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秀和システムが債務超過で出版事業譲渡を予定 過去には船井電機やミュゼプラチナムを買収も 「はじめての」シリーズの行方は?

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秀和システム スクリーン
秀和システムより

IT・ビジネス書で知られる出版社「秀和システム」が法的整理に入り、出版事業を他社へ譲渡する意向を示した。船井電機の買収など過去の動向も含め、事業継続困難に至った背景を解説する。

 

老舗出版社「秀和システム」が法的整理へ

IT・ビジネス書で高い知名度も、債務超過で出版継続困難に

東京商工リサーチによると、IT関連やビジネス書籍で知られる出版社「株式会社秀和システム」(東京都江東区)が2025年7月1日、債務超過により出版事業の継続が困難となったことから、法的整理に踏み切るということがわかった。取引先への通知では、裁判所の手続きを通じて出版事業を他社に引き継ぐ意向を示しており、今後の出版体制が注目されている。

秀和システムとは?「はじめての」シリーズなどで広く知られた存在

秀和システムは1974年12月設立。1981年に営業を本格化させ、「はじめてのWindows」「はじめてのWord」など、パソコン入門書シリーズで広く知られるようになった。ITエンジニア向けの専門書や資格取得用の書籍など、実用的な内容に特化した出版が特長であり、多くの書店でも取り扱われていた。

最盛期となる2002年7月期には売上高が27億円を超えるなど、一時は出版界における中堅企業としての地位を築いていた。しかし出版不況やデジタル化の影響で売上は次第に減少し、直近では20億円を下回る水準にとどまっていた。

経営多角化とグループ再編が裏目に

2015年12月、現在の代表取締役である上田智一氏が秀和システムを買収。その後、M&A戦略を積極的に推進し、同社を中核とする企業グループを形成した。

注目を集めたのは、2021年に上場企業だった家電メーカー「船井電機(株)」(大阪府大東市)をTOB(株式公開買い付け)により実質的に買収したことだ。これにより船井電機は同年8月に東証1部から上場廃止となり、持株会社「船井電機・ホールディングス(現:FUNAI GROUP)」へ移行。旧・船井電機の事業は分割され、2023年に新会社として再編された。

だが、こうしたグループ再編は結果的に経営を不安定化させた。2023年にはグループが買収した脱毛サロン「ミュゼプラチナム」の運営企業で広告代理店との金銭トラブルが発覚。また、船井電機における液晶テレビ事業も業績不振が続き、グループ全体の収益に悪影響を及ぼした。

経営混乱と資金繰り悪化 債権回収も難航

 

2024年10月には、船井電機(現FUNAI GROUP)が東京地裁から破産手続き開始決定を受けた。これに先立ち、秀和システムは同年1月に民事再生法の適用を申請したが、翌2月に取り下げ。信用不安が広がり、出版物の返品も相次いだことで、資金繰りは急速に悪化した。

2025年3月期時点の負債総額は約18億9300万円に達し、私的整理による再建も模索されたが断念。最終的に、法的整理という選択に至った。

出版事業は他社へ譲渡予定 著者・読者への影響も

秀和システムは、現在発行中の書籍に関しては取次会社や裁判所の承認を得たうえで、引き継ぎ先の出版社が対応する予定としている。新刊を予定していた著者の中には、出版の可否が宙に浮いた状態となっているケースもある。編集者や著者との信頼関係が重要となる出版業界において、今回の法的整理は関係者にも大きな影響を与えている。

今後の注目点

現時点では、今後の方針などは開示されていないが、今後の注目点としては、以下の点が議論となるだろう。

  • 出版事業の引き継ぎ先がどの企業になるのか
  • 既刊本の在庫や販売継続の可否
  • 著者・読者・取引先への対応方針
  • グループ会社の責任関係や債権回収の見通し

IT・ビジネス書に親しんできた多くの読者にとって、秀和システムの動向は出版業界全体にも波及する可能性がある。再建の行方と業界の変化を見守る必要がある。

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ライター:

新聞社で記者としてのキャリアをスタートし、政治、経済、社会問題を中心に取材・執筆を担当。その後、フリーランスとして独立し、政治、経済、社会に加え、トレンドやカルチャーなど多岐にわたるテーマで記事を執筆

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