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ASJ、調査委員会が最終報告書を公表 使途不明経費は「10万円」にとどまる 家賃負担やキックバック疑惑の行方は?

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ASJ,適時開示、経費不正発覚

建築家ネットワーク事業を展開するアーキテクツ・スタジオ・ジャパン(ASJ)(東証グロース、6085)は12月29日、同社元代表取締役(現・代表取締役社長)である丸山雄平氏による不正行為に関する第三者委員会の「事実調査報告書(最終報告)」を受領し、公表した。

 

10月に公表された中間報告では、約50万円の不正経費認定に加え、「さらに約400万円の疑わしい支出がある」と指摘されていたが、今回の最終報告では、不正と断定できないものが大半を占め、経費として認められない金額は最終的に10万7157円であったことが明らかになった。

また、懸念されていた取引先への家賃付け替えや学会からのキックバック疑惑についても、調査委員会は「不正は認定できない」と結論付けた。

 

「400万円の疑惑」は大半が解消、不正認定は10万円強へ

前回の調査委員会(中間報告)は、丸山氏による交際費・会議費について、日曜日の支出や実兄との飲食、目的不明瞭な支出などを根拠に不正の疑義を持っていた 。 しかし、新体制下で再編された調査委員会が、2020年度以降の経費について本人へのヒアリングやスケジュール管理ソフト「サイボウズ」の記録を精査した結果、以下の事実が確認された。

日曜日の支出については記録上、日曜日にも建築家等との会食等の予定が入っており、稼働実態が裏付けられた。また、実兄との飲食については実兄はコンサルティング会社出身であり、ビジネス上の支援や人脈紹介を受けていた実態があり、必ずしも不正とは言えないとされた。1人飲食の疑いについては「テイクアウトして社内で会議」といった説明に不合理な点はなかった。

その結果、最終的に「会議費として認める根拠が見当たらない」と認定されたのは、業務関連性の説明がつかない入浴料や明らかな1人飲食など、合計10万7157円のみとなった 。委員会は、この金額について同社から丸山氏へ返還請求することを検討するよう提言している。

 

家賃負担・キックバック疑惑は「シロ」

今回の調査では、以下の2つの重大な疑惑についても調査が行われたが、いずれも不正事実は認定されなかった。

システム開発会社による自宅家賃の負担疑惑

丸山氏が、ASJのシステム開発を請け負うI社に対し、自身の自宅家賃を負担させていたのではないかという疑惑があった。調査の結果、I社から丸山氏への1500万円の入金は確認されたが、これは金銭消費貸借契約に基づく「貸付」であり、現在も未返済であることが判明した。

また、ASJからI社への委託料(月額約250万円)についても、業務内容に照らして過大とは言えず、家賃分が上乗せされていた事実は確認されなかった。

 

学会費のキックバック疑惑

ASJが支援する建築系一般社団法人「L学会」への会費が変動しており、一部が丸山氏へ還流(キックバック)されているのではないかという疑惑があった。調査の結果、会費の変動は経営状況に応じた交渉によるものであった。

また、学会から丸山氏個人へ150万円の送金があった事実は確認されたが、これは丸山氏が海外でのワークショップ費用を立て替えた際の「精算金」であり、不正な資金還流ではないと認定された。

 

経営体制の刷新と再発防止へ

ASJは、2025年11月5日に開催された臨時株主総会ですでに取締役の大半が解任され、新体制へと移行している 。 調査委員会は提言として、代表取締役の経費に対する社外取締役によるチェック体制の強化や、取引先からの個人的な借入を厳に慎むことなどを求めた。

また、10月に問題視された「独断での内示書交付」問題についても、重要書類へのリーガルチェック体制の構築を改めて提言している 。

同社は、延期していた「2026年2月期第2四半期報告書」について、2026年1月13日に提出する予定としている。

 

記者からのひとこと

今回の最終報告書により、当初数百万~数千万円規模と危惧されていた不正疑惑は、最終的に約10万円の経費否認にとどまるという決着を見た。 オーナー色が強い非上場の中小企業であれば、社長による多少の公私混同や、個人的な資金繰りのために取引先を頼るといった行為は、ある種「よくある話」として看過されがちな側面もあるかもしれない。しかし、上場企業は「社会の公器」である。たとえ金額が僅少であったとしても、会社と個人の財布を厳格に峻別できないガバナンスの甘さは、市場からの信頼を損なう致命傷になりかねない。

一方で、株主の視点に立てば、これ以上の「犯人捜し」よりも重要なことがある。それは、長引く赤字からの脱却と企業価値の向上だ。 調査委員会による「シロ」という認定で膿を出し切った今、新生ASJに求められているのは、潔白の証明以上に、本業の再建という「結果」に他ならない。一連の混乱を収束させ、今度こそ数字という実績で株主に見返してほしいところだ。

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寒天 かんたろう

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ライター歴26年。月刊誌記者を経て独立。企業経営者取材や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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