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【気づいた時には遅い?】子どもの脳をむしばむ“スクリーン依存”の正体 米国でも始まる依存治療の現実

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「あと5分!」――その“5分”が終わった試しはない。

動画を切った瞬間に空気が凍るリビング。夕食中もSwitchを離さない子ども。そして”少しだけ”のショート動画が深夜2時になっている父親。笑えないが、どこか見覚えのある景色ではないだろうか。

「ゲームくらい、みんなやってるじゃないか」。

その言葉は、便利な時代の“安心の呪文”なのかもしれない。だがその呪文が、最初の見落としだったとしたら。

 

【「うちの子は大丈夫」が一番危ない】世界が“医療問題”として見始めた理由

2024年6月、名古屋市では17歳の男子高校生が父親に重傷を負わせ、殺人未遂容疑で逮捕された。読売新聞などの報道によると、深夜までスマートフォンでゲームをしていたことを注意されたことがきっかけだったという。

もちろん、この事件だけでゲームが暴力を生むと言うつもりはない。家庭環境や親子関係、本人の心理状態・背景は単純ではない。それでも、このニュースに胸がざわついた親は少なくなかったのではないか。

「Switch置いて」「あと5分!」「動画終わり!」「なんで!?」

そんなやり取りは、いま多くの家庭で毎晩のように上演されている。家庭という名の小劇場である。そして、この話は子どもだけでは終わらない。

会社帰り。”少しだけ”のショート動画が1時間になる。SNSを閉じた5秒後、なぜかまた開いている。指はもう、自分の意思というより半自動運転である。笑えないが、珍しい話でもない。私たちは本当に“使っている側”なのだろうか。それとも、いつの間にか“使われる側”になっているのだろうか。

世界はすでに、この問題を単なる遊びすぎでは済まされないものとして見始めている。2019年、WHO(世界保健機関)はICD-11で”ゲーム障害(Gaming Disorder)”を疾病分類に位置づけた。

さらに、その話は日本だけでは終わらない。米国でも、ゲームにのめり込み生活が崩れた人たちへの支援や専門プログラムが行われている。ゲームでそこまで?そう思う人もいるだろう。たしかに、ゲームと酒や麻薬は同じではない。だが。

やめたいのにやめられない。現実から逃げ込む。生活が崩れても続けてしまう。その構造が依存症と驚くほど似ているからこそ、医療の現場が動いているのである。

実際、米国などで行われるゲーム依存への支援には、生活習慣の立て直しや家族への働きかけなど、アルコール依存や薬物依存の治療とも重なる考え方が使われている。つまり、ゲームだから放っておけば治るというほど単純な話ではない。

ゲーム依存とアルコール依存は違うんじゃない?そう思う人もいるだろう。たしかに違う。酒の匂いもしない。繁華街にも行かない。家にいる。親から見れば、少し安心したくなる条件がそろっている。だが、家にいるから安全という時代が、少しずつ終わり始めているのかもしれない。

ゲームだから安全。その思い込みが、もし最初の見落としだったとしたら。

【学校がつまらないのは怠けか?】脳が“ラクな快楽”に慣れていく

 

脳は、正直だ。努力して褒められるより、すぐ褒められる方が好きである。ゲームや動画、SNSは、その”脳のズルい部分”を恐ろしいほど理解している。敵を倒せば音が鳴る。キラキラ光る。レベルが上がる。次の報酬が待っている。負けても”もう一回”が用意されている。

現実社会で通知表は年に数回だが、ゲームの世界では数秒おきに”よくやった”が降ってくる。現実はそこまで親切ではない。努力しても即レベルアップの音は鳴らないし、嫌な上司をミュートするボタンもない。

そりゃあ、学校が退屈に見えても不思議ではない。

富山大学医学部の山田正明准教授は、小学館系メディア『HugKum』のインタビューで、こうしたネット・ゲームには”依存症アルゴリズム”と呼べるような仕組みが組み込まれていると指摘している。

問題は、脳がその刺激を覚えて味を占めてしまうことだ。学校生活は、正直に言えば地味である。勉強は成果が出るまで時間がかかる。友達付き合いには気疲れもある。やっとの努力で得られるものがちっぽけに感じる。現実とは、本来そういうものだ。

だが、画面の中は違う。現実より早く、強く、確実にドーパミンが出る。しかも終わらない。次の敵。次の動画。次の通知。画面の向こう側は、こちらが飽きるより先に次の刺激を差し出してくる。まるで「まだ帰るな」と袖をつかむ夜の繁華街みたいなものだ。

脳は気づけば、”待てない体質”になっていく。すると何が起きるか?

