
さらば青春の光のYouTube動画内で登場した「客ゼロポテト」という表現をめぐり、浅草のフライドポテト店が風評被害を訴え注意喚起。ユーモアと配慮の境界を考える。
「客ゼロポテト」はうちではありません 浅草フリッツ・ブルージュが風評被害を訴え
お笑いコンビ・さらば青春の光のYouTubeチャンネルをめぐり、思わぬ形で浅草のフライドポテト店に波紋が広がっている。
発端となったのは、浅草のフライドポテト店「フリッツ・ブルージュ」の公式Xアカウントによる注意喚起だ。
同アカウントは、
「とある芸人さんのYouTubeに浅草のフライドポテトが『客ゼロポテト』として紹介されたようですが、当店とは関係はございません」
と投稿。
さらに、勘違いした視聴者が同店に来店し、タグ付けをしているとして、
「全くの風評被害です。削除いただけますと助かります」
と呼びかけた。
『裏さらば』のランチミーティング動画が発端か
今回の騒動に関係しているとみられるのは、さらば青春の光のYouTubeチャンネル『裏さらば』で公開された動画「【ザ・森東会議】鳴り止まぬゲラゲラ!世界イチ無意味なランチミーティング開催!!」だ。
動画では、ザ・森東のメンバーがランチを囲みながら雑談する流れの中で、スタッフが買ってきた浅草グルメが登場する。
その中で、浅草名物の浅草メンチについてスタッフが「20分並んだ」と説明すると、森田哲矢が「20分?短いなー」とボケで反応しつつ、実際に食べて「うんま!!」と絶賛する場面があった。
その後、机の上に置かれたフライドポテトについても、森田が「これは何分並んだ?」と質問。
これに対し、スタッフが笑いを誘う形で「客ゼロポテト」と返したことで、現場はユーモラスな空気に包まれた。
“客ゼロ”は店への悪口ではなく、その場のボケだった可能性
動画内の流れを見る限り、「客ゼロポテト」という言葉は、店を本気でけなす意図というより、ランチミーティングの場を笑わせるためのボケだったと考えられる。
浅草メンチが「20分並んだ」人気商品として紹介された直後だったため、それとの対比として、「こちらは並ばずに買えた」という意味合いを面白く誇張した表現だったのだろう。
また、仮に購入時に行列がなかったとしても、それは単にそのタイミングで客が並んでいなかっただけかもしれない。
「客ゼロ」という言葉だけが切り取られると、まるで閑古鳥が鳴いている店のような印象を与えてしまうが、動画内ではあくまでその場のノリに近い。
問題は“視聴者の特定ごっこ”とタグ付け
今回、より問題となったのは、動画内の発言そのものよりも、その後の視聴者の動きだ。
一部の視聴者が「噂の客ゼロポテトを食べてみた」といった趣旨の投稿を行い、無関係とみられる「フリッツ・ブルージュ」をタグ付けしたことで、同店側が注意喚起を行う事態となった。
注意喚起により当該投稿はすでに削除されたが、店側にとっては迷惑な話だろう。
たとえ悪意がなかったとしても、店名を誤って紐づければ、それは風評被害につながりかねない。
特に飲食店の場合、
「客ゼロ」
「人気がない」
「閑散としている」
といった印象は、営業上のイメージに直結する。
面白がって投稿した一言が、無関係の店舗にダメージを与える可能性は十分にある。
ユーモアは“文脈”があって成立する
さらば青春の光の動画は、身内ノリやスタッフとの掛け合い、脱力した雑談の面白さが魅力の一つだ。
今回の「客ゼロポテト」も、動画内の空気や前後の流れを含めて見れば、強い悪意のある表現とは受け取りにくい。
しかし、SNSでは文脈が簡単に失われる。
動画の中では笑いになっていた言葉も、切り取られて店名と結びつけられると、まったく別の意味を持ってしまう。
「現場ではウケた」
「動画では面白かった」
「ファン同士では通じるネタだった」
としても、それが第三者に向かった瞬間、ただの失礼な言葉や営業妨害のように見えてしまうことがある。
飲食店への“ネタ化”は店にとっては死活問題になる可能性も
近年、YouTubeやTikTokでは、飲食店をめぐる発言が一気に拡散されるケースが増えている。
「行列店」
「ガラガラの店」
「謎の店」
「客がいない店」
といった表現は、動画の中では軽いイジリとして成立することもある。
しかし、実在する店舗に結びつく場合は慎重さが必要だ。
特に今回のように、動画内で明確に店名が出ていないにもかかわらず、視聴者が勝手に特定したり、無関係の店をタグ付けしたりすると、被害は出演者ではなく店舗側に向かってしまう。
笑いのつもりが、店にとっては迷惑行為になる。
その線引きは、視聴者側にも求められている。
“笑い”と“配慮”は両立できる
今回の騒動は、さらば青春の光側が意図的に特定の店舗を攻撃したというより、動画内のユーモアが視聴者の投稿によって独り歩きしたケースに見える。
だからこそ、問題の本質は「芸人が悪い」「店が過剰反応」という単純な話ではない。
発信者は、実在する店や人に関わる言葉がどのように切り取られるかを考える必要がある。
一方で視聴者も、動画のネタを現実の店舗に安易に結びつけたり、タグ付けして拡散したりする前に、一度立ち止まるべきだろう。
ユーモアは、文脈が共有されているからこそ笑いになる。
その文脈から外れた場所で誰かを傷つけたり、無関係の店に迷惑をかけたりしてしまえば、せっかくの笑いも後味の悪いものになってしまう。
「客ゼロポテト」という一言が、思わぬ風評被害につながった今回の騒動。
笑いを楽しむ側にも、拡散する側にも、少しの配慮が求められている。



