建機展」の開催である。

建設業界が抱える、担い手不足という課題
建機展の話に入る前に、その背景にある建設業界の状況に触れておきたい。同社が展示会のあり方を変えていった動機は、ここにあるからだ。
建設業は、道路や橋、上下水道、防災施設など、地域の暮らしを支える産業である。だが近年、その担い手が不足している。時間外労働の規制強化にともなう、いわゆる「2024年問題」以降、人手不足や技術者不足への対応が業界全体の課題となった。高齢化による技能者の減少も進んでいる。神奈川県内でも、道路や橋梁、上下水道といったインフラの老朽化対策が求められる一方で、それを支える人材の不足は深刻さを増している。
とりわけ中小の建設会社では、若手人材の採用が難しい。「3K」や「中高年男性中心」といったイメージが根強く残り、加えて、騒音や道路工事による通行のしづらさ、危険といった、建設現場に向けられる厳しい視線もある。社会に欠かせない仕事でありながら、その魅力が十分に伝わっていないのではないか。同社は、そうした問題意識を抱いてきた。
一方で、ショベルカーやダンプカーといった“はたらくくるま”は、子どもたちに根強い人気がある。重機に目を輝かせる子どもは多いのに、成長するにつれて建設業への関心は薄れていく。この隔たりをどう埋めるか。建設業の担い手不足を解くには、まず地域の人々に建設業を身近に感じてもらうことが必要ではないか。同社はそう考えるようになった。

“はたらくくるま”で、地域と建設業をつなぐ
こうした問題意識から、鈴機商事は建機展のあり方を広げてきた。もともとは建設機械や最新技術を地域に開く展示会として続けてきたものを、建設業界の関係者だけでなく、地域住民やファミリー層も楽しめる場へと組み替えていったのである。毎年開催してきた恒例の催しで、2026年には第43回を数えた。
2026年5月に大磯ロングビーチ プールセンターで開いた「第43回 2026建機展」は、過去最大の規模となった。協賛は71社にのぼり、約150台を超える建設機械や、約1,000点の建設関連機器が一堂に集まった。独立系のレンタル会社が主催する建機の展示会としても、最大級の規模になるという。
この年の会場には、建設機械の展示に加えて、キッチンカーや、従業員自らが振る舞う無料の模擬店、そして前年より拡充したキッズコーナーが並んだ。子どもが直接重機に触れられるコーナーでは、重機にまたがって記念写真を撮る姿が見られ、会場にはのべ200名を超える子どもが訪れた。来場者数は2日間の合計で917名と、前年の615名を大きく上回り、過去最多となった。
この取り組みは、社員の家族を招く「ファミリーデー」の同時開催とも重なっている。きっかけの一つは、以前のファミリーデーで、子どもたちが重機を見て目を輝かせる姿だった。一児の母でもある鈴木百合子氏は、これほど建機やはたらくくるまが好きな子どもたちがいるのに、成長すると建設業への関心が薄れてしまうのはなぜか、と考えたという。その問いが、地域に開かれた建機展の企画へとつながっていった。

展示会が映す、建設業の現在地
建機展は、子どもや家族でにぎわう一方で、建設業のいまを映す場にもなっている。とりわけこの年に来場者の関心を集めたのが、省人化や効率化につながる技術だった。
「2024年問題」以降、人手不足への対応として、建設現場の省人化やICT化への関心は年々高まっている。今年は、ラジコンのように遠隔操作できるバックホウ、すなわち油圧ショベルの展示に多くの来場者が集まったという。省力化や効率化が、建設業にとって大きな関心事になっていることが、あらためて見てとれる。同時に、こうした新しい技術を積んだ重機に目を輝かせる子どもの姿も多く、建設業の魅力を伝える機会にもなった。
もう一つ、多くの実務家の注目を集めたのが、中古建機の展示販売である。物価の高騰で新品の建設機器の価格が上がるなか、初期投資の負担が大きい中小の建設会社にとって、信頼できる中古機の存在は大きい。同社はレンタルだけでなく中古建機の販売も手がけており、整備部門が管理してきた中古機には従来から高い評価があるという。建機展のために用意した機械は、初日に約半数が、翌日にはほとんどが売り切れたという。
中古建機の活用には、環境の面での意味もある。建設機械は製造時の環境負荷が大きく、資源の消費という観点からも長く使うことが求められる。同社は、信頼性の高い中古機を必要とする事業者のニーズに応えるとともに、販売後のケアを通じて機械を少しでも長く使ってもらうことが、環境負荷の低減にもつながると位置づけている。

「建設業と地域をつなぐプラットフォーム」へ
同社は建機展を、今後さらに広げていく考えだ。単なる展示会ではなく、「建設業と地域社会をつなぐプラットフォーム」として発展させたいという。
建設業界では、人材不足が今後さらに進むと見込まれている。その一方で、インフラの更新や防災・減災の工事など、地域を支える建設業の役割はいっそう重みを増していく。だからこそ同社は、建機展を通じて、子どもたちが建設業に興味を持つきっかけや、若い世代が建設業を身近に感じられる環境をつくっていきたいと考えている。あわせて、ICT施工や遠隔操作の技術といった最新の話題を紹介することで、建設業が進化を続けている産業であることも発信していくという。
その根底にあるのは、機械を貸すことの先を見据える視点である。同社は建設機械をレンタルする会社だが、本当に支えたいのは機械ではなく、その先にある地域の暮らしだと語る。道路や橋、公園、学校、防災施設。人々の安全で安心な生活は、建設業によって支えられている。その建設業が担い手不足に直面しているいま、業界の魅力を伝え、次の担い手を育てることは、地域のインフラを守ることにつながる。
建機展には、子どもが重機に目を輝かせる姿があり、経営者が最新技術に可能性を見いだす姿があり、社員が家族に自分の仕事を語る姿がある。こうした一つひとつの出会いを積み重ねながら、神奈川・湘南のエリアから地域を支える建設業の未来を発信し続けること。それが、鈴機商事の描く挑戦である。