学校つまんない、勉強めんどくさい、何もやる気が出ない。親はそれを反抗や怠けと思うかもしれない。だが、それは脳が“ラクな快楽”に慣れ、平凡な日常から刺激を感じにくくなっているサインなのかもしれない。

そして怖いのは、2026年のスクリーン環境が親世代の子ども時代とは別物になっていることだ。昔のゲームは、せいぜい”やめられない”だった。だが今は違う。ショート動画、SNS、ライブ配信、通知、そしてAIによるおすすめ表示。こちらが飽きるより先に次の刺激を差し出してくる。

もはや私たちはコンテンツを選んでいるのではない。アルゴリズムに“離れないよう設計された世界”を見せられているのかもしれない。ゲーム依存の怖さは、ゲーム時間そのものではない。問題は、もっと静かで、もっと見えにくい場所にある。

 

【「家にいるから安心」が一番危ない】“あと5分”が家を少しずつ変えていく

怖いのは、ゲームが突然子どもを壊さないことだ。酒の臭いもしない。深夜の繁華街にも行かない。親から見れば、家にいる。静かだ。だから安心したくなる。外で遊び歩くよりマシ、家にいるなら安全。その気持ちは分かる。だが静かなものほど、気づきにくい。

「Switch置いて」その一言で、家の空気が変わる。さっきまで笑っていた子が泣く。怒る。交渉する。親は戸惑う。

「この子は誰……?」

笑えないが、全国のリビングで毎晩上演されている小さな戦争である。

東北大学の研究などでは、長時間スクリーンと脳発達との関連も報告されている。もちろん単純な話ではない。ゲームが脳を壊す、と乱暴に断定できる話でもない。だが、妙に居心地が悪い研究ではある。

なぜなら、依存はある日突然やって来ないからだ。

毎日の”あと5分”。寝る前の”少しだけ”。その積み重ねで、生活の主導権が少しずつ画面側へ傾いていく。

やめようとするとイライラする・現実逃避で使う・思った以上に続けてしまう。これに当てはまる人は危険信号だ。少し怖い話だが、このチェック項目、案外子どもより先に親の方が当てはまることもある。

「でも、それって発達障害の子でしょ?」その安心も、少し危うい。

久里浜医療センターの樋口進医師は、ネット依存外来では発達障害傾向や生きづらさを抱える子が少なくないと指摘している。ゲームは、そうした子にとってあまりにも親切だからだ。ルールは明確。努力は点数になる。嫌な相手はミュートできる。現実社会より、ずっと機嫌がいい。だが、これは発達障害の子だけの話ではない。

長時間スクリーンに没入した子どもで、コミュニケーション不足や興味の偏りなど、自閉症特性に似た行動傾向が議論されることもある。もちろん、ゲームだけで発達障害になるわけではない。だが、健常だから大丈夫と胸を張れるほど、この話は単純でもないのである。

2026年のスクリーンは、親世代が知っていたゲームとは別物だ。昔は、こちらが遊びに行った。今は違う。画面の向こう側が、こちらを帰さない。ショート動画。通知。AIによるおすすめ表示。こちらが飽きるより先に、次の刺激を差し出してくる。

夜の客引きより商売熱心で、しかも24時間営業である。もはや私たちは遊んでいるのではない。遊ばれているのかもしれない。

 

【そのスマホ、本当に癒やしですか?】脳を休ませるより“黙らせる”スクリーン

疲れた夜、とりあえずスマホを開く。現代人にとってスマホは、財布より近い“常備薬”みたいな存在である。だがその薬、本当に効いているのだろうか。

スクリーンには終わりがない。疲れた脳を休ませたいはずなのに、私たちは休息ではなく、さらに刺激の強い場所へ向かっている。少し乱暴に言えば、疲れた胃に激辛ラーメンを流し込んで整ったと言っているようなものだ。一瞬スッキリする。だが、胃はたぶん泣いている。脳も少し似ているのかもしれない。

本来、人間の回復はもっと地味だ。風の音。土の匂い。身体を動かすこと。誰かとの会話。そういう“退屈な回復”で、人は少しずつ元気になる。だが、スクリーンは違う。休ませるより、“黙らせる”方が得意なのかもしれない。嫌なことも孤独も不安も、消えたわけではない。少し見えなくなっただけだ。

そして、もう少し怖い話をすれば。人はつらくなった時、子どもの頃に安心していた場所へ戻ると言われる。もし、幼い頃から“逃げ場”が画面だったら。仕事でつまずいた時。人間関係で傷ついた時。孤独に耐えられない夜。人はどこへ逃げるのだろうか。

親が子どもに渡しているのは、ゲーム機だろうか。それとも、将来しんどくなった時に逃げ込む“最初の避難所”だろうか。

その答えが見える頃には、もう「Switch置いて」で済む年齢ではなくなっているのかもしれない。

笑い話ならいい。だが、もし十年後、あの時、少し気にしておけばよかったと思う親がいるのだとしたら?それは、あまり笑えない話である。

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ライター:

2人育児8年目ママ。健康を意識した丁寧な暮らしを大切にしています。好きなテレビ番組は『クレイジージャーニー』。日々のリアルな視点から、役立つ情報を発信したいです。

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