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長友佑都「マンマミーア」に本田圭佑氏も本音 W杯5大会連続出場、ブラジル戦前に残した20分

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長友佑都 
長友佑都 公式インスタグラムより

日本代表がスウェーデンと1-1で引き分け、3大会連続の決勝トーナメント進出を決めた北中米ワールドカップ1次リーグ最終戦。その終盤、白いヘアバンドを巻いた長友佑都がピッチへ向かった。39歳でのW杯5大会連続出場。中継席の本田圭佑氏は「ユウトより俺の方が緊張する」と漏らし、試合後の長友は「W杯はマンマミーア」と笑った。軽い名言のようでいて、その20分には、5大会を渡ってきた男の執念が詰まっていた。

 

 

重たい終盤に、長友佑都が呼ばれた

スウェーデン戦の終盤、日本代表に流れていた空気は決して軽くなかった。スコアは1-1。引き分けでも決勝トーナメント進出は見えていたとはいえ、相手の前線には一瞬で試合を動かすだけの迫力があり、日本は勝ち急ぐよりも、まず試合を壊さないことを求められていた。時間が進むほど選手の足は重くなり、判断のわずかな遅れが失点に直結しかねないなかで、森保一監督が送り出したのが39歳の長友佑都だった。

後半31分、中村敬斗に代わって左サイドに入った長友は、アジア人初となるW杯5大会連続出場を達成し、39歳287日での出場によって自身が持つW杯日本人最年長出場記録も更新した。ただ、あの交代を記録達成のための花道として見ると、試合の芯を見誤る。日本が必要としていたのは、終盤の荒れた時間を知る選手であり、相手の圧力を受け止めながら左サイドを締める判断だった。若い選手の勢いだけでは飲み込まれかねない場面で、W杯の怖さを身体で知るベテランを置く。派手な勝負手ではないが、負け筋を消すための現実的な一手だった。

 

「マンマミーア」は軽い名言ではない

ピッチに入った長友は、白いヘアバンドを巻き、左サイドで声を張りながら身体を投げ出した。全盛期のように何度もサイドをえぐり、相手を置き去りにする姿ではない。それでも、相手の出足に合わせて寄せ、危ない芽を早めに潰し、終盤の日本に必要な熱を注ぎ込んでいく。見る者を沸かせる突破ではなく、相手の圧力を一つずつ削る地味な仕事が、決勝トーナメント進出のかかった時間帯では何よりも重みを持っていた。

試合後のインタビューで、長友は「W杯はマンマミーア」と語った。カタール大会の「ブラボー!」に続き、またしても長友らしい言葉が飛び出した形だ。本人は「このために準備してきた」「この興奮はW杯でしか味わえない」と、5度目の大舞台に立った感情をそのまま口にした。明るく、少し大げさで、聞いた瞬間に広がりやすい言葉ではあるが、その裏にある4年間は軽くない。39歳で代表に残り、W杯のピッチに立つには、過去の実績だけでは届かない。身体を作り、役割を受け入れ、自分が必要とされる時間まで準備を切らさずにいる。その積み重ねがあったからこそ、長友の「マンマミーア」は単なる珍言ではなく、踏みとどまってきた選手の息づかいを帯びていた。

 

本田圭佑氏の「ユウト」ににじんだ戦友の時間

長友の投入場面で、もう一つ印象を残したのが、NHK中継で解説を務めた本田圭佑氏の反応だった。ピッチへ向かう長友を見ながら、本田氏は「ユウトより俺の方が緊張する」と漏らした。整えられた解説コメントではなく、思わずこぼれた本音に近い言葉だったからこそ、画面越しにも妙な生々しさが伝わった。

この一言が響いたのは、単なる仲の良さが見えたからではない。本田氏にとって長友は、南アフリカ大会以降、日本代表の重圧をともに浴びてきた戦友である。勝てば持ち上げられ、負ければ容赦なく叩かれ、世界との差を何度も突きつけられながら、日本サッカーの看板を背負ってきた世代の一人だ。その本田氏が、解説者の席から「長友」ではなく「ユウト」と呼び、本人より自分の方が緊張すると口にする。そこには、テレビ向けの美しい言葉では出せない距離感と体温があった。

SNSでは、「長友だけユウト呼びなのがいい」「本田さんが一番緊張しているのがエモい」といった声も広がった。微笑ましい場面ではあるが、懐かしさだけで消費するには惜しい。同じ時代を走った選手が、今もW杯のピッチに立っている。その事実を、見守る側になった本田氏が誰よりも強く受け止めていたように見えた。長友の20分には、ピッチ上のプレーだけでなく、日本代表の一時代を知る者同士の時間まで重なっていた。

 

長友は「精神的支柱」だけでは片づかない

長友の出場には、当然ながら賛否もある。日本代表の戦力は若返り、世界の強豪と渡り合うにはスピードも強度も必要になるため、過去の功績は疑いようがないとしても、決勝トーナメントでどこまで計算できるのかという声が出るのは自然だ。だが、スウェーデン戦の終盤に限れば、長友に求められた役割ははっきりしていた。相手が前に出てくる時間帯に左サイドで簡単に負けず、声で味方を動かし、ボールを持って目立つより危険な芽を早めに摘む。派手な数字には残りにくいが、W杯ではこうした細部が試合の輪郭を変える。

長友を「精神的支柱」とだけ呼ぶと、便利な言葉で片づけすぎになるだろう。彼はベンチで盛り上げるためだけにいるのではない。終盤の20分を任されるだけの準備をしてきた選手として、森保ジャパンの選択肢に残っているのだ。美談に寄せすぎる必要はないが、過去の人として扱うのも違う。スウェーデン戦の長友は、そのどちらでもない場所に立っていた。

 

ブラジル戦へ、日本は何を持っていけるのか

日本はF組2位で決勝トーナメント進出を決め、次戦でブラジルと対戦する。かつてなら、ブラジルの名前を聞いただけで、どこか諦めに近い空気が漂ったかもしれない。しかし今の日本代表には、相手が誰であっても試合を壊さず、勝機を探れるだけの地力がある。一方で、スウェーデン戦で勝ち切れなかった事実も残る。欧州勢を相手に押し込まれる時間があり、攻撃で突き切れない場面もあった。ブラジル戦では、守備に回る時間がさらに長くなる可能性が高い。

だからこそ、若い才能の勢いだけではなく、長友のようなベテランが持つ試合勘がどこかで効いてくるかもしれない。長友は試合後、「優勝を目指しているから、どこが相手でも勝つだけ」と言い切った。大きな言葉だが、今の日本代表がそれを完全な夢物語として聞かれないところまで来ているのも事実だ。

「ブラボー!」から「マンマミーア」へ。長友の言葉は、また大会の記憶に残るだろう。ただ、本当に見るべきなのは、その響きだけではない。39歳でW杯のピッチに立ち、終盤の左サイドで身体を張った姿。本田圭佑氏が「俺の方が緊張する」と漏らした戦友へのまなざし。そして、ブラジル戦へ向かう日本代表のベンチに、まだ長友佑都がいるという事実。名言で笑って終わらせるには、この20分は少し重い。

 

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ライター:

Webライター。きれいごとだけでは済まない現実を、少し距離を置いて綴っています。

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