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JAおきなわ職員が月242時間残業で脳出血、34連勤の果てに車いす生活 過労労災問題に見る、農業現場の深刻な闇と無責任体制

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JA沖縄 過労

JAおきなわの30代職員が、月240時間を超える異常な残業と34連勤の末に脳出血で倒れ、労災認定を受けた。SOSを無視し、障害を負った被害者に「逃げの回答」を続ける組織の体質とは。農業の裏側に潜む過酷な労働実態と無責任な経営体制を詳報する。

 

億単位のプレッシャーと「地獄の34連勤」:未経験者に丸投げされた現場

沖縄において、マンゴーは単なる農産物ではない。県を代表するブランドの一つであり、その品質管理や選別、販売には極めて高度な判断が求められる。また、シーズン中に扱われるマンゴーの流通規模は「億単位」にもなる。その華やかな出荷シーズンの裏側で、一人の若き職員の人生が無残に破壊されていた。

2026年1月、那覇労働基準監督署によって労災認定を受けたのは、JAおきなわ南部地区営農振興センターに所属していた男性職員(38)だ。2010年に入社した彼は、2025年6月からマンゴー選果場の現場責任者を任されていた。しかし、実態は「責任者」という名ばかりの、過酷な強制労働に等しいものだった。

男性の代理人弁護士やJA側の勤怠管理表によると、彼の労働状況は以下の通り、常軌を逸していた。

  • 時間外労働(残業):発症直前の1カ月間で最大242.5時間(別の資料では230〜236時間超)。
  • 連続勤務:2025年6月19日から7月18日まで、34日間無休。
  • 勤務時間:毎日午前8時前後に出勤し、終業は深夜0時、遅い日は翌午前1時を回っていた。

さらに衝撃的なのは、彼がこの業務について「未経験」であったことだ。前任者は過重労働を理由に退職しており、その穴を埋める形で、新人職員とわずか2人で億単位の金が動く選果・販売業務の全般を担わされていた。休憩や昼食を取る時間すらなく、人手不足によるミスが多発。農家や販売先からの激しいクレーム対応もすべて彼一人が背負わされていたのである。

黙殺されたSOS:「助けてください」と送ったメールの行方

 

「現場が大変だ、何とかすべきではないか」 倒れる数日前、男性は複数の上司に対し、人員不足と現場の窮状を訴えるメールを送っていた。さらに、豊見城支店の部長からもJA当局へ「長時間残業で現場が大変だ」という電話連絡が入っていたという。

しかし、JAおきなわという組織は動かなかった。上司は現場を見に来ることも、対策を講じることもなかった。 そして2025年7月19日朝、悲劇は起きた。自宅1階のリビングで倒れている男性を妻が発見。救急搬送された彼は脳出血と診断され、即日手術となった。

命は取り留めたものの、残った代償はあまりにも大きかった。

  • 左半身の麻痺(車いす生活)
  • 高次脳機能障害(言語障害など)
  • 感覚過敏(光、音、においに敏感になり、頭痛や吐き気が続く)

2026年2月27日の会見で、男性は涙ながらにこう訴えた。「五体満足の身体で家族と過ごせていた幸せな時間を返してほしい。失った代償が大きすぎて、会社に対して非常に憤りを感じる」

JA側の「逃げ」の謝罪会見:被害者が感じた「強い屈辱」

 

発症から半年以上が経過した2026年3月2日、JAおきなわはようやく記者会見を開いた。安谷屋行正理事長は「法令を大幅に逸脱する不適切な労務管理だった」と認め、「多大な苦痛と心労をおかけした」と謝罪した。

しかし、この会見の内容がさらに被害者の心を逆撫ですることとなる。

JA側が説明した「言い訳」は、以下の点において事実と異なると男性は指摘している。

項目JAおきなわの説明(3/2会見)本人・代理人の反論
残業の把握システム上、把握できるのは翌月になり、タイムラグが生じた。日々勤怠を入力し即座に承認されていた。36協定の延長申請も出しており、把握できたはず。
人員派遣SOSを受けて2〜3人の応援人員を派遣した。そのような事実は認識していない。状況を改善する人員は来なかった。
原因分析繁忙期ならやむを得ないとする組織風土が影響した「可能性」。「可能性」で濁すべきではない。直属の上司が会見に出ないのは無責任。
JA側の説明と男性の反論(対照表)

男性は翌3日、弁護士を通じてコメントを発表。「JAの回答はその場しのぎの『逃げの回答』に終始しており、誠意が全く感じられず強い屈辱と悔しさを覚える」と断罪した。特に、現場を放置した直属の上司が一人も会見に出席していないことに対し、「苦しさや辛さを訴えてもまた無視されたような気分」と絶望感を露わにしている。

「属人化」という名の放置:他にもいた200時間超えの職員

 

JAおきなわの安谷屋理事長は、今回の事案の背景に業務が特定の人に集中する「属人化」があったと述べた。しかし、驚くべき事実はこれだけではない。今回の会見で、同時期に別の職員1人も時間外労働が200時間に達していたことが公表されたのである。

これは単一の部署の問題ではなく、JAおきなわ全体の安全管理体制が破綻していたことを示唆している。那覇労働基準監督署は1月に是正勧告書を出しており、組織としての「職場風土」そのものが問われている。

琉球新報の社説(2026年2月28日付)でも、「従業員の声を受け止め、働き方を改めることができない硬直した組織になっていないか」と厳しく批判されている。公的性格を帯びたJAという組織が、法規則を無視した「旧態依然とした働き方」を続けていたことの罪は重い。

最後に:消費者が知るべき「美味しい作物」の対価

 

私たちは普段、スーパーに並ぶマンゴーを見て、その生産者の苦労には思いを馳せても、それを流通・支援する職員の過酷な労働にまで目が向くことは少ない。しかし、今回の事件は、私たちの食生活を支えるインフラの一部が、一人の人間の命と健康を削ることで成り立っていたことを露呈させた。

男性は現在、リハビリを続けながら、治療終了後にJAおきなわに対して損害賠償請求訴訟を提起する準備を進めている。琉球新報が報じた車いすから語られたという当事者の「私のような被害者を二度と出さないようにするのが自分の役目」という切実な訴えを、JAおきなわはもちろん、すべての企業経営層が重く受け止めなければならない。

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寒天 かんたろう

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ライター歴26年。月刊誌記者を経て独立。企業経営者取材や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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